トラック運送業界は深刻な運転手不足にあります。1990年に規制緩和で新規参入が進んだことによって事業者は急増し、競争の激化のあおりによって運転手の平均年収は減少する一方です。
さらに近年ではインターネット通販などが拡大したことで、小口輸送が増え続けていいます。いっそうきめ細やかなサービスに需要があることで負担は増えている状況です。
年収もピーク時より減少傾向が理由で人手不足に
トラックドライバーというと、大変な労働だけど高収入というイメージが強かったのですが、大型トラックの年収を見ると1997年ピーク時は510万円だったのに対し、2015年には437万円という状況になっています。全ての産業の平均よりも50~60万円ほど低いという状況が継続しています。
そのようなことが理由で、同じ肉体労働になるなら建設業などのほうへと働き手が流れてしまっています。
全国のドライバー数は約80万人です。しかし労働者の高齢化も顕著に表れており、30歳未満は約3%、多くが40歳以上で8割近い割合です。
例えこの先景気が回復したとしても、このままではトラック運転手の給与や労働時間は改善の見込みがないため国の対策が注目されます。
国の対策「準中型免許」の新設
ドライバーが不足していることを解消するために、国も対策を講じていくことを決めています。
中型免許を取得するためには普通免許の取得から2年を経過しなければなりません。普通免許の取得は18歳からですので、中型免許取得は最短でも20歳にならなければ取得できない状況です。
そこで人手不足を解消するために、道路交通法を改正することで18歳から取得を可能とする「準中型免許」を2017年3月から施行し、高卒者を確保することにしました。
トラックの全長規制も緩和
国土交通省ではこれまでフルトレーラーの全長は最大21mだったのを25mまで緩和することも検討しています。
荷台を連結して運べる荷物を増やすという方針で、10tトラック2台分の荷物量が一度に運べることが人手不足への策として打ち出しています。
本当に国の策は意味がある?
ただし25m全長があるフルトレーラーを運転する場合には、大型免許以外にけん引免許も必要です。
大型免許取得者が不足している状況の中で、けん引免許の取得も必要になると人手不足の解決に繋がるかは疑問を感じる部分もあるでしょう。
しかしトラックの積載率は減少する一方で、運送業の稼働時間の約4割は実は道路の渋滞によって損失している時間になっているとも言われています。
それに加えて今後超高齢社会に突入すれば、間違いなく労働者の人口は減少し続けますので、人口減少を上回る生産性の向上が必要となります。
国のさらなる運送業の人手不足を解決する策に期待していくしかありません。