日本が抱える大きな問題が中小企業の後継者問題です。
日本に存在する企業の99%は中小企業ですから、中小企業が日本経済の基盤になっているのです。
もし、そのような中小企業が続々と廃業を決断すれば、日本はどうなってしまうのでしょうか?
事実、現在廃業を決断する企業は非常に増えているのです。
そこで今回はそのような要因の背景にある、3つの人材不足について解説させて頂きます。
人材獲得合戦
現在日本では人材獲得合戦が行われています。
その背景には、人口減少があり募集に対して生産年齢人口が少ないという企業にとって非常に難しい状況があります。
また、若者に多くはまだまだ大企業志向が強く、中小企業を志望する数は非常に少ないのです。
つまり、中小企業はそのような非常に少ないパイを取り合いしなければならない、もしくは大企業との人材獲得合戦を行い勝たなければならないのです。
そもそも多くの中小企業のビジネスモデル労働集約型であり、従業員の数と売り上げが比例するケースが非常に多くあります。
労働集約型を抜け出すには、機械化・自動化を進めることになりますが、それには大きなコストが発生するため、結局は競合他社との厳しい競争に勝つには人数をかけて、利益を削って行っていくしかない現状なのです。
そのような企業が人材確保できないとなると、自ずと業績は厳しくなるのは明白です。
そういった企業から競争に負け、売り上げを落とし、廃業に追い込まれていくのです。
本来は、このような状況にならないためには、競合他社と違ったフィールドで勝負できるよう独自固有の強みを磨きこまなければなりませんが、経営者が高齢であることもあり、会社の方針を大きく変えるような決定が行われず、ズルズル業績を下げていくとうケースが非常に多いのです。
職人技の後継者問題
そもそも従業員の数が足りていなければ当たり前のことですが、職人の数も足りなくなってきます。
中小企業はベテラン社員による職人技に依存した経営を行なっていることが少なくありません。
特に製造業や部品加工業のような、技術を必要とする業種であればあるほどこの傾向は強いようです。
現在、このベテラン社員の高齢化が大きな問題になっています。
そしてそれに付随して、ベテラン社員が持つ職人技の後継者がいないことも大きな問題です。
先ほども触れたように、多くの中小企業はその技術力を武器に経営を行なっています。つまり、職人技が受け継がれないとなると、武器を持たず丸裸で競合他社と戦うようなものなのです。
そうなれば、会社の売り上げが落ちることは誰が考えても明白でしょう。
そのような状況をできる限り回避するためには、会社の業務の中から属人性を可能な限り排除することです。要するに、「脱職人技」です。
属人性が高い業務が多ければ多いほど、教育コストがかかるものです。
中小企業はそのほど資金が潤沢にあるケースは少ないですから、採用した社員はできる限り早く利益を生み出さなければなりません。
そのためには、できる限り分業制に切り替え、1回あたりに覚える業務を少なくすることです。
そうすれば一つの業務ですぐに一人前になるので、会社に貢献するスピードが早くなります。
そして、分業化は採用でも非常に役立ちます。
分業化できていれば自ずとそれに連動した教育システムが構築できますし、利益を出すまでのスピードが早ければ積極的な採用を実施することもできるのです。
経営者の高齢化による後継者問題
そして最後が後継者問題で、これは中小企業の廃業理由の大部分を占めています。
後継者がいない理由の多くは、後継者育成を行なってこなかったことにあります。後継者育成は思っている以上に早い段階から行わなければなりません。
例えば、あなたが自分の息子を後継者に、と考えているとします。
その場合はいつ頃からアクションをかけるでしょうか。
本格的にとなると大学の就活時期や社会人になってから、と考える方が多いのはないでしょうか?
しかしそれでは後継者が見つからない可能性が非常に高いです。
なぜなら、そのタイミングにアクションをかけて後継者になるのならば、おそらく子供の頃からそういった意識を持っているからです。
つまり、重要なのはできるだけ子供のうちから後継者の話はしておくべきだということです。
もし、あなたの息子がすでに大学生になっていて、まだ具体的に話していないのであればすぐに行うべきです。
あなたの時代と違い、現在の子供達にとって後継者になることは選択肢の一つでしかありません。
特に、あなた自身が仕事を楽しそうにしていなかったり、会社の業績があまり良くない場合は継ぎたくないと思っている可能性が高いのです。
後継者に関しては、決めることも育成することも早いに越したことはありません。
これらの3つの問題が複雑に絡み合い、最終的には廃業という選択に繋がっているのです。廃業は、多方面に迷惑がかかってしまうケースが多いため、そうならないためにもできるだけ早くから対策を打つようにしましょう。