最も廃業率が高い業種は?傾向を知り経営に役立てよう

長年続く企業がある一方で、廃業してしまう企業も少なからずあります。
会社経営というのは、たとえ利益があっても存続できるとは限らず、経営者は如何にして存続させていくかも考えなくてはいけないのです。
そこで今回は、企業の廃業率を業種別に見ていき、そこから全体的な傾向を知って経営に役立てていただければということを考えていきます。

開業率と廃業率

廃業率というのは、廃業した企業の年間平均数を期間の初めにあった企業数で割り、その値に100をかけた数字です。
開業率も同様に、開業した企業数を全体の企業数で割ったものに100をかけた数字です。

この開業率や廃業率は、厚生労働省から発行されている雇用保険事業年報に記載されています。
それでは、具体的な数字を見てみましょう。

その年によってばらつきはありますが、2015年度の開業率は全体で5.2%となっており、一方で廃業率は3.8%となっています。
それ以前のデータでも、ほとんどの都市で開業率は廃業率を上回っているので、基本的に企業数は年々増加していることになります。

開業率が高い業種を上から見ていくと、宿泊業・飲食サービス業が最も高く、次いで建設業や生活関連サービス業、娯楽業などが続いています。
特に、建設業は最も事業所数が多いため、開業率の底上げに後見しているといえるでしょう。

廃業率については、やはり全体の事業所数が多い宿泊業や飲食サービス業が6.4%で最も高く、次いで生活関連サービス業や娯楽業、小売業などが高い傾向にあります。
開業率の高い建設業は平均程度で、医療・福祉が最も廃業率の低い2.4%となっています。

つまり、開業率と廃業率が最も高い宿泊業・飲食サービス業は、企業の入れ替わりが激しい業種ということになるでしょう。
同様に、生活関連サービス業及び娯楽業も、入れ替わりが激しい業種といえます。

また、建設業は今後開催されるオリンピックに向けて、増加傾向にあるということがわかります。
最も廃業率が低い医療・福祉については、入れ替わりが少ない業種と考えられ、開業率についても平均よりやや低い水準にあります。

廃業の理由は?

企業が廃業する理由としては、売り上げ不振による経営困難が理由としてまず思い浮かぶでしょう。
確かにそうした理由での廃業も珍しくはないのですが、他にも様々な理由があるのです。

特に最近では、業績が好調であるにも関わらず廃業してしまう企業が増えています。
その理由となっているのが、経営者の高齢化と後継者不足です。
最近、こうした理由での廃業が増えている背景について考えてみましょう。

かつての日本では、親の跡を子どもが継ぐというのはごく当たり前のことでした。
しかし、団塊の世代といわれる年代の人々が親元を離れて集団で上京し、地元以外に就職することが増えたころから、憲法における職業選択の自由という考え方が強く意識されるようになりました。

また、日本では長らく長子相続が当たり前とされていましたが、第二次世界大戦後からは民法で子どもは平等に相続できることが決まったため、自動的に長子が後継者になるという考えもなくなったことで、子どもの中で事業の承継を希望する人がいなければ、後継者がいないという状態に陥ってしまったのです。

そして、団塊の世代は現在定年退職を迎える年齢となりました。
その年代の人々が経営者となっている企業は後継者を定めなくてはいけない年代となるのですが、その後継者がいない企業が増えています。

後継者がいないまま、経営を続けているといずれ認知症などで大きなミスをする可能性もあり得る上、いつ病気などでリタイアするとも限りません。
そう考えた経営者が、充分な資産もあり従業員に十分な退職金を支払える今のうちに廃業してしまおう、と考えるケースが増えているのです。

これが大企業であれば、後継者というのは難なく決まるでしょう。
しかし、中小企業の場合は基本的に経営者の親族が事業を承継することが多く、また会社の役員などは、創業当初から一緒に仕事をしている経営者と同年代の場合が多いので、後継者としては問題があるのです。

2010年以降の企業の廃業理由では、倒産による廃業は減少傾向にあります。
その代わり、資産が充分にある企業や黒字となっている企業が廃業する割合は高くなっているのです。

廃業しないために

せっかくの自分の会社が廃業とならないようにするためには、2つの事に気を付ける必要があります。
一つは当然ながら、利益をきちんと上げて黒字経営とすることで、もう一つは早いうちから後継者を探すことです。

会社というのは、利益を上げることがその主な目的です。
たとえ自分がどれだけ仕事にやりがいを感じていても、赤字が続いているようであれば経営していても負債が増えていくだけです。

もしも今後黒字に転じる具体的なプランがなければ、これ以上赤字を増やさないためにも早々に廃業してしまい、また改めて黒字となるような会社を起業するというのも一つの選択肢となるでしょう。

また、後継者は早めに決めておく方がいいでしょう。
例えば、自分の子どもが跡を継ぎたいと考えていたものの、後継者となるかどうかがはっきりとしないために他の会社で働いていたとします。

その状態で自分が倒れた時、子どもに事業を承継して欲しいと願ったとしても、ちょうど仕事が面白くなっていたり、重大な役割を担っていて退職できない状況だったりして、そのまま廃業となる可能性もあります。

何かあった時に慌てて後継者を探しても、それはもう手遅れとなる可能性があります。
それよりも、後継者を早めに決定しておき、事業の承継までは会社の業務を覚えてもらうつもりでいた方が、いざという時に話がスムーズに進むでしょう。

どうしても後継者が見つからず、しかし事業は継続したいという場合は、M&Aという方法もあります。
M&Aというと大企業の買収というイメージが強いと思いますが、事業を始めたい人と経営から引退したい人とを結びつけるM&Aもあります。

M&Aの相手を自分で探すというのは難しいですが、M&Aの仲介をしている業者に依頼すれば希望通りの相手を見つけやすくなるでしょう。
経営権自体は譲渡することになっても、そのまま自分が社長として仕事を続けられるM&Aもあるので、早めにM&Aを決めても引退する必要もありません。

いずれにしても、廃業というのは自分のことばかりではなく、従業員の今後にも関わってくる問題です。
これまで会社の発展に尽力してくれた従業員にとって、どの方法が一番いいのかをよく考えて、廃業するのか、それとも後継者を見つけるのか、もしくはM&Aを考えるのかなど、多くの選択肢から最良のものを選びましょう。

これから景気は上向きになると言われていますが、まだまだ先行きは不透明な時代が続きます。
その中で、無事生き残るための方法をしっかりと考えていきましょう。

まとめ

廃業率というのは、その業種によって異なります。
特に廃業となりやすいのは飲食サービス業や宿泊業ですが、開業率も高いので入れ替わりが激しい業種といえるでしょう。
また、廃業といっても経営不振によるものばかりではなく、後継者がいないために黒字でも廃業となる場合もあるのです。
黒字だからと安心せず、しっかりと後継者を決めて廃業しなくても良いような、長く続く会社作りをしていきましょう。