行き過ぎたおとり広告、受ける企業ダメージ

その他のリスク

先日、回転寿司業界最大手の「スシロー」が、おとり広告を出していたことで消費者庁から措置命令が出され、大きな話題となりました。
集客を考えるのは企業として当然ですが、そのために行き過ぎたおとり広告を出してしまっては企業として大きなダメージを受けてしまいます。
その内容について、解説します。

行き過ぎたおとり広告

回転寿司業界スシローでは、頻繁に期間限定の商品などを出しています。
特に人気なのが、高級食材が期間限定で100円になるものなどです。
それを目当てに、スシローへと行く人も多いでしょう。

そして、スシローでは2021年9月に「世界のうまいもん祭」を開催し、そこで濃厚うに包みを100円(税込110円)で提供する、と広告を出しました。
うにがこの価格で食べられるとあって、多くの人がスシローへと食べに行きました。
しかし、訪れた頃には既に品切れだったのです。

そのことで、折角うにを食べるためにスシローを訪れた人々はがっかりし、スシローへと怒りを抱きます。
あれほど華々しいCMを出しておいて、品切れというのはどういうことだというクレームが多数出されました。

そのクレームの量に、消費者庁も見過ごすことはできませんでした。
そして調査を行った結果、それがおとり広告であったと判断したのです。
ここでいうおとり広告というのは、実際に購入できない商品やサービスを購入できるかのように表示することを言います。

スシローでは、元々キャンペーンの商品などの中でも販売できる数が限られていて売り切れの恐れがあるものについては、「売り切れ御免」と表示することがあります。
しかし、この「売り切れ御免」という文言は、消費者庁によると売り切れになった場合は許して欲しいという意味ではない、と判断されています。

この文言は、早く注文しないといつ売り切れになるか分からない、と購入意欲を煽るためのものだという見解が出されているのです。
スシローの場合、同業他店と比べても特に売り切れが多いというイメージも抱かれています。

また、過去にもスシローではタピオカがブームだった2019年に「光るゴールデンタピオカミルクティー」という商品を販売していて、人気があったためにすぐ完売となってしまったことがありました。
これはその後、生産体制を整えた翌月の中旬まで品切れ状態が続いていて、3ヶ月間でおよそ175万杯が売れました。

それ以外にもスシローの商品は特にスイーツが人気であり、多くの人気商品が登場しては売り切れになる、ということを繰り返していました。
食べたいと思って来店したものの、売り切れだったという体験をしたことがある人は多いのではないでしょうか。

こういった背景があり、スシローの社内では売り切れになるのは商品力の証明であり人気があるということなので、一度販売を中止しても再開した時にまた売れるだろうというのが共通認識となっているのです。

売り切れを当然のことと考えているため、キャンペーン商品が売り切れても特に大きな問題とは思わず、「売り切れになったのでごめんなさい」としか考えていないのでしょう。
そこで、今回のおとり広告の問題が起こったのです。

措置命令による企業ダメージ

スシローの場合、キャンペーン商品が早期に売り切れ、販売中止となったことも問題なのですが、それ以上の問題があります。
それは、売り切れで提供できない状態であるにも関わらず、宣伝を続けていたことです。

スシローのキャンペーンは、テレビでも頻繁にCMが放送されています。
そこで、うになどのキャンペーン商品が売り切れ状態になっているのに、その商品を含めた宣伝を続けていたのです。

CMは一度作成してしまえば放送し続けるしかない、と思うかもしれませんが、実は放送をキャンセルすることも可能なのです。
それをせずに放送し続けたことで、今回のおとり広告の問題へとつながっていきました。

また、自社のホームページ上でもキャンペーン情報はそのまま掲載されていました。
これを訂正するのはもっと簡単で、社内や代理店などへの連絡で止めてもらえば問題はなかったでしょう。

スシローの場合は、おとり広告の問題に関してそれほど大きなダメージを受けていません。
株価も下がりはしたものの一時的なものであり、それ以前からも下落傾向にあったため大きく影響したともいえないのです。

利用している客も、スシローで人気のネタは売り切れてしまうことに慣れているため、初日からうりきれという事態でクレームこそ入れるものの、もう二度と利用しないという人はほとんどいないのです。

しかし、おとり広告によるダメージがない企業ばかりではありません。
実際には、おとり広告のせいでダメージを受けてしまう企業が多いのです。
では、どのようなダメージがあるのでしょうか?

例えば、イオンペットではペットトリミングサービスにおいて炭酸泉シャワーを使用するかのような文言を記載し、さらにホテルサービスでも屋外で散歩を朝夕2回するかのように表記していましたが、そのようなサービスはありませんでした。

そのため、イオンペットに対してはこの2つのサービスにおいて、合計3280万円の課徴金を支払うよう命じられたのです。
金額的な問題よりも、そのような命令が出される以上は広告内容に虚偽があったということが認められたということになるため、企業のイメージも下がってしまうでしょう。

また、措置命令が出されたうえでさらにその表現を使い続けていたり、命令の内容を無視したりした場合は、刑事罰を受けることもあります。
刑事罰は、最大2年の懲役か最大300万円の罰金のいずれかです。

それを無視したのが従業員であれば、従業員への罰則に加えて事業者にも、最大3億円の罰金が科されてしまう可能性もあるのです。
イメージが低下したうえ、このような罰金を支払うことになれば企業ダメージはかなり大きなものとなってしまうでしょう。

まとめ

おとり広告に関しては、様々な業種で問題となっています。
特に目立つのは不動産会社のものですが、今回スシローがおとり広告を出していたということは多くの人に影響したため、大きな話題となったのです。
スシローが措置命令を受けたことが大きく影響しなかったのは、ごくまれなケースです。
ほとんどの場合は、企業にとって大ダメージとなってしまうため気を付けましょう。