M&Aで生き残る社員になるためには?

その他のリスク

M&Aで会社が買収された場合、そこで働く社員が今まで通り働くことができる可能性はそれほど高くありません。
特に、外資系企業によるM&Aなどであれば、働き方などにかなりの変化が生じるでしょう。
そんな中で生き残ることができる社員となるためには何が必要か、解説します。

M&Aによって買収された企業はどうなる?

近年は、M&Aがさかんに行われており、自社も例外とは言いきることはできなくなっています。
そこで気になるのが、買収された企業で働く人がどうなるのかということです。

社長は、後継者が見つかったことで引継ぎをした後は引退するというケースが多いのですが、役員に関してはそのまま働き続けることが多いでしょう。
しかし、役員待遇から外されるのが一般的です。

そして、社員については主に3つのパターンがあります。
まずは、今まで通りの条件で働き続けることができるケースです。
これは、買収した企業と買収された企業との待遇が近い場合の待遇です。

中には、合併したことで事業規模が大きくなり、上場したことでこれまでよりも待遇がよくなるケースもあります。
合併をしてから上場するまでは、しばらく時間がかかります。

そして、勤務地の変更など待遇が悪化するケースもあります。
合併後でも結果をしっかりと残すことができる社員に対しては好待遇を用意することもあるのですが、ほとんどの社員の待遇はよくなるとはいえません。

社員の待遇は、契約書の内容で大きく変わります。
しかし、交渉は希望したとおりにできるとは限りません。
そのため、社員の待遇をなるべくいいものとするには、専門家に相談しながら交渉を進めていく必要があるでしょう。

また、社員の扱いには企業同士の付き合いによっても変わります。
買収先の企業との関係が悪ければ、社員の扱いも悪くなる可能性が高いでしょう。
一方で、社長同士の仲がいい場合などは、社員もあまり悪く扱われないことが多くなります。

しかし、関係性が悪くても必ずしもつらい思いをすることになるとは限りません。
買収先の企業の方針や考え方によって、待遇や考え方は変わってくるからです。
場合によっては、元よりもいい待遇になることもあるでしょう。

近年はグローバル化が進んだことで、外資系企業などに買収されるケースも増えています。
そのため、上司が外国人になることや、社内では英語で会話する必要が生じることなども実際に起こっているのです。

もしもそれが不安な場合は、あらかじめ語学力を磨いておくなどの対策も必要となるでしょう。
少なくとも、英語を話すことができて損をすることはありません。

生き残る社員に求められるものは?

合併後、待遇については様々ですが、その中で生き残るためにはある程度の能力が求められることとなります。
生き残る社員に求められるのは、どのような能力でしょうか?

まず、買収された後の組織で注意が必要なものとして、レポートラインです。
買収前と比べて、レポートラインは複雑化することが多いのです。
これまで報告していた幹部が残っていたとしても、レポートラインは変更されている可能性があります。

例えば、救済型M&Aの場合は人事異動があり、組織改編も行われることになるのですが、買収した会社から新人幹部が着任した後でも元々の幹部が残っていることは珍しくないのです。

また、クロスボーダーM&Aの場合は日本という地域軸だけではなく、営業や製造、マーケティングなどの機能軸によるレポートラインもできてしまいます。
また、新たなプロジェクトチームが作られることもあります。

その中で、公式や非公式のホウレンソウやマトリクス的調整を行う能力がある社員は、生き残ることができるでしょう。
買収した会社が現場について把握して、組織の隅々まで方針を浸透させていくうえで、このような能力は重宝されるのです。

また、買収によって組織が再編されると、責任権限範囲が変更されることもあります。
クロスボーダーM&Aの場合は、日本が1つの地域という扱いになるため、本社社員として重要事項の計画を立案し、決定する立場だったのが、決められた戦略を実行するという立場に変わるのです。

この立場になった時、日本の商習慣の特殊性を理由として権限を守ろうと主張する人が多く、特に競合同士のM&Aでは顧客情報や開発計画で強調するのが困難となるのですが、買収後の新組織で自分を活かしたいのであればその主張は逆効果となります。

生き残る社員は、買収後の組織で自分が関わっている事業や仕事を新たな会社の戦略の中での位置づけを正確に理解して、それに応じた適切な行動をとる能力を持っています。
現状を理解せずに今まで通りを求める人は、生き残ることができないのです。

また、買収後の統合プロセスには強いリーダーシップが求められます。
リーダーシップには職場の人間関係を潤滑にするという面の他に、課題を解決するという面もあります。

この2つの側面のうち、買収後に変化する環境を乗り切るためには課題を解決するスキルが求められます。
統合プロセスにおいては、課題解決型のリーダーシップを発揮することが必要なのです。

統合プロセスでは、方針や目標、タイムテーブルをトップダウンで示して、PDCAによって計画の進捗をしっかりと管理する必要のある場面が、増えていくこととなるからです。
人間関係を潤滑にするタイプは、リーダーシップのスタイルを調整できるという点が重要です。

生き残る社員となるためには、この3つの能力が求められます。
これらの能力は、環境変化への適応力とも言い換えることができるでしょう。
生き残るのは強いものではなく、適応能力が高い人です。

たとえ人には負けない知識があっても、買収した会社でその能力を求めているとは限りません。
また、これまでの会社では特に優秀だったとしても、関係ないのです。

まとめ

M&Aが増えている昨今では、いつ自分の会社が買収されることがあってもおかしくありません。
社員の扱いは様々ですが、少なくとも買収先の企業にとって有用な人材であれば解雇されることはないでしょう。
解雇されずに生き残る社員となるには、課題解決型のリーダーシップや複雑になったレポートラインを処理することができる能力、新会社の戦略の中での自分の立ち位置を理解できる能力などが求められます。