現在、多くの人の交通手段として活躍している公共交通機関の中でも、特に大々的なのが鉄道です。
かつては日本国有鉄道だったのが分割民営化されたJRですが、現在になって「国営化」した方がいいという意見が散見されるようになりました。
JRが国営化する方がいい理由について解説します。
なぜ、今国営化されるべきなのか
JRは、JR北海道、JR東日本、JR東海、JR西日本、JR四国、JR九州にJR貨物を加えた計7社があり、すべてまとめてJRグループとも呼ばれています。
ただし、グループ会社ではなく、前身が日本国有鉄道だったというだけで、それぞれ個別の会社となっています。
また、かつては鉄道通信(日本テレコム)もJRグループでしたが、2001年に資本提携を解消してボーダフォンの子会社となりました。
その後、2006年にはSoftbankテレコムとなり、2015年にはソフトバンクモバイルに吸収合併されています。
このうちJR東日本、JR東海、JR西日本、JR九州は現在、上場している純粋民間会社であり、JR北海道、JR四国、JR貨物は独立行政法人JRTTが全株主を保有している特殊会社です。
また、鉄道情報システム(JRシステム)と鉄道総合技術研究所(JR総研)は、JR各社による共同出資法人となっているので、この点ではつながりがあります。
グループ会社ではなく独立しているため、同じJRでも営業施策や経営戦略などは独自性が強いという特徴もあります。
JRは各地域で独自に営業を続けていますが、なぜ今になって国営化した方がいいと言われるようになったのでしょうか?
それは、現在の状況を鑑みたものです。
現在、採算が合わないローカル線は多数あります。
その中には、地元の鉄道会社が頑張っているところもありますが、JRが運営している路線もあります。
そして、JRはそういった路線について、廃止しつつあるのです。
例えば、JR九州の日田彦山線では、豪雨災害で不通となった添田~夜明区間を廃止すると、2020年に決定しました。
JR北海道も、水害によって不通となった根室線富良野~上落合信号場、採算が合わない函館線の長万部~小樽の2区間を廃止することが2022年に決定しています。
これは最近決まったものですが、20年近く前から一部区間を廃止する動きはあり、現在までに10区間以上が廃止されています。
また、今後の廃止について協議されている区間も多数あり、収支が改善されない限りは廃止される見通しです。
民間企業である以上、利益を追求することは当然なので、赤字になるような区間は廃止となるのも致し方ないと言えるでしょう。
しかし、廃止されて困るのはその区域に住む人です。
そのため、国営化になれば廃止されないのでは?ということで国鉄に戻った方がいいと言われているのです。
インフラに関わるものは、利潤を追求しない国営化にする方がいいのではないでしょうか?
そもそも、なぜ民営化されたのか
JRが発足したのは、1987年のことでした。
第3次中曽根内閣の行政改革の1つとして、日本国有鉄道を地域別、および貨物で分割し、民営化するというものでした。
当時は、日本電信電電公社や日本専売公社と並んで三公社と呼ばれていたのですが、残る2つも同時期に民営化されました。
日本国有鉄道は、6つの地域と貨物、その他の事業で合計12の継承法人に継承されています。
民営化の経緯としては、まず国民の鉄道離れというのが問題となっていました。
自動車が普及したことで、地方での利用者が激減したのです。
また、それに加えて人件費の上昇という点も問題となりました。
国では、戦争引揚者の雇用対策に国鉄で大量に採用していたのです。
そのせいで職員の人件費がかなり高くなってしまい、東海道新幹線が開通した1964年には赤字となってしまいました。
国鉄は元々鉄道省の管轄でしたが、1949年に分離されて公共企業体として独立採算制になっていました。
しかしながら、国は経営責任を負わないにもかかわらず、運賃や新線建設、人事など経営に関することには国会の承認が必要と、強い影響力があったのです。
そのせいで運賃の値上げは中止され、民間企業を圧迫することを防ぐために、運輸業以外の他業種に参入することも認められませんでした。
首都圏への人口集中に伴い通勤事情が悪化したことで、国鉄は対策を求められました。
しかし、そういったケースでも国からの補助金はほとんどなく、自己負担で行っていました。新幹線の建設にかかる巨額の費用も、国鉄の負担です。
その後も、政府の指示を受けざるを得ない国鉄は多額の有利子負債を抱えることになってしまい、赤字は急速に拡大していきます。
1969年からは工事費に補助金が交付され、1976年からはローカル線維持費として交付金が追加されましたが、焼け石に水でした。
このような状況で、1982年には国鉄改革のため分割民営化するべき、という意見も出され、国鉄再建監理委員会も発足されました。
当時の内閣総理大臣の中曽根は、国鉄の分割民営化に反対する国鉄首脳陣を更迭するなどして、分割民営化が認められたのです。
それまでに累積していた債務は37兆円にもなり、利払いだけで毎年1兆円支払う必要がありました。
それは、バブル景気で土地価格が上昇している時に保有資産を売却しても、まかないきれない額だったとされています。
余剰人員を整理し、新規採用の停止も行うなどで人件費削減に努める代わりに、債務補填が承認され、当時日本最大だった国鉄の労働組合も解体されました。
そして、地域密着を図るために地域ごとに分割して民営化されたのです。
「国鉄」時代は、完全なる国営化ではなく、都合の良い時だけ国営(選挙に利用)、負担は国鉄にというものでしたので、今後は完全国営化し、利潤を追求することのない、国民を救う方向に転換していかなければいけません。
まとめ
JR各社も、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って利用者数は大幅に減少し、経営はかなり苦しいものとなっています。
そんな中、今度はJRを完全国営化し、政府は廃止される区間が少しでも少なくなるよう、しっかりと支えていくことが望まれます。
国営は民間と違い、利益を重視する必要がありません。
国にとって利益とは、日本国民が安全・安心な暮らしを維持することであり、利益がで出る・出ないという判断で、インフラを廃止してはいけないのです。