まだ記憶に新しい人もいるかもしれませんが、2014年後半には食品に異物混入した事件が相次ぎメディアやインターネット、SNSなどを賑わせました。
異物混入の原因が明確にならなかったことにより、回収する商品の特定ができませんでした。
そのため全工場の生産自粛、全商品の販売中止、全工場の設備改修まで行うこととなり、生産再開まで収益がなくなって再開後も売上回復できる保証はどこにもありません。
また、別の会社で冷凍食品に異物混入が発覚しましたが、具材に使用した野菜からの混入だと原因が特定されたことによって回収商品の特定が可能となりました。
それが消費者の安心につながったため、経営的にもさほど大きなダメージを受けず事態が収束しています。
原因が特定できるかどうかで経営ダメージも変わる
このように異物混入などが発覚した場合には、原因が特定できるかによってその後の対応や経営的に受けるダメージにも大きな差が出てきます。
まずは食品産業を取り巻くリスクにはどのようなものがあり、どのようなことに対策を講じておくべきかを十分に理解しておくようにしましょう。
食品産業を取り巻くリスクとは?
食品が安全に、そして消費者が安心して手に取ることができるように、食品産業が対処すべきリスクには次のようなものがあります。
・意図的な異物や毒物の混入
本来は含まれてはいけない異物や毒物が意図的に食品に混入するというリスクがあります。例えば社会問題になった中国産冷凍ギョーザ事件はこの類型で、食品業界で最も警戒されるリスクです。
・非意図的な異物や毒物の混入
意図的ではなく非意図的に異物が混入するというリスクもあります。食品業界にとっては 最も基本的なリスクと言えるでしょう。
・消費者の不信と不安によるリスク
食品や食品産業に対して消費者が不信を持つリスクですが、消費者の不買運動や世論によって企業の命運が左右されることも決して珍しいことではありません。
食品産業におけるリスクへの取り組み
食品産業が抱えるリスクについて、次のような取り組みを講じていく必要があるでしょう。
・HACCP
食品の原料入荷から製造、出荷まで全ての工程において、事前に危害を予測して防止するための重要管理点(CCP)を特定し、継続的に監視と記録を行って異常が認められ場合には直ちに対策を講じて解決を図るというものです。製品が出来たと同時に品質保証ができますので、不良製品が出荷されることを未然に防ぐことができます。
・Traceability
食品の生産、流通、加工の段階において追跡して情報化するシステムのことです。問題が発生した時の事後対応として有効性があるシステムだと言えるでしょう。
・食品表示
原産地、原材料、食品添加物、賞味期限、消費期限、遺伝子組み換え食品など、食品品質を保証する情報源を表示することは食品製造者と消費者をつなぐ命綱とも言われます。
・食育、広告規制
日本の場合には食育基本法を背景とした食育活動があります。欧州では有効性に批判はありますが、子供向けの食品広告に関する業界の自主規制などがあります。
・異物混入防止対策
異物の混入の経路として考えられるのは、原材料、製造工程中、製品保管中の3つです。異物混入を防ぐためには、それぞれに異物が混入しないような策を講じていくことが必要となるでしょう。
食品産業に必要なリスク管理とは
食品産業はリスク管理を十分に検討しておく必要があります。異物混入など事故が起きた場合には、原因を特定できなければ多大な経営ダメージを負うことになります。
製品の製造工程の中で、どのような対策があるかを1つ1つ見極めながら十分に注意しておくことが必要です。