M&Aで成功する企業と失敗してしまう企業が出てくることには理由があります。成功する確立は5~30%と言われていますが、戦略の一手として有効に活用できなかった理由として、譲渡価格や戦略、M&A後の統合作業などが影響しているようです。
譲渡価格はどのように決めるか
価格決定までには様々な流れを経ることになるでしょう。双方合意までは事業の評価やリスクの洗い出しが必要ですし、合意した後も買収前調査が行われます。さらに契約内容を詰めて買収条件を検討することになるでしょう。
価格の決定方法には、バランスシートの資産価値を基準にする方法、事業を行う企業の時価総額を参考にする方法、将来のキャッシュフローを予測した上で現在価値へと割引く方法、過去の収益を参考にのれん代を算出する方法などがあります。
結局は相場観?
ただし、いずれも絶対的なものではありませんので、相場観により双方が合意した価格が適用される傾向が強くなります。そのため通常価格より高くなりがちです。
一般的に売却企業が自社に価値をつけて売却する場合、市場価値の3割前後は高くなるようです。
売却側の価格のイメージ
売却する側にしてみれば、それまでの苦労や培った技術やノウハウ、見込まれる売上や利益などから算出された価格に対してもう少し高くなると思っていたと思いがちです。
しかし経営者が企業融資の連帯保証となっている場合などは、連帯保証から開放されるならと安くても良いと思う傾向が強くなるでしょう。
買収側の価格のイメージ
一方買収する側は、投資効率やリスクから考えて、採算に合うのか、決算の影響、相乗効果や業績悪化などの不安を抱えることとなり、思っていたよりも高いと思う傾向が強くなります。
しかし譲り受ける企業に価値を感じれば、買い逃すくらいなら多少高くても良いと考える傾向にあります。
この売却側と買収側の価格イメージの異なりを埋める適正価格であることが、円滑な企業譲渡を可能とし、M&Aを失敗と思わないことに繋がります。
戦略を軸とした判断ができているか
企業はM&Aは戦略手段では無く目的だと捉えられることが多く、買手で経験が少ない企業の場合には売手の話を鵜呑みにする傾向も見えます。
しかしあくまでもビジネスですので、案件を評価するのは買手側となりますので戦略を軸として判断していくことが必要です。
統合後のシナリオはできているか
売却する企業と買収する企業の時系列は同じではありませんので、売却する側は事業を精算すれば終わりという感覚を持つかもしれませんが買収側はそこから再スタートです。
そのためM&Aを検討し、基本合意を交わすあたりから統合後のシナリオを検討しおくことが必要です。
これまでの経営陣が不在になった後に、買収組織のマネジメントを含めた統合計画の時間軸は売却側に意思が無ければ動けません。
M&Aを失敗に終わらせないために
M&Aを成功させるには、適正価格での譲渡、そして戦略をしっかり検討しておくことが必要です。抜けがあれば間違った方向へと進むこととなる可能性が高くなりますので、売却側も買収側も何に注意すべきかを改めて理解しておくようにしましょう。