親族への事業承継の壁

経営者の高齢化が進む中、何かと話題になる「事業承継」。事業承継の準備は必要だが実際は日々の業務が忙しく、事業承継の準備に着手ができていない。という経営者の方が多いのではないでしょうか。2014年版中小企業白書では、事業を「自分の代で廃業することをやむを得ない」と考える経営者の約3割は、事業承継を検討した。と回答しています。
事業承継が円滑に進まなかった理由として、
① 将来の業績低迷が予測され、事業承継に消極的。
② 後継者を探しても適当な人が見つからなかった。
この2つの理由が全体の約8割を占めていました。
では、業績は今後ある程度成長することが見込まれ、親族などの後継者がいれば円滑に事業承継されるのでしょうか?

親族内の承継は困難な時代に?

少子化によって子供の人数は減少しています。後継者がいたとしても他の仕事に就いていれば、事業を継いでもらうのは難しいかもしれません。
経営者は60代・70代という方も多く、子供の年齢は概ね40代前後ではないでしょうか。そうなると子供は他の地域に住まいを構え、家族を持ち自分自身のライフスタイルで生活をしている状況ですので、親の事業を引き継ぐのは容易ではないかもしれません。
経営者自身も今は業績好調だが、今の事業の将来性を考えると不安を抱えている方も多いようです。このように少子化によって後継者が不足しているだけではなく、後継者の候補がいたとしても引き継げない事情があるのです。

資産・負債の承継

親族内の承継が難しい理由に、自社株承継の税負担や会社の借り入れに際しての個人保証・担保の引継ぎ問題などがあります。金融機関からの借り入れに対し、多くの経営者が個人的な連帯保証を行ったり、自宅などを担保としているのが実情です。
このような融資は現経営者の経営手腕への信頼に基づいて融資されていることが多い為、後継者に経営権を譲るとしても負債も含めて引き継ぐ必要があり、親子などの親族であったとしても大きな壁となります。

経営の承継

企業の経営には指導力・判断力など企業を経営していく上で様々な能力が必要となります。現経営者の経営能力がそのまま承継できるかというと、後継者の得意とする能力を見極めた上で承継していく必要があります。また、役員や従業員の多くが現経営者の元で業務をしているため、役員や従業員の理解と支持を取り付けた上で、後継者が会社をまとめていけるかという判断も必要になります。

このように親族への事業承継をする際も多くの課題があるため、日頃から後継者とコミュニケーションをとりながら準備を行い、後継者の考えや能力を事前に把握していきましょう。