年次有給休暇をとりづらい中小企業の取得率の実態
日本の年次有給休暇の取得率は毎年50%を下回っている状況であり、約16%の正社員が年間を通して1日の取得も行えていないという現状にあります。長時間労働者であるほど取得率が低い傾向にあり、特に中小企業では大企業より取得率が低いようです。
取得率向上を目標に
政府の目標としては2020年に取得率70%になることですが、この現実とかけ離れた状況を打破するためには年次有給休暇の取得を促進するために2015年4月、改正労働基準法案が国会に提出されています。
年次有給休暇の取得方法については、現在は労働者が休みたい時期と日数を指定して申請する方法です。今回の改正されたことで企業は管理職を含む全正社員に対して最低年5日分年次有給休暇を取得させるということが義務付けられ、違反した場合には罰則(30万円以下の罰金)が科せられる方向で話が進んでいます。
現在の年次有給休暇の取得は使用者の承認が必要?
年次有給休暇は労働者に認められた権利です。通常であれば承認を得る必要はないのですが、会社が事業を運営することに支障が生じる場合は使用者側が時季変更権を行使することができます。
年次有給休暇の労働者による買い上げは可能?
年次有給休暇を労働者が買い上げることは原則的には認められていません。ただし法定日数を超える休暇日数分、時効や退職・解雇によって消滅した日数分は例外とみなされます。
年次有給休暇取得義務化の目的
そもそも年次有給休暇が設けられている理由は、労働者の心身疲労の回復、労働力の維持培養を図る目的です。このため有給休暇の取得ができていない労働者への長時間労働を抑制することが今回の義務化の目的になります。これにより労働者の健康を確保することができるでしょう。
年次有給休暇取得義務化の内容
今回の改正労働基準法による年次有給休暇の取得義務化の対象者は、有給休暇の付与日数が10日以上の労働者です。10日に満たない日数の短時間労働者(パートやアルバイトなど)は対象外です。
労働者に付与される年次有給休暇最低5日については、使用者側がその時季について指定するという義務があります。計画的に付与がされた場合や付与労働者が時季を指定した場合にはそれらの日数を5日から差し引いて残った日数に対して使用者に時季指定を義務付けるようになっています。そのため計画的に付与されることで5日の取得が既に予定されている場合、労働者が5日以上の時季指定を行っているは使用者が指定する必要はなくなります。
今後の有給休暇消化はどう動くのか
厚生労働省が打ち出した労働者に対する年5日の有給休暇取得の義務化についての労働基準法改正案は平成27年度通常国会で提出されました。施行予定は平成28年4月でしたが、現在衆議院での審議は止まっている状態です。大きな議論を呼んでいる改正案のため、実施される日も間近かもしれません。