従業員の健康管理にどれほど気を配っているでしょうか?
年に一度の健康診断くらい、と答える経営者の方がいれば少し注意をした方が良さそうです。
近年では健康経営という言葉が登場するほど、経営において「健康」は非常に重要になってきているのです。
そこで今回は「企業は守りの健康管理から攻めの健康経営に転換しよう」というテーマで解説をさせて頂きます。
健康経営とは?
近年企業経営において「健康」が非常に重要視されています。
その背景には、社会や経済構造の変化に伴い、働く環境が変化してきたことがあります。
そのような変化の影響で、働き手の健康が害されるケースも少なくなくなってきたことがあります。
また、少子高齢化の促進により、働き手の確保が難しい現代において、既存の従業員の定着率や生産性アップの取り組みが必須になってきています。
このような中、企業経営において従業員の健康が重要な経営課題として、積極的に改善に取り組む企業が増えてきていることが「健康経営」という言葉が注目され始めている要因なのです。
最近では、本屋に行っても健康に関連するビジネス本が非常に増えているのがわかりますが、それもこのような要因があって起きているのです。
従業員が健康になることで、あらゆる面でコストが削減できたり生産性が上がったりなど多くのメリットがあることに気づいた企業がすでに取り組みを行い始めているのです。
守りの経営管理と攻めの健康経営
これまで従業員の健康管理といえば、労働者の安全と衛生についての基準を定めた「労働安全衛生法」のもと、実施されることが一般的でした。
簡単にいえば、とにかく従業員が怪我をしたり、病気になったりすることがないよう健康管理することで企業運営を円滑に行なおうというもので、どちらかといえば守りの戦略でした。
これをこの記事の中では、守りの健康管理と呼んでいます。
そして、これから求められるのは、攻めの健康経営です。
攻めの健康経営とは、従業員の健康を管理する目的が異なります。
大前提として、企業が成長するために従業員は貴重な経営資源だと考え、従業員が身も心も健康に働くことで高いクオリティで仕事を行うことができ、結果として業績を伸ばすことができるというものです。
だからこそ、従業員の健康に対する投資を積極的に行います。
攻めの健康経営により得られるメリットは大きく3つです。
一つ目は、コスト削減です。
高齢化が進み、社会保障や国民医療費、介護保険給付などの財源確保が非常に難しくなってきています。
例えば、厚生労働省の資料によれば、2015年時点で国民医療費は40兆円、これが10年後の2025年には約60兆円に達する見込みとのこと。
他にも、介護保険給付費も2015年10兆円から、2015年で約21兆円になると見込まれています。
このように今後ますます拡大して行く一方で、そのしわ寄せは企業にきており、このままではますますの負担増となる可能性が非常に高いのです。
こういった費用が伸び続けている要因は、健康寿命と平均寿命に差がある体といえます。
要するに、死亡するまでに健康でない期間が非常に長いからこそ、医療費や介護給付が必要になるということです。
そのような問題を少しでも解決し、介護保険料給付や社会保障費を削減して行くためにも、すべての企業が健康経営を進めなければなりません。
二つ目は、企業のリスクマネジメントがあります。
近年労働災害は企業にとって大きなリスクになっています。
長時間労働による過労死などニュースなどで見かける頻度が非常に高くなっております。そして、そのような報道が出た企業は業績が非常に厳しくなる傾向にあります。
つまり、一度悪いレッテルを貼られてしまうと、そのあとの人材の定着率や採用が非常に難しくなってしまうのです。
実際、そのような報道を受けたことで人材確保ができず、数ヶ月の間お店を閉める、もしくは深夜帯は営業しないというような対策を取らざるおえなかった企業もあります。
このように従業員が健康を著しく崩してしまうことは、企業にとっても大きなリスクなのです。
また、万が一大きなニュースにならなくても、現代はネット社会ですから、
情報を隠し通すことは不可能に近いのです。
そういった影響を受けて、近年では長時間労働や職場ストレスなどのストレスチェックへの対応が非常に急ピッチで進められています。
労働安全衛生法でも一部法律を改定し、ストレスチェックが従業員50人以上の場合は実施されることとなったのです。
そして3つ目は生産性の向上です。
攻めの健康経営における最も大きなメリットは間違いなくこの生産性向上でしょう。
従業員が仕事において心身の何らかの不調が理由で、その従業員が持っている本来のパフォーマンスを発揮できていない状況をプレゼンティーズムと言います。
アメリカの実験では、このプレゼンティーズムによる生産性損失のコストが4分の3近くにのぼったとのことです。
また、このプレゼンティーズムの厄介なところは、本人がその状況に気づいていないケースが多いということにあります。
会社を休むほど大きな不調ではないことから、本人も気づかずに生産性だけ下がっているのです。
これは周りから見ても把握しにくいことから、見えないコストということができます。
先ほどあげたストレスチェックや日々のコミュニケーションの中で、できるだけこのような状況になる前に対策を打つことや、早期発見できる仕組みを作ることが重要です。
健康経営が競争力をアップさせる
健康経営はすべての企業が取り組むべき課題です。
しかし、実際は健康にも力を入れたいけど、まだまだそんな余裕がないという経営者の方も多いのではないでしょうか?
健康経営を意識することで、逆に労働時間が下がり業績を下げてしまうのではないかと不安に思う方もいるかもしれません。
確かにその懸念はあるでしょう。
しかし、逆にいえば、従来のやり方でどれほど業績を伸ばすことができるでしょうか?
なんども触れているように、現在は人材獲得が非常に難しいものです。
会社の業績を伸ばすために、毎回人材確保をしなければならないという組織では今後厳しくなるのは明白でしょう。
もちろん採用できることも大切ですが、それ以上に一人当たりの生産性をどれだけ上げられるか、そして結果的に他社に対してどれだけ競争力を発揮できるかが重要です。
そういった点で、健康経営がうまく回れば大きな武器になり得ます。
心身健康に働けるということは、一人一人の生産性は言わずもがなアップします。
さらにメリットがあります。
外部から見ればあなたの会社の従業員は楽しくイキイキと仕事を行っているように見えます。
それは採用にもつながります。
リファラル採用のような紹介採用が増加するなど、あなたの企業で働いてみたいと考える人も増加する可能性が高いのです。
そうなれば、単なる生産性アップだけでなく人材確保にもつながり、より会社の業績アップにつながるでしょう。
このように攻めの健康経営は想像以上に大きなメリットを持っています。
そしてまだまだ多くの企業では取り組めていない部分です。
だからこそ、早いうちから取り組むことで先行者メリットを得ることができますし、何と言っても従業員が楽しそうに働くため社内の空気が一変します。
そして、結果的に業績アップもついてくるわけですから、やらない手はないでしょう。