経営者が認知症・・・属人的株式の設定

経営戦略

株式会社が発行する株式には、いくつかの種類があります。
その中の一つとして、属人的株式というものがあるのですが、この属人的株式を設定しておくことは、万が一経営者が認知症となった時の備えにもなります。
属人的株式というのは、どういったものでしょうか?

株式の種類とは

株式にはいくつかの種類がある、という事を知らない人は多いでしょう。
それは、株式の上場市場などの違いではなく、そもそも株式の内容が異なっているというものです。
どのような違いがあるのでしょうか?

通常とは異なる株式として、種類株式というものがあります。
これは、内容が異なっている複数種類の株式のことで、例えば先代の経営者に拒否権を持たせることで、後継者のモニタリング期間を設けることや、議決権を後継者へと集中させること、少数株主をなくすることなどが可能です。

一方、属人的株式は種類株主の一つとされることも多いのですが、大きく異なる点が一つあります。
それは、取り扱いの違いを株式に属するのではなく、株主に属するものとして考える点です。
そのため、本質として種類株主には含まれません。

属人的株式で株主毎に定めることができる権利の違いとしては、主に3つの点があります。
それは剰余金配当を受け取る権利と、残余財産の分配を受けとる権利、そして株主総会での議決権についてです。

株主平等の原則という決まりがあるのですが、この属人的株式については例外として扱われます。
また、その性質上株式を非公開としている非公開会社でしか設定することができません。

それから、属人的株式はあくまで株主個人に対して定められたものなので、その株式を引き継いだ後継者には権利などが引き継がれることはありません。
属人的株式を設定するにあたっては、特殊決議として総株主の半数以上、議決権の4分の3以上の賛成が必要とされます。

属人的株式をどう活用すればいいか

それでは、属人的株式をどのように活用すれば、経営者が認知症となった際の備えとすることができるのでしょうか?
属人的株式をどのようにすればいいのか、具体的に解説していきます。

まず、非公開会社の株式については、経営者が最も多くを保有しているのが一般的です。
後継者がいれば、後継者に株式の名義を変更して譲渡するかもしれませんが、やはり経営者の方が多く保有していることになるでしょう。
そのせいで、経営者が認知症となった場合には株主総会での決議ができなくなり、経営にも支障をきたすこととなります。

しかし、後継者が持つ株式の議決権を条件付きで増やすことで、その事態を防ぐことができます。

例えば、経営者が持つ株式の10分の1の株式を後継者が持っている場合、予めその株式を属人的株式としておき、経営者の判断能力が失われた際には後継者の持つ株式における議決権を15倍にする、など後継者の議決権が過半数となるように定めておけば、経営者が認知症となった際にも会社の経営については問題無く進めることができます。

もちろん、経営者が特に問題ないうちは議決権も通常通りなので、経営者が過半数の議決権を持つことになります。
そして何かあった時には、後継者へとスムーズに議決権が移行することになります。

このように、属人的株式を活用することで、特定条件下でのみ指定した相手の議決権を増やすことができるので、経営者が認知症となった時の備えとすることができます。
一度、設定しておくことを考えてみてはいかがでしょうか。

まとめ

経営者が認知症となってしまい、会社の経営に支障が出るという事態を聞くことがあります。
たとえ後継者がいても、正常な判断ができないことがある経営者が議決権を持っているからです。
そういった事態に備えて、属人的株式を設定することで特定の条件下における後継者の議決権を増やせるようにしておき、経営をスムーズに引き継げるようにしておきましょう。