昨今の日本では、後継者不足などで経営者が高齢化していることが問題となりつつあります。
経営者が高齢化してくると、健康面などが不安となることが多いのですが、特に深刻なトラブルとなりやすいのが認知症問題です。
経営者が認知症となった場合、どのような問題が生じるのでしょうか?
企業の信用問題
経営者が認知症となった場合の問題として、まず企業としての信用問題が生じます。
この信用問題ですが、具体的にはどのような問題が生じるのでしょうか?
経営者が認知症となることで、どのように企業の信用が損なわれるのかを考えてみましょう。
経営者は、様々なことを決定して契約を結び、他の企業と取引をします。
しかし、認知症となった場合は記憶障害が生じます。
そうなると、例えば直前に交わした取引契約の内容について、忘れてしまう可能性があります。
契約書があったとしても、その契約を結んだ覚えがないため、取引先に問い合わせることとなるでしょう。
確かに契約を結んだのに、その内容について問い合わせがくるようなところと取引するとなると、不安に思われても当然でしょう。
また、銀行の問題もあります。
銀行から融資を受けている企業が多いのですが、多くの場合は銀行から融資を受けて、返済が終わると再び融資を受けるか、もしくは返済途中でも追加融資を受けることがあります。
しかし、経営者が認知症となってしまった場合は、銀行がそれ以上の融資を認めてくれなくなることがあります。
場合によっては、現在の融資についても早期返済を求められることとなるでしょう。
それはなぜかというと、銀行が融資をするかどうかの判断は、企業の業績や事業計画だけではなく、経営者そのものも判断の基準としているからです。
この経営者なら大丈夫と思って融資をしているのに、経営者が認知症となってそれ以上の経営が困難となった場合は、また最初から審査しなおすことになるのです。
中小企業などは、銀行からの融資が受けられなくなると資金繰りが難しくなることも少なくありません。
そうなると、ますます他社からの信用が失われることとなり悪循環に陥ってしまうのです。
事業承継の問題
経営者が認知症となった場合は、事業承継の問題も生じます。
認知症の状態では契約などが結べないため、議決権を持っている場合は多くのことが決定できなくなるばかりではなく、後継者にその株を譲るといったことも難しくなるのです。
創業者であれば、会社の株の過半数を持っていることは珍しくありません。
その株を持った人が認知症となってしまうと、会社としてはどうにもならなくなります。
それを防ぐために、認知症になる前の対策が重要となるのです。
認知症対策としては、家族信託や任意後見制度が一般的です。
いずれも、認知症となる前に手続きをする必要がありますが、その契約が効力を発揮するのは自分が認知症などで判断能力を失ってから、と設定できるため、あらかじめ設定しておくことに問題はありません。
とにかく重要なのは、自分が認知症となったことで会社が共倒れになるのを防ぐことです。
特に、その会社を承継する人が決まっている場合は、しっかりと会社を残すために手続きをしておくべきでしょう。
まとめ
経営者が高齢となった場合、認知症問題について心配する人も多いでしょう。
認知症はいつ、誰がなるかはわからないので、自分は大丈夫などと思い込んでいると取り返しがつかないことになるかもしれません。
認知症になってしまうと、会社の経営にも大きなマイナスとなってしまいます。
それを防ぐためにも、認知症となる前にあらかじめ対策をしておき、スムーズに会社が存続できるように備えておきましょう。