経営者にとって、企業の経営と同じくらい従業員の雇用を守ることは大切ですよね。
そんな時に活用できる、雇用調整助成金という制度を知っているでしょうか?
これは、従業員の生活を守るために欠かせない制度になります。
今回は、制度の内容について、基本的な内容だけでなく特別措置の内容も含めて解説しましょう。
雇用調整助成金の内容~申請条件や特別措置の内容について解説します~
雇用調整助成金とは、従業員を解雇せずに休業手当を支払った場合に、国が企業が支払った手当の一部を助成する制度になります。
例えば、企業の経営上の問題から経営を縮小し休業の措置を行う場合、その間従業員は通常通り働くことができなくなりますよね。
会社都合での休業に当たる場合は、休業手当を従業員に対して支払わなければなりません。
ですが、経営状態が苦しい企業にとっては、休業手当を支払うとさらに経営が苦しくなるといった悪循環になり兼ねないでしょう。
そんな時に利用できる制度だと思って下さい。
まずは、申請をする際の条件について見てきましょう。
・申請条件や手続き、助成額の概要
制度を利用には、企業や個人事業主で事業活動の縮小が余儀なくされた事情があり、直近3カ月の売上高が前年同比の10%以上減ったことが求められます。
また、助成対象となる従業員は6カ月以上雇用保険に加入していることが前提になりますので、アルバイトのような形には対応できません。
助成の上限額は、従業員1人当たり8330円になっています。
よく、この助成額が従業員に直接支払われると思ってしまう人がいますが、申請するのは企業になりますので企業に支払われることになります。
あくまでも企業が従業員に支払った分をカバーする目的で制度がありますから、企業のサポートをするものだと思って下さい。
また、今回は助成の上限額をご紹介しましたが、基本的には休業手当で支払った金額の一部のサポートになりますので、企業の状況によって額面は変化します。
助成率は大企業が1/2、中小企業が2/3の割合になっていますので、この割合で助成額が決まると考えていいでしょう。
例えば、休業手当の支給時に6000円を支払った場合は、本制度を利用すると企業に対し4800円くらいの支給がされることになるでしょう。
満額ではありませんが、差額分が小さくなりますので、企業の負担を少し軽減することができますよね。
そして、手続き上で重要なのは、休業等を検討し制度を利用する場合は、事前に計画書を提出する必要があるということです。
ですので、企業内での手続きが終わってから、後から計画書を提出してしまうと受け付けてもらえませんから注意して下さい。
計画書の提出タイミングは、間違ってはいけませんよ!
・新型コロナウィルス対策としての特例措置で変わった部分
4月1日から、感染症の影響を考慮して、雇用調整助成金の条件等が緩和されることになりました。
ここでは、大きく変わった点について解説したいと思います。
まず、申請条件の関係では、新型コロナウィルスの影響を受けた全業種で、直近1カ月の売上高等が前年同比の5%以上減った場合に変更になりました。
減少割合が、10%から5%に緩和されましたよね。
さらに、雇用保険の加入期間が、6カ月未満に変わるだけでなく、未加入の人にも対応できるようになったのは大きいことでしょう。
つまり、雇用保険に加入できないアルバイトやパート、派遣社員のような雇用形態の人たちでも休業手当を出した場合は助成が受けられると思って下さい。
これは、従業員に限らず、企業にとってもメリットになりますよね。
また、助成率が一定の条件を満たすと拡充できることと、休業等の計画書の提出が事後提出でも可能になったことが大きな変更点になります。
感染症の対策として、先に休業措置を行った後に申請しても問題ないのは手続き上助かりますよね。
そして、現状への対応としては、申請から助成まで迅速に対応することが求められているでしょう。
ですので、申請時の手続きにおいても、簡略化できるような仕組みに変更されています。
また、5月20日からはオンライン申請が可能になりますので、より手続き面での簡略化が期待できるでしょう。
・助成金を受け取るまでの注意点
特別措置の元で申請をする場合は、申請の期限が6月30日までになっていますから、申請し忘れたということがないようにして下さい。
また、一度申請したから終わりではありません。
この制度では、計画書を出して休業した後に、支給申請という手続きがあります。
どのタイミングで行われる手続きなのか、少し確認してみましょう。
通常時の場合、支給までの流れは①労使協定の締結や②計画書の提出から始まり、③休業実施、④支給申請を経て、⑤労働局の審査から支給の決定という形になります。
ですが、今回の特別措置で計画書の事後提出が可能になったため、支給申請のタイミングが通常とは違ってきますよね。
従って、計画書を事後提出した場合は、提出日の翌日から2カ月以内に支給申請の手続きをするようにしましょう。
これは、通常時のタイミングとは違っていますので、不安な人は念のため担当者に確認しておいた方がいいですね。
上記の流れからすると、③が最初に来ることになって、その後①、②の流れになると考えると分かりやすいでしょう。
雇用調整助成金を活用することのメリットとは?
ところで、ここまでの流れを読んだ時に、手続きや従業員とのやり取りが大変だなと感じた人はいませんか?
確かに、労使契約の締結から始まり、支給に至るまでに求められていることが多いですよね。
ですが、活用することで企業には大きなメリットがあるのです。
分かりやすい例としては、解雇することで発生するデメリットを回避できる点にあるでしょう。
解雇するとなると、従業員は生活面で困窮してしまうのが目に見えていますし、企業にとっては優秀な人材の流出に繋がりかねません。
そのため、景気が回復し経営状態が良くなったとしても、以前のような経営ができない可能性があります。
特に、解雇した不足した人材を埋めるために新規採用した場合は、人材育成に改めて時間やコストがかかりますから、経営的には好ましくないでしょう。
一方で、休業を検討する時は苦しい状態であっても、休業手当を支給して解雇を避ける対策を取った方が、長い目で見ると経営におけるリスクを小さくできます。
経営者の視点から見ると、どちらがいいのかは一目瞭然ですよね。
何より、少しでも手当てが出て、雇用が継続できるとなると、企業に対する従業員からのイメージが違います。
苦しい状況でも自分たちを大切にしてくれるという行動は、休業明けのモチベーションに繋がることが容易に予想できますよね。
何より、景気が回復した際にすぐに経営の回復を見込めますから、従業員に対しての対応は今後の経営を左右すると思ってもいいでしょう。
このような視点から制度を見ると、申請条件に該当するならば活用した方が、雇用主・従業員双方にとってプラスにしかなりません。
新型コロナウィルスの状況は、ピーク時より落ち着いては来ましたが、まだまだ先行きが読みにくいです。
緊急事態宣言がまだ続いている地域もあり、事業の開始のタイミングが掴めない企業もありますよね。
今回の事例を通して、このような制度があるということを覚えておいて下さい。
まとめ
会社都合による休業で従業員に休業手当を支払う場合、企業は雇用調整助成金の申請をすることができます。
休業という選択は、従業員の生活だけでなく、企業の経営にとっても大きなダメージになりますよね。
休業後の対応を考えると、経営が苦しいからと言って解雇してしまうのは、企業や個人事業主にとって大きな損失になります。
これは人材面だけでなく、迅速な経営回復のためのサポートであることを知っておきましょう。