コロナ禍における取引先の与信管理

その他のリスク

新型コロナウイルスの感染拡大は、いまだに続いています。
何度もの緊急事態宣言の発令や外出自粛の呼びかけなどの影響もあり、企業は過去に例を見ないほど売り上げを落としているところも少なくありません。
そんな中、将来に向けて健全な取引を続けていくには、取引先の与信管理も必要となるのではないでしょうか?

コロナ禍が経済に与える影響

2008年に起こったリーマンショックは、世界経済に大きな影響を与えました。
NYダウは前週比末で、504ドル安になっていたのですが、日本も大きな影響を受けています。
日経平均株価も直前から下がり続け、翌年3月には半年前の半分以下にまでなったのです。

この下がり方は、2000年のITバブル崩壊時を超える下落率です。
そして、リーマンショック後は株価も回復を続けていたのですが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って再び30%以上も下落したのです。

それに伴って国内総生産、GDPも2020年4-6月期は大きく落ち込みました。
また、企業の売り上げも製造業・非製造業を問わず下落しており、特にサービス業は前値同期比で30%以上も落ち込んでいたのです。

経常利益ベースでみると、石油・石炭は前年同期比でマイナス340%以上、運輸・郵便はマイナス160%以上、鉄鋼はマイナス130%以上と大幅に下落しました。
サービスや卸売・小売もおよそマイナス50%の減益です。

企業規模で見ると、規模が小さくなるほど減益率は高くなっています。
資本金1億円未満の企業は、前年同期比で50%以上減益になったのです。
また、全体の借入金も増加しています。

しかし、今はそこからかなり回復しています。
また、日経平均株価も大幅に回復し、ワクチンの認可が下りたころは30年ぶりに3万円台になっています。

企業倒産の要因

企業の倒産の動向では、2019年9月から2020年4月までの間、企業倒産件数は8カ月連続で増加していました。
その後、5月は減少し、6月、7月は増加しています。
ただし、7月と8月は前年同期比では減少しているのです。

こうした現象の背景には、政府による過去最大規模となる予算措置による金融支援策が寄与したと思われます。
手形不渡り猶予の特別措置や雇用調整助成金、持続化給付金、無利子融資などが功を奏したのでしょう。

倒産した企業のうち、新型コロナウイルスの影響を受けとみなされたものを見ると、2021年上半期の全体倒産数3,044件の中では762件とされています。
2020年2月から2021年9月までの累計では、2,182件です。

20%以上が新型コロナウイルスに影響を受けて倒産しているので、かなり大きな影響を受けているといえるでしょう。
飲食店が最も多いのですが、カラオケ店やパチンコ店などのサービス業でもかなりの件数が倒産しています。

倒産した理由として考えられるのが、まず何度も発令されている緊急事態宣言や営業自粛による売り上げの減少があります。
自社活動が停滞して、業務が停止したというのもあるでしょう。

外出自粛も呼びかけられ、それに不安を感じた人が多かったため人の流れが変化、あるいは停滞したというのも要因でしょう。
また、一次・二次納品先やその取引先が営業を自粛、あるいは業績が悪化したため売り上げが減少した、というのも考えられます。

反対に、仕入先の営業自粛や工場の停止によって商品の流通が滞り、仕入れ難になったというケースも考えられます。
海外渡航も制限されたことで、原材料が手に入らず製造が滞った例もあるでしょう。

今後もこのような状況が続いた場合、企業は廃業を選ぶケースも増えてくるでしょう。
それを避けるために、リーマンショックの際に制定された「中小企業金融円滑化法」に基づいた円滑な資金供給、および貸し付け条件の変更などが求められるでしょう。

どのように取引先の与信管理をするべきか

取引先が倒産する可能性が低いとも言えない現在は、与信管理の必要性が高まります。
では、取引先の与信管理をどのような視点で行うべきでしょうか?
これまでも与信管理は必要性があったのですが、今後はさらに重視しなければならないのです。

これまで通り変わらない点としては、与信管理体制やルールを整備したうえで、取引先の定量情報として財務諸表、および数字には表れない定性情報を収集するべきです。
それをルールに則って審査・判断し、その結果に基づいて契約書を作成して条件交渉や保全手配を行いましょう。

また、取引を開始してからも定期的にモニタリングを行いましょう。
定量情報は、経年推移と変動を定期的にチェックする必要があります。
定性情報は、多角的に情報を収集して分析しましょう。

与信管理で重視するべき点は、債権回収を確実にすることです。
他社に先んじて債権を回収するには、なるべく事前に保全対策を行い、それに併せて取引先の危険信号をキャッチできるようにしておく必要があります。

危険信号は、定期的にモニタリングを行ったうえで定性情報をチェックしてキャッチしましょう。
環境が変化すると、重視するべきポイントも変わるので注意してください。

チェックするべき定性情報としては、まず経営者についてです。
企業の根幹をなすものなので重点的なチェックが必要ですが、特に高齢化や病気による入院などの情報と、後継者の有無についても確認しておきましょう。

金融機関との取引情報やメインバンクの支援体制などもチェックが必要です。
メインバンク以外で、何行と取引しているかも確認しましょう。
また、メインバンクを中心に取引のある銀行の経営状況も調べておいた方がいいでしょう。

倒産のトリガーになりうる、災害に対するレジリエンス力も確認しましょう。
考えうる災害リスクに対する意識や、具体的な対処方法などをチェックしましょう。
予防や回避の方法、あるいは保険等による資金面での備えなどが必要です。

サプライチェーンについても、チェックしましょう。
ヒトやモノの流れが分断されたときに備えて、取引の全体像を把握し、カントリーリスクなどにも備える必要があります。

また、企業として社会的責任を問われることもあります。
内部統制やコンプライアンス体制にも、目を配りましょう。
また、労務管理や環境への配慮が問われることもあります。

まとめ

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、倒産する企業も数多くあります。
それにただ巻き込まれてしまうと、巻き込まれて倒産する可能性も出てきます。
そうならないように、取引先企業の与信管理をしっかりとしておきましょう。
与信管理には、多くの情報をチェックしなくてはいけません。
より素早く、正確な情報を集め、分析できる体制を整えておきましょう。