お金の正体

真実の眼鏡

日本は、世界一借金が多い国といわれています。
ギリシャが財政危機に陥ったことで、日本はこのままだと財政破綻するという声も高まっているのですが、そんなことはあり得るのでしょうか?
実は、お金というものに対しては誤解をしている人も多いのです。
お金の正体とは、一体何なのでしょうか?

そもそもお金とは?

日常生活をする上で、買い物をする時の代金、あるいは労働の対価として支払われるのがお金です。
しかし、このお金というのは何なのでしょうか?

お金って何?と聞かれた場合、普通は硬貨やお札のこと、と答えるでしょう。
しかし、お金はその物質として存在しているのでしょうか?
実は、そういうわけではありません。

例えば、多くの人はまとまったお金を持った時、銀行などに預けるでしょう。
現金をそのまま持っていると、空き巣に盗まれる可能性や持ち歩いて落とす可能性があるからです。

そして、手元に持っている場合のお金は現金ですが、それを銀行に預けた時点で預金に変わります。
預金になると、その金額が通帳に記入されることになるでしょう。

では、銀行に預けられたお金はどうなるのでしょうか?
イメージでいえば、大きな扉が付いた金庫の中に保管され、そこに置かれた状態になっていると思っているかもしれません。

しかし、実はそのようなことはありません。
ある銀行の預金総額が100億円だったとして、その全額が金庫に保管されているわけではないのです。

そのため、もしとある銀行に預金をしている人が全員、同時に全額引き出そうとした場合、銀行ではそれに対して支払うことができるお金はないのです。
窓口でも、申し訳ございませんと謝られることになるでしょう。

銀行に普段置かれているお金は、預金総額のごく一部です。
とはいえ、何十万、何百万程度なら対応できるのですが、決して全額は置かれていません。

銀行が預かったお金を保管しているだけでは、単なる塩漬けです。
そのため、実際に置かれている現金はほんの一部しかないのです。

実は、預金=現金ではない

実際のところ、日本にはほとんど現金がありません。
現在、日本では預金総額が1000兆円以上、家計の金融資産としては2000兆円近くあるとされているのですが、そのすべてに対応できる現金はないのです。

通帳に500万円と書かれていると、500万円の現金を持っているのと同じ、と思えるでしょう。
実際には通帳に「¥5,000,000」と書かれているだけであり、=現金とはならないのです。

皆さんは、現金での支払いをどのくらいの頻度で行っていますか?
中には、給料をもらったら全額引き出し、それを現金で持って支払いはすべて現金、という人もいるでしょう。
しかし、そういった人はごくわずかです。

今は、多くの人がクレジットカードや電子マネー、あるいは先にまとまった金額を預けるプリペイドカードなどを利用して支払いをしているでしょう。
そういった人は、現実にお金を使うことがあまりないのです。

例えば、冬のコートを買ってクレジットカードで52,000円支払ったとします。
そうすると、後日銀行口座から52,000円が引き落とされて、銀行口座の預金残高がその分減ります。

ところが、この支払いでは本人も、コートを売った店側もお金には全く触っていません。
最近では電子マネーを使えるお店が増えたことで、現金をほとんど持たない人も増えてきました。
特に、都会に住んでいるとほとんどクレジットカードとスマホがあれば支払いができるでしょう。

現金の需要が減っているため、貯金総額に対して現金を全額用意する必要がなくなります。
貯金総額が1000兆円以上なのに対して、現金はその10分の1程度しかないと言われているのです。

要するに、貯金として銀行に預けているはずのお金のおよそ90%は、単なる数字に過ぎないのです。
これは日本だけではなく、キャッシュレス化が進んでいる国などでも見られる傾向です。

30~40年前は、電子マネーなどは影も形もなく、クレジットカードも滅多に使われませんでした。
対応している店舗も、珍しかったでしょう。

その頃は、給料といえば手渡しが主で、給料袋を持った父親が母親にそれを渡し、母親が必要な分を取って残りは銀行に預けていました。
電気料金や水道料金なども、銀行引き落としではなく銀行振り込みや窓口での支払いが多かったでしょう。

しかし、今はまず給料がほとんどの場合銀行振り込みです。
そのため、働く際は必ず銀行口座がなければいけない、という決まりがある会社も多いでしょう。

そして、公共料金などの支払いはクレジットカードか、銀行引き落としが多いでしょう。
むしろ、銀行やコンビニからの振込払いだと、手数料を取られてしまうこともあるほどです。

そして、クレジットカードや電子マネーの支払い分は、銀行預金から引き落とされることがほとんどです。
その過程で、現金に触れることは滅多にありません。

ですから、現在のお金は2種類に分けて考えられています。
実物として手に持つことができる「現金」と、銀行に預けて数字によって示されている「預金」です。
一般的には、現金通貨と預金通貨と呼ばれています。

そのため、今財布の中に5万円持っていて、銀行には120万円預けているというのであれば、現金通貨で5万円、貯金通貨で120万円もっている、ということになるのです。
そうなると、現金を引き出す時は預金通貨を現金通貨に両替することで、現金を預金として預ける際は現金通貨を預金通貨に両替する、ともいえるでしょう。

お金は確かなものと思えるかもしれませんが、実際には意外と不確かなものなのです。
銀行が貸し付けるローンなども、ほとんどは現金で見ることもなく預金通貨になっているでしょう。

まとめ

お金というのは、本来現金の事です。
しかし、銀行に預けることで預金となり、現金とは別のものとなります。
現金は現実にあるものですが、預金は現実にあるとは限りません。
現在は電子マネーやクレジットカードなどのキャッシュレス決済を利用することが増えていますが、その中で現金と預金の違いを知っておきましょう。