自家消費型太陽光発電での企業のBCP(事業継続計画)を考える

事故・災害リスク

近年、太陽光発電を導入する企業の目的が、投資用から自家消費へと変化しつつあります。
その背景には、売電価格の低下もありますが、同時に環境への配慮も注目されたことが理由です。
しかし、自家消費型太陽光発電はそれだけではなく、企業のBCP(事業継続計画)にも効果的です。
具体的な内容について解説します。

BCPとは?

日本では、多くの災害が起こります。
地震は頻繁に起こり、台風も毎年多くの被害を出しています。
そして、まれにですが火山の噴火も起こることがあります。

災害として、東日本大震災が起こったことはそう昔のことではありません。
地震や津波によって多くの被害が生じ、かなり広い範囲に影響しました。
そして、それ以降は企業が取り組むBCP対策に変化がみられるようになりました。

BCPは、「Business Continuity Plan」の略称です。
日本語に訳した場合は、「事業継続計画」です。
事業を継続するための対応について、対策しておくというものです。

これは、災害などが起こって通常の業務に支障が出て継続できなくなる可能性を下げるために、その損害を最小限に抑えるとともに、事業を早急に復旧して継続するにはどうしたらいいのか、その対応についてあらかじめ計画しておいて対策を練っておくものです。

BCPは、特に法律で義務と定められているものではありません。
しかし、災害をはじめとした緊急事態はどのタイミングで発生するかわからないので、そういった場合に備えて常に準備しておくことが望ましい、と中小企業庁で運用指針を出しています。

その中で、重要な課題の一つに電力確保があります。
地震や台風、豪雨などによって電力供給が広い範囲でストップしたことは何度もあり、中には完全復旧までに1週間以上かかるなど、長期間にわたってその状態が続いていたケースも少なくありません。

現在、企業で電力供給が止まった場合はどうなるでしょうか?
まず、日常業務で使用するパソコンは全く使用できず、ハードウェア障害などが起こる可能性もありシステム自体も稼働停止となります。
また、システムダウンによってデータが消失することもあるでしょう。

電話やファックスなども使用できなくなり、携帯電話もいずれ電源が切れて使えなくなるでしょう。
オフィスの冷暖房・空調機器も動かなくなり、セキュリティシステムも動作不能となってしまいます。

取り扱っている商品によっては、停電によって商品を廃棄せざるを得なくなることもあります。
こういった事態が起こったときは業務を停止せざるを得なくなり、損失によっては事業の存続危機にもつながるでしょう。

現在の業務は、あらゆるものが電気を使うことで成り立っています。
停電が長期間続いてしまうと、その分経済的損失も増えていくことになるでしょう。
得られたはずの利益も、逸失してしまうことになるのです。

停電対策の重要性

過去に起こった地震や台風、豪雨による被害は、かなり大きなものがあります。
停電していた時間も、長ければ3週間続いたことがあります。
その期間、事業を継続させることはできるでしょうか?

東日本大震災以降の、主な地震や台風、豪雨による停電期間や被害総額を表で示します。

災害名 発生日 停電期間 被害総額
東日本大震災 2011年3月11日 約1週間 約16兆9000億円
熊本地震 2016年4月14日 約1週間 最大4.6兆円
鳥取地震 2016年10月21日 1日 約1億6000万円
大阪北部地震 2018年6月18日 3時間 約1800億円
西日本豪雨 2018年6月28日 約1週間 約1兆2150億円
北海道胆振東部地震 2018年9月6日 約1週間 約1620億円
令和元年8月の前線に伴う大雨 2019年8月27日 約15時間 約213.5億円
令和元年台風第15号 2019年9月5日 約3週間 約505億円
令和元年台風第19号 2019年10月6日 約2週間 約3961億円
令和2年7月豪雨 2020年7月3日 5日 約1900億円
2021年福島沖地震 2021年2月13日 6時間 不明

地震や台風などで大規模なものが発生した場合、電力供給が再開されるまでには1~2週間程度を見込んでおいたほうがいいでしょう。
その間、事業を継続するには対策をしておく必要があるのです。

停電対策として一般的なものはいくつかあります。
例えば、UPS(無停電電源装置)によって、内蔵バッテリーの電気を使用する方法です。
しかし、これは30分から1時間ほどしか連続使用ができないため、発電機と併用する必要があるでしょう。

発電機は燃料さえあれば動き続け、発電量も大きく防災装置の稼働にも使うことができます。
しかし、燃料が切れてしまうと動かないのと、音がかなりうるさく排気ガスが出るという点がデメリットです。

おすすめなのは、自家消費型の太陽光発電設備を設置することです。
デメリットとして初期費用がかかるという点はあるものの、太陽光だけでどこでも発電できるというのは大きなメリットです。

UPSはもちろん、発電機も燃料に限りがある以上使うことができる期間は限られてしまいます。
しかし、太陽光発電はそのような限度がありません。

蓄電池を併用することで、日中だけではなく夜間でも電力を使用できます。
また、貯めておくことで天候に左右されることなく電力を使用できるでしょう。
普段からも、自家消費で電力会社の電気使用量を削減して電気代の節約ができます。

太陽光発電設備、および蓄電池を導入する際は、国からの補助金を受けられることがあります。
また、税制優遇なども受けられるため、導入にはコストがかかるもののある程度は軽減できるのです。

自家消費型太陽光発電を導入した場合、ピークカットへの貢献も可能です。
ピークカットは、1日の中で最も電力を多く使用する時間帯に発電した電気を使うことで、最大電気使用量を引き下げて電力会社の料金を引き下げることです。

太陽光発電設備はおおよそ30年使用できるといわれているのですが、導入コストは10年ほどで回収できます。
BCP対策だけではなく、固定費の削減にも効果的です。

まとめ

自家消費型太陽光発電は、企業のBCP対策としても効果的な設備です。
毎年のように起こる災害で電力供給が停止している中で、電力を自社で得ることができて事業も継続でき、データの保全やセキュリティ設備の稼働なども問題ありません。
特に停電が長期間になると、発電設備がない企業はかなり厳しいものとなるでしょう。
平時のコストカットと、いざというときの備えとして、導入を検討してみてはいかがでしょうか。