多様な人が安心して働くことができる職場環境を作るには

経営戦略

現代社会には、多種多様な人がいます。
その中には、性的マイノリティなど一定数の人が拒否反応を示す人もいます。
そういった人が、落ち度もなく拒絶されることがあるのですが、能力が秀でていた場合は人材の無駄となってしまうでしょう。
そういった人でも、安心して働けるような職場を作るには、どうしたらいいでしょうか?

なぜ、拒絶されるのか

世の中には、意見が統一されないことが多数あります。
そして、その多くはマジョリティ(多数派)とマイノリティ(少数派)に分かれます。
また、力を持つものと持たないものに分けられることもあります。

例えば、政治では与党と野党に分けられます。
この場合は、与党がマジョリティ、野党がマイノリティです。
小さなことでは、目玉焼きに何をかけるかということでも分かれているでしょう。

時には与党と野党が入れ替わるように、そういった分別は変化することもあります。
しかし、常に少数派というものも中にはあるのです。
その例となるのが、性的マイノリティです。

性的マイノリティは、性的指向が一般的なものと異なる、とされているものです。
ほとんどの人は、男性なら女性を好きになり、女性なら男性を好きになるでしょう。
性的マイノリティは、それに当てはまらない性的指向を持つ人のことを言います。

LGBTという言葉がありますが、これは女性が女性を好きになるレズビアン、男性が男性を好きになるゲイ、男性と女性の両方を好きになるバイセクシュアル、そして出生時の戸籍上の性や生物学的・身体的な性と性自認が一致しないトランスジェンダーの頭文字を取ったものです。
また、性的指向や性自認は略称で、SOGIといいます。

近年は、トランスジェンダーの様に自身の性別について違和感を持つ人のことを性同一性障害といい、一定の条件を満たした場合は性別の取り扱いについて変更の審判を受けられることが法で定められています。

本来、性的指向はそれぞれの自由であり、人がどうこう言うものではありません。
また、性的マイノリティの方がそれを周囲にカミングアウトするかどうかも自由です。
カミングアウトされた場合は、落ち着いて受け止めてあげましょう。

カミングアウトされた内容を本人の同意を得ずに第三者に伝えることはアウティングといわれ、たとえ善意で伝えたとしても望ましくないものとされています。
企業の中には、アウティングを防止する取り組みをしているところもあります。

そして、性的マイノリティであることを知られた場合、中にはそれを拒絶する集団もあるでしょう。
これは、何故なのでしょうか?

簡単に言うと、理解ができないからです。
異性を好きになるのが当たり前の人にとって,同性を好きになるというのは想像が難しいのです。
わからないものを拒絶しようとするのは、人間にとって当たり前のことでもあります。

同じ理由で、外国人が職場に入ってきた時に拒否反応を示す人もいます。
国内に限っても、地元以外の人に対する拒否や部落差別なども根強く残っているでしょう。

しかし、それでは多様な人が安心して働くことができる職場環境を作ることができません。
拒絶をなくするには、どうするべきでしょうか?

必要な取り組みについて

多様な人が働ける職場環境を作るためには、まず門戸を狭めないことが重要です。
採用選考では、本人の適性や能力のみを基準として公正に行い、特定の人を最初から排除しようとしないことが大切です。

また、常時10人以上の従業員を使用する企業は、就業規則を作成して届出なくてはいけないと労働基準法で定められています。
それについて厚生労働省が示している参考のモデル就業規則では、性自認や性的指向を含むあらゆるハラスメントを禁止すると書かれています。

いじめや嫌がらせ、解雇などの労働問題については、都道府県労働局や労働基準監督署などに総合労働相談センターが設置されているため、そこに相談できます。
ここで、性的指向や性自認に関して起こった労働問題も相談できるのです。

都道府県労働局長からの助言・指導や紛争調整委員会によってあっせんを受けるなど、紛争解決援助制度もあるため、不当な扱いを受けた場合はその解決を目指すことも可能です。

政府でも、度々性的マイノリティに関する方針を出しています。
平成27年の第4次男女共同参画基本計画では、性的指向や性同一性障害を理由として困難な状態に置かれている場合は、人権尊重の観点から人権教育や啓発等を勧めるとされています。

また、平成29年の自殺総合対策大綱でも、性的マイノリティが自殺念慮の割合率が高いことが指摘されていることから、その背景となっている社会的要因として無理解や偏見があることを上げ、理解促進への取り組みを推進するとしています。
また、それと合わせて性的マイノリティへの支援の充実も掲げています。

令和元年の法務所人権啓発冊子でも、性的指向、性自認について取り上げています。
そして、それらを理由とする差別や偏見を解消して、相談を受け付け啓発活動や調査救済活動に取り組んでいると記載されています。

多様な人が安心して働けるよう取り組んでいる企業の例として、経営者間の交流から知り合った性的マイノリティの方に社内研修を行ってもらい、就業規則にも性的マイノリティについて記載しました。

そして、社内の人間関係作りや相互理解に注力しています。
言葉では簡単ですが、実際に理解し合うのは難しいということが分かり、当事者に嫌いという感情を持つのは仕方がないにせよ、その存在を無視するようなことは許さないという姿勢で取り組んでいます。

その他にも、多くの職場で性的マイノリティの存在を認め、それも含めて個人を尊重しようという考えをするようになっています。
まずは、偏見をなくすることから始めましょう。

まとめ

人の価値観や思考は様々で、中には少数派に属する人もいます。
多くの人材を育てていくには、そういったマイノリティの人も含めた多様な人材が気持ちよく働けるような職場環境が必要となるでしょう。
性的マイノリティをはじめ、他の人とは違う点があり嫌がらせや迫害を受ける人は少なくありません。
そのようなことがない、誰にとっても望ましい職場環境を整えましょう。