経営において、売上を上げるためには目標やノルマが必須だと思っている人は多いでしょう。
しかし、目標やノルマがないストレスレス経営という考え方もあるのです。
実際にこのやり方で、売上を増やしお客様の満足度も高めた実例があります。
その結果、どのようになったのかを解説します。
これまでのあたりまえ
営業といえば、どのようなイメージを抱いているでしょうか?
個人ノルマがあり、全体目標があり、それを絶対達成するということを命じられていて、達成するために日々つらい思いをしている、というイメージを持っている人もいるのではないでしょうか?
また、営業成績に応じてインセンティブが発生するということもよくあります。
しかし、そのためには一定以上の売り上げが必要です。
となると、その一定の売り上げがノルマと同じことになるのです。
なぜノルマがあるのか、目標があるのかといえば、明確に目指すものがないと働くうえでのモチベーションが上がらないと考えられているからです。
ゴールがないのでは、どう働いていいのかわからないという人も確かにいるでしょう。
野球部の話に例えて、目標やノルマがないのは監督にグラウンドを走るように言われたもののどんなペースで何周走るか、いつまで走るのかなどを一切指示されないようなもの、という考え方があります。
確かに、明確な指示がないまま走り続けるというのは大変で、モチベーションも上がらないでしょう。
一事が万事その調子だと、選手は何を努力するべきかがわからないため、選手として伸びていかないかもしれません。
同様に、企画書やホームページを作成する場合もその期限や方針、修正箇所などを支持しないまま、ただ作り直せと言われ続けてしまえば、モチベーションも上がらないでしょう。
そういったことがないように、ノルマや目標は必要なものと考えられてきたのです。
ストレスレス経営
ノルマや目標を定めていると、従業員は何を目指して頑張ればいいのかが明確になります。
また、経営者側としても従業員の評価がしやすいでしょう。
しかし、順調に達成している間はいいのですが、達成できなくなった場合は大きなストレスとなるでしょう。
特に、ノルマや目標未達成の場合にペナルティがある会社の場合、従業員は未達成にかなりのストレスを感じると思います。
しかし、それは従業員だけではなく、経営者側も同様です。
全体ノルマや全体目標が達成されないということは、想定していた経営状況を達成できないということです。
その状態が続くと、経営において大きなストレスを抱えることとなるでしょう。
果たして、営業にノルマや目標は必須なのでしょうか?
実際に、営業からそれらを排除して経営をしている企業はあります。
かっぱ橋にある、飯田屋という老舗の料理道具専門店がどのような経営をしているのか、解説します。
まず、飯田屋の営業にはノルマも目標もありません。
また、営業といえばよくある飛び込み営業もありません。
むしろ、社員には「売るな」と言っているのです。
それはなぜかというと、お客様の満足度を高めるためです。
そうすることで、結果的に売り上げも上がっていくのです。
お客様を心から大切にしたいのであれば、まずは数字の呪縛から逃れる必要があると考えたため、このような方針となったのです。
単に売上を気にするなと伝えるだけでは、数字に縛られている状態を抜け出すことはできなかったのです。
そのため、すべての数字の管理を一切廃止して、売上達成ではなく笑顔での売上向上を目指していくことにしたのです。
従業員が売上ではなく、目の前にいるお客様を笑顔にすることを大切に思って販売することができれば、数字を管理する必要もなく売り上げは上がるのです。
そして、店のことよりもお客様の満足のほうを優先して考えるようなお店があれば、お客様もそのお店のファンになってくれるのではないでしょうか。
ノルマがある状態では、お客様を直接見るのではなくその後ろの数字を見るようになってしまいます。
そうなると、安いお客様にはおざなりになり高いお客様ばかり丁重に扱うなどの営業をして、お客様に満足してもらえることが少なくなるでしょう。
そうならないように撤廃したのですが、そうなると怖いのが経営が成り立つのか、という ことです。
経営を成り立たせるためには売り上げが必要なので、伸び悩むことがあれば不安になるでしょう。
しかし、飯田屋ではその状態で踏みとどまり、お客様のニーズを探してそれに合わせた販売をすることを重視していきました。
その結果、信頼してくれるリピート客が増えていったのです。
新規顧客も大切ですが、やはり経営を支えてくれるのは何度も訪れてくれるリピート客です。
そういった人が増えてくると、経営も安定して売上も上がっていくでしょう。
売ることが目的ではなく、目の前のお客様が何を求めているのかを理解し、そのニーズに合わせた道具との出会いを手伝うことが大切と考えているのです。
そのため、売るのではなくお客様に買いたいと思ってもらうようにしています。
こういったやり方をしていると、親切に「ノルマがないと従業員がサボるよ?」と忠告してくれる人も出てきます。
しかし、実際にはノルマの達成が無理だと諦めてしまった人のほうがサボりやすいのです。
そして、飯田屋では会社を経営する上での経営目標もありません。
それを決めてしまうと、従業員を数字で判断してしまう可能性があるからです。
やるからには徹底しようと、経営目標も撤廃しているのです。
飛び込み営業による外売りをするには、圧倒的な安さが必要です。
しかし、それは商品の品質よりも価格だけを気にするものです。
それは満足度につながらないため、飯田屋では外売りを一切行いません。
そして、店舗に来てもらうことでしか味わえない体験をお客様に提供しているのです。
こういった方針によって、飯田屋ではお客様の満足度を高め、売上も上げています。
そして、経営においてもストレスを感じることがない、ストレスレス経営を実現しているのです。
まとめ
営業職は敬遠されることが多いのですが、それはノルマや目標などがあるというのが大きな理由です。
そして、数字だけを見ていると経営者もストレスを感じることが多くなります。
そういった数字を撤廃し、ノルマや目標を定めないことでストレスレス経営が実現できるかもしれません。
そのためには、売上を優先せずにお客様の満足度を優先するなど、考え方から変えていく必要があるでしょう。