2023年からインボイス制度が始まることで、消費税免税事業者の中にはすぐに登録しなければいけないのか、と不安になっている人もいるでしょう。
しかし、実際には急いで登録する必要がないかもしれません。
それは、どのような理由があるのでしょうか?
その理由について、解説します。
インボイス登録をまだしない方がいい人は?
インボイス制度というのは、インボイス(適格請求書)以外では消費税の仕入税額控除を認めないというものです。
控除を受けるためには、適格請求書発行事業者として登録しなくてはならないのです。
インボイス制度で大きな影響があるのは、現在消費税の免税事業者となっている事業者です。
免税事業者というのは、2年前の課税売上が1000万円以下の事業者です。
毎年1000万円を超えていなければ、消費税がずっと免税になるのです。
これには、法人なのか個人事業主なのかは関係ありません。
例え法人として会社を設立していても、課税売上が1000万円以下であれば消費税は免税になっているのです。
それ以外の消費税課税事業者にとっては、インボイス制度は登録をして請求書の書式が変わるというだけです。
3月中にインボイス登録を済ませておかなければ、制度が開始する2023年10月には間に合わないかもしれないので、速やかに手続きをしましょう。
しかし、免税事業者の場合、登録するには課税事業者にならなくてはいけないのです。
そうなると、これまでは免税となっていた消費税も、しっかりと納付しなくてはいけなくなります。
つまり、増税になるのです。
それでも、登録しなければ今度は取引先が仕入税額控除を受けられなくなってしまうため、登録していないと登録している他の事業者に取引を変更されてしまう可能性があります。
だから、早く登録しなければと焦る人がいるのです。
それでも、まだ登録する必要はないかもしれません。
それは何故かというと、日本税理士会連合会の提案があったからです。
それは、「インボイス制度の円滑な導入・実施について」というものです。
それによると、免税事業者が市場から排除されないように経過措置の80%控除を当面の間維持することと、3万円未満の少額取引については領収書等が不要という点を維持することの2つが提案として出されています。
本来、納めるべき消費税額は領収書や請求書によって証明するのですが、3万円未満の少額取引については領収書がなくても帳簿に記載していればその控除を認めるという決まりがあるのです。
インボイス制度が始まると、領収書がない取引は控除が一切認められなくなります。
しかし、3万円未満であれば領収書が不要という点を維持することができれば、少額取引が主な免税事業者はインボイス制度に登録しなくてもしばらくは続けられる可能性が高くなるでしょう。
そしてもっと重要なのが、80%控除の経過措置についてです。
80%控除をキープできるか
インボイス制度に登録して適格請求書発行事業者になった場合、請求書には相手の会社名と自社の会社名、品名や日付等に加えて、適格請求書登録番号、消費税8%分と10%分それぞれの合計額、そして全体の消費税と記載しなくてはいけません。
インボイス制度というのは、簡単に言えば消費税に関するルール変更です。
2023年10月1日から開始する制度で、番号の取得は3月31日までに行わなければいけません。
仕入先や外注先がインボイス制度で登録していた場合、売上が1100万円で消費税が100万円、仕入の額が550万円で消費税が50万円とすると、納付する消費税は100万円から支払った消費税の50万円が控除され、50万円となります。
しかし、仕入先・外注先がインボイス制度に登録していない場合は、受け取った消費税100万円から支払った消費税50万円が控除されなくなるのです。
そのため、100万円を全額納付する必要があり、支払った50万円分を自分が負担することになるのです。
仕入税額を控除するためには、帳簿の記載に加えて請求申請書等を的確に保存する必要もあります。
これは、今まで不要だった3万円未満の場合も必要になります。
それについて、経過措置として取引先が免税事業者であっても一部控除が可能となっています。
その期間は6年間なのですが、前半の3年と後半の3年では対応が異なります。
2023年10月1日から2026年9月30日までは、取引先が免税事業者の場合80%を控除することとなっています。
2026年10月1日から2029年9月30日までの間は、控除率が50%になります。
それに対して、日本税理士会連合会では次のような提案をしました。
取引先が免税事業者の場合、2023年10月1日から、当面の間80%控除可能とするというものです。
これは、もちろん元々の予定よりも長い期間にするためのものなので、3年ではなくそれ以上の期間という意味です。
そうなると、どのようなメリットがあるのでしょうか?
インボイスがなくても80%は控除されるということになれば、事業者としては消費税の20%だけ、本体価格の2%だけを負担すればいいだけになるのです。
それなら、得意先もインボイスがなくてもまあいいか、と考えて、今まで通り免税事業者でいられるかもしれません。
日本税理士会連合会の提案では、このようになっています。
これについてはまだ未確定の情報ではあるのですが、もし認められた場合は先にインボイス登録をしていては損をすることになるかもしれません。
インボイスの登録をしても、後から取り消すことはできます。
しかし、わざわざ書類等を揃えて登録したのに、すぐ取り消すのでは無駄になるでしょう。
それよりも、最初から慌てて登録しないようにするのがおすすめです。
また、取引先によってはインボイス登録をする必要がないと考えているところもあります。
まずは取引先と相談して、登録の必要性について考えてみましょう。
まとめ
現在、インボイス制度開始への準備が着々整えられていて、登録しなければ仕事を失うことになるかも、といった流れになりつつあります。
しかし、免税事業者にとって消費税を納付することになるというのは簡単なことではありません。
経過措置についての変更を提案されている現在、その結論が出るまでは待っていてもいいのではないでしょうか。