新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、経営が悪化する企業が増えています。
そういった企業にとって頼りになるのが、助成金・補助金などです。
しかし、中には受給する資格がないのに不正を働いて受給をしようと考える企業もあるかもしれません。
不正受給には、どのようなリスクがあるのかを解説します。
不正受給とみなされるのは?
助成金・補助金は要件を守って申請し、それが認められれば受給することができます。
では、不正受給とみなされるのはどのようなケースなのでしょうか?
該当するケースについて、解説します。
不正受給は、本来であれば受け取る資格がないのに不正な手段を用いて申請することを言います。
その多くは、要件を満たしていないのに満たしているかのように偽装しています。
例えば、申請の際に提出する出勤簿や賃金台帳などの書類を改ざんして提出していたり、雇用実態を偽って申請していたりすると、該当します。
休業も実際より多いものとして申請したり、教育訓練も行っていないのに行ったものとして申請したりすると不正受給になってしまいます。
また、補助金の場合は発注日を改ざんするというケースが見受けられます。
対象となる期間以外の発注についても、日付を改ざんして対象期間内のように見せかけるのです。
実際にかかった費用より、高額な金額を請求するという不正もあります。
取引先と協力して、実際の価格よりも高い領収書を切ってもらうことで補助金の額を増やそうとするものです。
これは明らかな詐欺なので、協力者も罪に問われる可能性があります。
こういった不正受給がないかは、いくつかの方法で調査されます。
労働局によって抜き打ちの検査が行われたり、会計監査院が書類を調査したり、あるいは企業に勤める従業員から情報の提供を受けたりして、調査をしています。
助成金・補助金受給の際に調査が行われるのですが、もしその調査を潜り抜けて不正とバレずに受給することができたとしても、その後に再び調査が行われて発覚するケースもあります。
助成金や補助金は様々な目的に合わせて用意されているのですが、その中で近年特に多く活用されているのが、「キャリアアップ助成金 正社員化コース」です。
これは、有期・無期契約労働者を正社員として雇用した際に受給できる助成金です。
こういった助成金・補助金の申請は、かなり大変です。
申請書類の手続きが煩雑で、必要とされる書類もかなりの数があります。
多くの種類があるので、自社が申し込むことができるのはどれなのかわからないかもしれません。
きちんと条件に沿って申請しなければ、助成金や補助金を受給できなくなる可能性があります。
また、間違いを故意だと思われてしまうと、不正受給かと疑われるかもしれません。
不正受給のリスク
助成金・補助金の不正受給には、どのようなリスクがあるのでしょうか?
これについては、補助金適正化法に基づいた罰則があります。
具体的な罰則の内容について、解説します。
ペナルティは、2019年4月から厳罰化されています。
助成金・補助金を不正に受給した場合は、その全額を返還しなくてはいけないのが当然のことですが、それに加えて違約金も発生するようになったのです。
違約金は、受け取った金額の20%です。
つまり、受給額の120%を支払う必要があるのです。
それに加え、返済が遅れると年に5%相当の延滞金を支払わなくてはいけません。
行った企業には不支給期間があり、厳罰化の前は3年間でした。
しかし、厳罰化となってからはその期間が5年に延長されています。
また、対象者も拡大されています。
以前は、対象者となるのはあくまでも不正を働いた企業に限られていました。
しかし、厳罰化されてからはそれに関係した役員等が役員になっている他の企業についても対象となります。
それに加えて、社会保険労務士等も関与が認められた場合、5年間は申請に関わることができなくなりました。
社会保険労務士等に対しても、厳罰化されているのです。
また、都道府県労働局には以下の内容が公表されます。
・事業所の名称、所在地、概要
・事業主の名称、代表者の氏名
・内容と金額
・関与した社会保険労務士や代理人、教育訓練の担当の名称や所在地等
経済産業省のホームページにも、補助金交付等停止措置企業として事業者の名前等が掲載されてしまいます。
事業者名で検索すると不正行為を行ったことがわかってしまうため、社会的信用も大きく落ちてしまうでしょう。
受給した助成金・補助金は、申請した企業に返還する責任があります。
しかし、厳罰化に伴って企業以外にも、それに携わった社会保険労務士や職業訓練担当、申請の代理人なども連帯債務者となって、返還請求されるようになりました。
助成金や補助金の申請に伴う審査は、近年特に厳しくなっています。
直接関係しない部分も労働局やハローワークに調査されるケースもあり、後から追加で調査されることもあるため、労務管理や帳簿の運用は正しく行わなくてはいけません。
申請する際は、雇用保険加入の事業主であること、社会保険・労働保険に加入していること、最低賃金未満の賃金ではないこと、時間外労働が発生している場合は手当が支払われていること、休業手当の支払いが矛盾することなく行われていること、出勤簿や賃金台帳などの関係書類が揃っていることなどを事前に確認しておきましょう。
助成金や補助金の申請は専門家に依頼したほうが確実ではありますが、一部の経営コンサルタントはより多くの助成金を受給することができるといった甘言や、不正受給を持ちかける等トラブルにつながる提案をすることがあります。
こういった内容に応じると、発覚したときに企業として少なくないダメージを受けてしまうことになるでしょう。
中には、そこから逮捕され倒産した企業もあるので、決して乗らないように気を付けましょう。
まとめ
助成金や補助金は、企業を経営する上で大きな助けとなるものです。
しかし、それを不正に受給しようとした場合は、申請した時点で罰則が生じることになります。
不正受給は、企業の信用を大きく損なうものであり、受け取った金額を2割増しで返還することになるため、非常に高いリスクがあるのです。
悪質な経営コンサルタントに勧められても、決して応じないように気を付けてください。