アメリカを中心として、欧米ではコロナ後にGreat Resijnation(大量離職)とQuiet Quitting(静かな退職)が社会現象として大きな問題となっています。
この2つは、具体的にどのような問題となっているのでしょうか?
また、今後日本で問題が起こった場合は、どのように対処するべきでしょうか?
2つの社会現象について、解説します。
Great Resijnation(大量離職)とQuiet Quitting(静かな退職)とは?
新型コロナウイルスの感染拡大も落ち着きを見せ、日本でも感染症としてのグレードが下がり、生活にも再び変化が見えるようになりました。
そんな中、アメリカを中心とする欧米では新たな社会問題が起こっています。
欧米で起こっているのは、Great Resijnation(大量離職)とQuiet Quitting(静かな退職)です。
いったい、何が起こっているのでしょうか?
Great Resijnationは、2021年以降続く離職者の多さのことを言います。
2021年7月から毎月420万人以上、2021年の年間では4700万人という過去最多となる離職者が生じているのです。
また、Quiet Quittingというのは、会社を辞めはしないものの提示までに仕事を終わらせて、それ以上の仕事には取り組まない人を言います。
この2つは、なぜ起こっているのでしょうか?
まず、コロナ禍を過ごしたことで人々の生活における仕事の位置づけがこれまでと変化し
多様化・複雑化していることが理由として挙げられます。
それによって、今までとは仕事に対しての意識が変わってきたのです。
また、コロナ禍ではテレワークなど在宅勤務を取り入れる企業が増えたのですが、それを経験したことで出勤しなくても仕事ができるという意識が芽生えました。
それによって、職場や仕事に対しての帰属意識がこれまでより低下しています。
また、Great Resijnationでは金銭的・非金銭的に優良な仕事を得るチャンスがある場合は、転職によって迅速に報酬やキャリアを上げることを志向するのが原因の1つと言えます。
Quiet Quittingの場合は、経済状況の反転によって優良な仕事を得る機会がない場合は現職のまま続けるのですが、任された仕事以上には取り組まずに拘束時間を圧縮することで、残った時間を仕事以外に活用しているのです。
欧米のグローバル企業では、コロナ後に社員エンゲージメントを高めた会社もありますが、下げた会社もあります。
全体で、おおよそ半数ずつになっているのです。
しかし、欧米諸国でこのような問題が起こっているのは、欧米の企業は雇用の流動性を前提にしているというのも理由の1つと言えるでしょう。
日本企業とは、その点が異なります。
日本の求人・労働者市場は欧米と比べて流動性が低くなっています。
会社間の人材の流動性が低いため、日本では世代を問わずに転職するような大量離職は起こりづらいと考えられます。
また、日本では個人のキャリア設計の意識が、人事異動という会社の都合に依存しています。
独自にキャリア設計を考えるのは、ごく一部に限られているのです。
しかし、欧米諸国と共通する点もあります。
新型コロナウイルスの影響で、日本でも就業意識に変化が訪れているのです。
特に、在宅勤務については今後も継続を望む人が多いでしょう。
在宅勤務と出社しての勤務との両方を備えた、リモート・ハイブリッドワークも浸透しています。
それによって、会社への帰属意識が薄れていく可能性もあるでしょう。
また、現在の社会構造はベビーブーム世代からX世代、Y世代、Z世代と様々な世代の人が混ざり合って活躍していて、価値観が入り混じっています。
このような社会構造によって、会社全体の一体感が生まれにくくなっているのです。
日本ではかつて、終身雇用が当たり前だったのですが、それに伴って社員エンゲージメント水準は世界一低いと言われています。
そのせいで、内部では静かな退職が常態化している可能性も十分に考えられるでしょう。
2つの社会問題への対策は?
Great ResijnationとQuiet Quittingが進行していることで、アメリカでは非農業部門の労働者の生産性がかつて例をみないほど落ち込んでいます。
日本でも、同様の事態となりかねないでしょう。
離職や静かな退職を防ぐために必要なのは、社員エンゲージメントの向上です。
従業員が自発的に「会社に貢献したい」と思えるようになれば、大量離職も静かな退職も起こらなくなるのです。
そのためには、まず従業員が企業の理念について理解し、共感している必要があります。
企業がわかりやすく方向性などを示し、それに賛同してもらう必要があるのです。
そのためには、キックオフミーティングや社内報で周知していきましょう。
また、納得の良く評価を得られない職場には貢献しようと思ってもらえないので、人事制度も公平性が高いものにしていかなくてはいけません。
評価への納得度を上げて、従業員の仕事への積極性や意欲を高めていきましょう。
従業員が個人として尊重していると感じる環境では、それに応えようとして自社へと貢献する意識が高まります。
そのため、上司は部下の意見をなるべく承認し、信頼していと示すことが重要です。
車内でのコミュニケーションを活発にして、従業員同士の関係性を深めることも必要です。
ランチミーティングや、感謝の言葉を紙に書いて送りあう「サンクスカード」などの取り組みが、コミュニケーションを活発にしていくでしょう。
従業員が正当な評価を受けていると感じるためには、上司のフィードバック能力も高める必要があります。
上司のマネジメント手法を改善すると、チーム全体の意欲向上にもつながります。
長時間の残業が常態化していたり、休みが不十分だったりすると従業員の貢献しようという意欲も減少してしまうため、職場環境を見直して従業員のワーク・ライフ・バランスを整えることも大切です。
従業員が自ら成長したと感じられる職場のほうが、貢献しようという意欲も高まります。
そのために必要なのが、従業員の成長を支援するためのキャリア開発の施策を取り入れるのが効果的です。
まとめ
現在、Great ResijnationやQuiet Quittingが社会問題になっているのは欧米諸国ですが、日本でも将来的に同じ問題が起こらないとは限りません。
これらの問題が起こる原因を考えて、その対策をしていくことで将来的な問題の防止となるでしょう。
防ぐために必要な人材エンゲージメントの向上は、一朝一夕にできるものではないため、効果的な方法を1つずつ導入していくようにしてください。