日本では、毎年台風や大雨が発生します。
台風や大雨で特に大きな被害を受けるのは、農家の方々でしょう。
農作物には、どのような影響があるのでしょうか?
また、事前に対策をしておく場合は、どのような対策が必要でしょうか?
農作物への影響と、対策について解説します。
台風や大雨の農作物への影響
日本では、台風が毎年いくつも発生しています。
また、大雨が降ることも多くなっていて、特に線状降水帯といわれる長期間激しい雨が降る自然災害には注意が必要となっています。
台風や大雨は、社会全体に少なくない被害を及ぼします。
死者が出ることもあり、規模によっては建築物が壊れたり、浸水で移動すら困難になったりすることもあるでしょう。
しかし、台風や大雨のほとんどは、大規模な被害が生じない規模のものです。
しかし、小規模なものであれば影響はない、というわけではありません。
たとえ小規模でも、農作物には大きな影響を及ぼすのです。
農林水産省が発表した「農林水産関係被害額の推移」では、2010年から2022年にかけての被害額が増加傾向にあり、2010年の豪雨・台風被害額が933億円だったのに対して、2019年は4,999億円、2020年は2,636億円の被害が出ています。
ちなみに、東日本大震災が発生した2011年は水産関係の被害が特に多く、豪雨・台風の被害額が3,214億円、地震が2兆3,841億円で、合計被害額は2兆7,055億円となっています。
影響が大きかった台風は、2019年の東日本台風です。
河川の決壊や土砂の堆積、果樹や水稲の冠水、農業用機械の損壊、水没などが発生していて、2,500億円以上の被害が発生しました。
2019年は、他にも房総半島台風で農作物に745.3億円の被害が発生し、6月の大雨では農地や農業用施設関係と農作物の合計で66.6億円、8月の前線に伴う大雨で合計171.3億円の被害が生じています。
ほとんどの農作物は、雨が少ないと十分に成長しません。
しかし、雨が多ければいいというわけでもありません。
雨が多すぎると、様々な影響が生じます。
また、雨が多いということは晴れ間が少なくなるため、日照不足も発生します。
農作物には水も大切ですが、日照も重要です。
日照不足も、多くの影響を及ぼすこととなります。
雨が多い場合は、農地の排水が不十分となってしまい、多湿によって病害や軟弱徒長を発生させて、品質低下の原因となります。
水稲でも、いもち病や稲こうじ病などが発生し、割れ籾も発生するリスクが高まります。
斑点米カメムシが発生して、大きな被害をもたらすこともあります。
野菜も、着色不良や生育障害が発生し、果樹には黒点病や炭疽病などの病害が発生するリスクが高まります。
また、台風は雨だけではなく、強風も伴います。
強風では、まず稲や麦などの背の高い農作物に倒伏が発生します。
また、台風の前後には乾燥高温風が発生して、農作物が枯れてしまうこともあります。
台風では、巻き上げられた海水が農地に降り注ぎ、塩害が起こることもあります。
塩害は、農作物に対する影響が大きいだけではなく、量によっては農地に長く残り、影響が続くかもしれません。
台風や大雨の農作物への影響の対策
台風や大雨は、農作物に大きな影響を及ぼします。
事前に対策をしておかなければ、全滅してしまう可能性も高くなります。
育て方や農作物の種類に対応した対策について、解説します。
まず、野菜類の露地栽培の対策を解説します。
露地栽培の場合、台風が発生した場合は作物の被覆や土寄せと、排水対策を行う必要があります。
露地栽培の場合は、台風の強風を遮るものがないため、台風の発生が懸念されたときは早めに対策をするのがおすすめです。
排水溝なども詰まっていないかを確認しておき、清掃しておきましょう。
作物が強風によってあおられないように、防風ネットも用意しておきます。
防風ネットは、飛ばされないようにしっかり固定してください。
野菜類は、支柱を補強して誘引線を強化しておき、不要な葉やつる、枝などを落として風の影響を少しでも抑えられるよう努めておくべきでしょう。
出荷にはまだ小さくても、収穫可能なサイズに成長しているものは、台風が発生する前に収穫しましょう。
農作物を無駄にしないというだけはなく、軽くすることで倒れにくくなります。
台風が通過した後は、殺菌剤を散布して病害を予防し、土壌通気性を確保しましょう。
倒伏した作物があれば、引き起こして必要に応じて固定します。
見た目は問題なくても、念のために農薬散布も行ってください。
ビニールハウス内などの施設栽培で野菜を育てている場合は、まず施設の点検をして、必要に応じて補強しましょう。
また、使用していないビニールハウスはビニールをはがすか、できるだけ巻き上げて被害がないようにしてください。
台風が通過した後は、温度や湿度への対策、ハウスの修復を行います。
施設内に浸水している場合は、換気をして土壌を乾燥させてください。
病害の発生予防のために、農薬散布も行いましょう。
水田の場合は、台風が発生したときに深水管理と排水対策を行ってください。
深水管理によって水稲の振動をできるだけ抑えて、なるべくお米がきちんと育つようにします。
また、水分不足を防ぐこともできます。
排水路が詰まっていないかも確認して、必要なら補修しておきましょう。
台風が毎年来る地域であれば、防風林や防風ネットを常に用意しておき、風の影響をなるべく軽減してください。
収穫間近な稲は、事前に刈り取っておきましょう。
台風が通過した後は、病害虫の駆除などを行って、品質や収穫量をできるだけ保ちましょう。
果樹の露地栽培の場合、台風が発生したときは枝や果実の損傷対策を行います。
設備を点検しておき、必要なら補修しましょう。
防虫・防鳥ネットは、台風の間撤去しておいてください。
通過後は、再び育つように世話をしてください。
被害を確認して、冠水があればすぐ排水します。
枝は治して、傷ついた果実などを回収しましょう。
まとめ
台風や大雨は、人々の生活に大きな影響を及ぼす自然災害ですが、特に農作物には大きな影響を与えます。
農作物は、対策をせずに台風や大雨の影響を受けてしまうと、きちんと成長できなくなる可能性もあります。
毎年のように起こる台風や大雨から農作物を守るため、きちんと事前に対策をしておき、通過後は農作物がきちんと育つように世話をしましょう。