現実をデジタル上で再現するデジタルツインは、IoTの発達によって登場した技術です。多くの分野で活用されている技術ですが、特に活用されているのが製造業です。
製造業でデジタルツインを活用することには、どのような意味があるのでしょうか？
製造業でデジタルツインがどのように活用されているのか、解説します。
製造業でのデジタルツインの使用状況
近年、デジタル技術の進歩によって、デジタル上で設計して新たなものを作製することも容易となっています。
しかし、デジタルツインは現実世界にあるものを、デジタルに取り込むというのがポイントです。
全くのデジタル仮想空間で作成したものではなく、現実世界とリンクしているのです。
製造業では、既に多くの企業が活用していて、製造した部品や使用する機器の状況把握をしたり、工場の試運転をデジタル上で行ったりできるのです。
デジタルツインは、製造業と相性のいい技術であり、早期に導入している製造業者が多いのです。
ちなみに、シミュレーションやメタバースと混同されることも多いのですが、違いがあるので間違えないようにしましょう。
メタバースとの大きな違いは、現実世界とリンクしているかどうかです。
例えば、メタバースの場合は部品の形状が適当でも、プログラムで調整すれば動きます。
しかし、デジタルツインは現実にフィードバックするものなので、現実に即した規格や精度にする必要があるのです。
シミュレーションは微妙な立ち位置で、デジタルでなくてもできるものであり、現実世界と必ずしもリンクするわけでもありません。
どちらも、必要に応じて対応することとなります
製造業でデジタルツインを活用するメリット
製造業でデジタルツインを活用すると、様々なメリットがあります。
具体的に、どのようなメリットがあるのでしょうか？
いくつかのメリットについて、解説します。
試作コストを大きく削減できる
活用することで、コンピューターの中で試作をしたり、実験をしたりすることが可能となります。
デジタル上で試作をすれば、コストや時間などを大きく削減できるでしょう。
また、試験回数についても上限がないため、時間の許す限り理想的な製品ができるまで繰り返し施策できます。
現実では、1つ作るだけで時間がかかり、変更点を反映するのにもコストがかかるのですが、デジタル上ならすぐにできてコストも最小限になるのです。
現実世界の試作品は、シミュレーションを重ねた上で完成品に近いものを作り出す一発勝負のようなものだったのが、初期段階から試作品を製作してブラッシュアップしていき、効率よく高性能な製品を作成できるようになるのです。
データを解析して品質向上に活かすことができる
また、IoTも欠かせない技術です。
人の目では把握できない情報もIoTで収集することができ、AIがデータを基にした高度な解析をして、詳細な分析ができます。
データを詳細に分析できれば、商品に悪影響を与えている原因となる機器や工程を特定することができます。
原因を除去することで、不良品を減少させることができるでしょう。
AIを活用して予知保全が可能となる
IoTによって監視をして、AIでデータを解析すれば、部品の故障や劣化のタイミングを予測することも可能となります。
予測のタイミング前に部品を交換することで、予知保全ができるようになるのです。
早期に導入しているほど、多くのデータが蓄積されます。
データから工場ごとの傾向や特徴について把握しておくと、イレギュラーな故障についても予測できるようになるでしょう。
故障する前に部品を交換しておくことで、工場が予定外に停止する事態を防ぐことができます。
予定通り操業できれば、利益も予定通りとなるでしょう。
遠隔地から状況を確認できる
データについてもデジタル化されているため、遠隔地からでも通信端末があれば、常に状況を把握できます。
また、VRやARを利用することで、さらにリアルな情報を得られるでしょう。
わざわざ現地に赴く必要がないため、時間の短縮にもなります。
また、常駐する必要もないので、優秀な人材を見つけて複数の場所を同時に担当してもらうことも出来るのです。
技術伝承が効率よくできる
新たに導入することで、作業員がどのような作業をしているのか、手元もどこからでも確認できるようになるので、離れたところにいる相手に技術を伝承することも可能となります。
AIによる分析で、作業の質を数値化して知ることができるようになるので、作業の改善点についてもはっきりさせることができます。
ほんのわずかな違いで、作業の質は大きく変わることがあるのです。
VRやARを用いることで、デジタル空間に入り込んで模擬的な作業を行うことも可能となるため、現場に出ることができない新人の研修も、現実に準じた環境で行うことができるようになり、AIによって詳細な分析ができるようになり、作業の質も効率的に高めることができます。
活用事例
製造業において、デジタルツインを活用している企業は増えています。
いくつかの事例を挙げると、まずデジタル空間に自社工場を再現することで、詳細に監視して工場の横断的な分析を可能としている企業があり、優れている工場、部門などを可視化できるようにしています。
また、デジタル空間に作業スペースを作り、製品に関わらないまま作業経験を積んでいくことを目的としている企業もあります。
VRやARを活用して、実際に作業するのと同じ感覚でスキルアップを行っています。
工場の保守に活用して、予知保全を行い止まらない工場を実現させることを目指す企業もあります。
工場が止まる原因を調査していき、解析して予知保全に役立てています。
他にも、様々な形でデジタルツインを活用している企業があります。
導入することで、今までの業務では不可能だったことも可能となり、作業員のスキルアップなども迅速に行うことができるようになっています。
まとめ
製造業において、デジタルツインというのは非常に有用な技術です。
現実世界とリンクすることで、低コストで時間をかけず試作品を製作し、現実にフィードバックすることで、スピーディーな開発を実現できるようになっています。
また、膨大なデータを蓄積することで予知保全が可能となり、工場が予定外に停止してしまうことがないようにしています。
製造業にとって、非常にメリットの多い技術といえるでしょう。
