新たに起こるリスクのことを、エマージング・リスクといいます。
エマージング・リスクは、起こる前に発見して対処ができれば、社会にとって安全ではあるのですが、実際には難しいでしょう。
早期に発見するには、何が必要なのでしょうか?
また、どのように対処すればいいのでしょうか?
エマージング・リスクとは?
近年、新規技術が次々に誕生していることで、社会的に多くのリスクも生まれてきています。
新たに生まれるリスクのことをエマージング・リスクというのですが、実は新たに生まれたものだけではなくもともと存在していて変化したことで増大したリスクなども含まれます。
また、今まで存在はしていたものの、新たにリスクとして認識されたものもエマージング・リスクとなります。
新たに認識されるものは、科学的知見が進展したことや社会の認識が変化したこと、生活スタイルが変化したことなどが理由となります。
エマージング・リスクは、将来的に重大なリスクへと変化してしまう可能性があるので、できるだけ早期に発見したうえで対応する必要があります。
リスク管理の意思決定も、リスクの評価が確実とは言えない段階で行わなくてはいけません。
想定外の被害を避けるためには、統計的に予測しやすいリスクに加えて、現段階では小さくても今後大きくなるかもしれないリスクを早い段階で発見し、将来トレンドを予測し、対策を立てておく必要があります。
まだわからないから先送りにするというのも、意思決定の1つです。
公的な意思決定をするためには、早期に発見する方法に加えて、リスクを分析する方法や意思決定のルールを決めておかなくてはならないでしょう。
エマージングではないリスクは、過去に例があるものなので、初めて発生したときはエマージングに含まれていたでしょう。
エマージング・リスクではないリスクについては、過去に多くのデータを得ることができていて、対策などもはっきりとしているのです。
エマージング・リスクが起こらない限りは、生涯において漫然と過ごすことができるでしょう。
祖先と同じ一生を起こることになり、おおよその予想もできるのです。
早期に発見する方法
エマージング・リスクは、顕在化する前の段階で発見し、対応できることが望ましいのですが、実際には何も起こっていないのに対策するというのは困難であり、実際に被害が出てから対策したり、規制したりすることが多いのです。
顕在化したときは、今までになかったリスクなのでメディアで取り上げられることも多く、社会不安を引き起こしてしまうこともあります。
不安をあおった結果、発生頻度が低くても再発防止のための厳しい規制が導入されることもあるのです。
社会心理学の観点から言えば、ヒューリスティクスともいえる現象であり、特に新たな技術であればたった一度の事故によって過度に危険視されてしまいます。
滅多に起こらない1つのリスクを警戒したせいで、他のリスクを見逃してしまうことも珍しくありません。
エマージング・リスクは早期発見して未然に防止することが重要ではあるのですが、被害が顕在化した場合は発見可能性や影響の大きさについて客観的に見積もり、リスク評価につなげるべきでしょう。
早期発見するには、まずできるだけ関連情報を収集することが大切です。
起こる頻度が低く規模が大きい災害であれば、地質学や天文学からの証拠を探す自然科学や、古文書を解読することで古来に同様の災害が起こった時のスケールや頻度を把握するべきでしょう。
事故など、非意図的なものはデータによって想定します。
現在普及しているIoTによって多くのデータが集まれば、解析することで事故の予兆などを探ることもできるようになるでしょう。
また、生体情報もウェアラブル機器のデータや健康診断のデータなどから、予防の指標を見つけられると期待されています。
エマージング・リスクの早期発見につながる公的な活動としては、フォーサイトの活用が考えられています。
フォーサイトというのは、英国の政府科学局で実施されているプログラムで、科学や研究に関するテーマの数十年先を対象として検討するというものです。
今までも、高齢化や海洋、都市などのテーマで実施されてきました。
早期発見のためには、防災分野やグローバルヘルス分野、金融分野においても、あらかじめアプローチ方法を制度化しておくべきでしょう。
政府が主導するだけではなく、保険会社の知恵などもうまく取り組む必要があります。
どのような対策がある?
エマージング・リスクについては、各国の政府機関が早期発見、早期対応を目指して組織的なアプローチを行っています。
特に、欧州労働安全衛生庁のプロジェクトには、一見の価値があるでしょう。
エマージング・リスクを発生する前に防止するには、科学的知見や現場の情報を把握する必要が考えたため、体系的な対応を開始しています。
エマージング・リスクについては、既に増加しつつある組織といえるでしょう。
具体的なパターンとして、リスクは元々未知だったものが、新規のプロセスや新たな技術、社会や組織の変化として生じるものという考えがあります。
例えば、グリーン・ジョブがあります。
グリーン・ジョブは、環境にやさしい太陽光発電やリサイクルなどの新規技術に関わる仕事です。
地球温暖化に伴い、グリーン・ジョブも急速に増えつつあります。
グリーンは安全だと考える人は少なくないのですが、実際にグリーン・ジョブとして雇用される人の健康や労働安全性に良いとは限りません。
また、AIやロボットなどの潜在的影響もあるとされていました。
シナリオ作成とワークショップの実施を行い、選定された技術に背景要因を加えた場合に起こるエマージング・リスクにはどのようなものがあるかを議論によって意見をまとめ、公表されます。
まとめ
エマージング・リスクは、今まで起こったことがない新しいリスクのことなので、過去のデータから予兆を知り、起こる前に対策するというのは非常に困難です。
しかし、過去のデータにない予兆が起こった場合はエマージング・リスクかもしれないなど、予測することは可能でしょう。
エマージング・リスクが顕在化する前に対処するには、多くのデータと新たな技術に対する理解、議論と予測が重要となるでしょう。