近年、タクシー業界は人手不足に悩まされています。
タクシーの不足を解消するために、日本ではライドシェアの導入を検討していたのですが、とうとう東京都限定でサービスが開始されました。
ライドシェアは、何が問題なのでしょうか?
ライドシェアがダメな理由について、解説します。
ライドシェア問題とは?
コロナ禍以前は、外国人観光客が日本に来て大量に買い物をしていく「爆買い」が話題となっていました。
コロナ禍によって訪日客は激減したものの、近年は感染拡大も収まって再び外国人観光客も増えてきています。
しかし、観光客が増えてきて問題となっているのが、タクシー不足です。
特に、観光地や過疎地の中で交通の便が良くないところは、自家用車で訪れることを前提としているせいで現地にタクシーがいない、というケースもみられます。
タクシー不足を解消するために提案されているのが、ライドシェアです。
ライドシェアというのは、日本語にすると相乗りですが、1台のタクシーに複数の人が乗ることを示すわけではありません。
ライドシェアというのは、自家用車でタクシーのようなサービスを行う、いわゆる白タクと呼ばれる形態を指します。
日本では違法となっているのですが、現在は解禁しようという議論がされているのです。
タクシーは、配車センターに電話をすれば来てもらえるのが当然であり、最近では配車アプリを利用することで手軽に呼び出すこともできるようになりました。
しかし、そもそも呼び出しても来てもらえないことがあるのです。
タクシーが不足している原因は、人手不足です。
東京都内では、おおよそ4万台のタクシーが走っていました。
しかし、令和になってからタクシーはかなり減少してしまい、2020年には4,000人以上、2022年には1万人近くが辞めてしまったといわれているのです。
一番の原因は、やはり新型コロナウイルスといわれています。
タクシーという密室内では感染リスクが高いうえ、タクシードライバーには中高年の、最も重症化しやすい年代が多いため、不安から退職してしまったのです。
過去最大にタクシー業界が人手不足となった2022年の年度末は、いくら配車アプリを利用してもタクシーが捕まらないことも珍しくなかったのです。
再びタクシーが全く捕まらないような状況になるのを防ぐため、ライドシェアが必要とされているのかもしれません。
また、2022年11月には東京でタクシー料金が値上げされました。
14%増という、1989年以来になる大幅な値上げとなったのですが、値上げしても乗客が減ることはなく、単価も高くなっているのです。
タクシーの需要と供給のバランスが崩れて供給が不足している今は、タクシードライバーを増やすよりも簡単に需要を満たすことができる、ライドシェアが必要とされるのもわかります。
しかし、問題がある事は無視できません。
安全性への懸念
ライドシェアは、一般の車でタクシーの様に乗客を乗せて移動し運賃を請求する、いわゆる白タクを認める制度です。
ライドシェアが認められれば、自家用車でタクシーの代わりができるようになるのです。
ライドシェアが導入された場合、タクシーが不足している事態を緩和することができるようになります。
タクシー業界は人手不足なので、現状より台数を増やすのが難しい以上、他に乗客の受け皿を求められることになるのです。
しかし、ライドシェアには様々な懸念点があります。
すでにライドシェアが急速に普及しつつある海外の例を見ても、安心して利用できるとは言い難いでしょう。
まず、ライドシェアは安全性に不安があります。
タクシー会社に所属しているという「保証」になるものがないため、犯罪行為に巻き込まれる可能性があるのです。
ドライバーが、飲酒をした状態で運転している可能性もあるでしょう。
飲酒運転で事故を起こした場合はもちろん大変なことになりますが、検問などでドライバーが検挙されてしまえば、中途半端な場所で放り出されることになってしまうでしょう。
また、タクシードライバーのように勤怠を管理されているわけでもないので、疲労がたまった状態で運転しているかもしれません。
居眠り運転による、事故などに巻き込まれる可能性もあるでしょう。
万が一の備えとなるのは保険ですが、ライドシェアでの事故には適用されるかがわかりません。
自家用車を使用して人を乗せるのですが、個人用の自動車保険では商業目的での利用をカバーできないのです。
ライドシェア会社で補償を行うのかが問題となるため、状況次第では補償が受けられないこともあるでしょう。
補償の額についても、かなりの幅があるのです。
ドライバーに関する問題
ライドシェアの問題点として、ドライバーに関するものがあります。
ライドシェアの場合、ドライバーは基本的に個人事業主として扱われるため、タクシードライバーとは扱いが異なります。
個人事業主なので、ライドシェア会社が最低賃金や休暇などの責任を負うことはありません。
ライドシェアのドライバー専任で働く場合は、かなり不安定な立場となるでしょう。
また、基本的に車両の維持費、燃料費、保険料なども自己負担となります。
海外では、ライドシェアの普及に伴ってドライバーを保護する法案なども検討されているのですが、まだ一部の地域に限られていて、導入されていない日本ではもちろん法律による保護などはありません。
また、ライドシェアの場合はタクシー業界とは違い、ドライバーの技術や知識などが最低限備わっている、という保証はありません。
ドライバーによっては、運転技術や経験、専門的な経験などが不足しているケースもあるでしょう。
緊急時の対応についても把握していないことがあるため、事故や災害などでパニックを起こすこともあるでしょう。
副業としている場合は、運転に専念しているわけではないため、道路についてもきちんと把握していないかもしれません。
まとめ
ライドシェアは、誰でもタクシーのように乗客を乗せて走り、料金を請求できるというサービスで、現在は違法とされている白タクを法律で認めたようなものです。
推進をしている人もいれば、安全性や有効性、あるいはタクシー業界への影響などを鑑みて反対している人もいます。
しかし、日本でもとうとうサービスが開始されることとなりました。
今後は、実際に犯罪が起こるかも念頭に入れて注目が集まるでしょう。