働き方が多様化したことで、副業などで個人事業主として働く人も増えているのですが、不当な扱いを受けることもあるのです。
近年増えている個人事業主を守るためにフリーランス新法が施行されることとなったのですが、似たような法律として下請け法もあります。
何かしらの関連があるのか、解説します。
フリーランス新法とは?
2023年2月に国会にフリーランス新法という新たな法律案が提出され、4月には可決されたのですが、1年以上施行されないままでした。
施行日は1年半以内とみられていましたが、実際には2024年半ばになってから同年11月に施行されることが決まりました。
内容としては、働き方が多様化した現状を鑑みて、個人で業務を受託している事業者が安心して働けるよう保護して、環境を整えるための法律です。
対象となる当事者や取引
保護の対象は業務を受託する事業者であり、委託する側の事業者は保護の対象ではなく規制の対象となります。
また、業務委託に関する報酬に関しても対象となるため、報酬が正当に支払われることを義務付ける法律でもあるのです。
業務委託には様々な種類があるのですが、多くの場合は対象に含まれるため、業務委託全般が対象ともいえます。
また、従業員を雇用している個人事業主は保護対象には含まれず、法人でも事業を1人で行っている場合は対象に含まれるのです。
給付内容その他事項の明示義務
委託事業者は、個人事業主への業務委託の際は契約内容について明示することが義務付けられます。
どのような条件で契約して、報酬の額はいくらでいつまでに支払うかなど、第三者が見てもわかるように詳しく表記する必要があるのです。
明示する方法は書面か電磁的方法ですが、書面で交付することを求められた場合は要求に応じる義務があります。
支払期日の定め
報酬に関しては遅滞なく支払いがされるように定められていて、原則としては給付を受領した日からできるだけ短い期間内に支払わなくてはならないのです。
特にいつまでに支払うと決めていない場合は業務を遂行した日に支払わなくてはならず、60日を超える支払期限が定められた場合は60日以内となります。
業務の再委託に関しても、支払いの遅延を防ぐためにそれぞれの間で支払う報酬の期限が定められているのです。
長期委託の場合の禁止事項
一定以上の期間継続して業務を委託される場合は、個人事業主が不利益を受けることが無いように委託事業者は禁止事項を遵守することが定められています。
具体的な期日はまだ決まっていませんが、個人事業主に責任がないのに報酬を減額したり返品したりすることは禁止事項です。
正当な理由がなく相場よりも報酬額を低くしたり、物品の購入や役務の利用を強制したりすることなども、禁止事項に含まれるのです。
就業環境の整備
労働者のように、個人事業主に対しても出産や育児、介護への配慮やハラスメント対策などを設けることも内容に盛り込まれています。
委託事業者は、個人事業主に長期間の業務委託をする場合は妊娠や出産、介護と両立しながら業務に従事できるよう配慮することが義務付けられているのです。
長期間ではなくても、同様の配慮をするよう努力義務も設けられていて、ハラスメント等に関しても相談に応じて適宜対処するよう定められています。
違反への対応
フリーランス新法に定められている義務に違反した場合は、立ち入り検査を受けて勧告などが出されることになるでしょう。
立ち入り検査を拒否すると50万円以下となり、委託事業者が法人であれば行為者と法人がそれぞれ罰せられることになります。
下請け法とは何が違う?
新法が定められる前から、似たような法律として下請け法があるのですが、どのような違いがあるのでしょうか?
下請け法との違い
下請け法 |
フリーランス新法 |
|
規制の対象の事業者 |
資本金1,000万円以上 | 業務の委託元 |
保護対象 |
資本金1,000万円以下の下請事業者 |
フリーランス(個人事業主) |
義務の内容 |
取引条件明示、報酬支払いの期限など |
取引条件明示、報酬支払いの期限など |
禁止事項 |
成果物の不当な受領拒否、報酬の不当な減額など |
成果物の不当な受領拒否、報酬の不当な減額など |
罰則 | 50万円以下の罰金 |
50万円以下の罰金 |
新たに施行された法律と下請け法には、報酬の支払期限や禁止事項などが似通っているため、あまり内容に違いがないと思われることもありますが、大きな違いもあります。
特に、保護対象となるのが下請事業者と個人事業主という違いがあり、規制対象にも違いがあるのです。
対象となる取引は似ていて、どちらも物品の製造・加工委託や情報生活物の作製委託、役務の提供の委託は対象となる取引になります。
しかし、下請け法はさらに修理委託も対象となるという点に違いがあるのですが、あまり大きくは違わないでしょう。
また、個人事業主の場合は従業員がいないことという制限しかありませんが、下請事業者の場合は資本金によって区分があります。
今まで下請け法では規制対象に含まれなかった中小企業でも、フリーランス新法の場合は資本金に関係なく規制対象となるのです。
資本金1,000万円以下の下請事業者は下請け法では保護対象でしたが、個人事業主に業務委託をしている場合は規制の対象にもなるという違いがあります。
過去に中小企業との取引で不当な扱いを受けたりトラブルになったりしたことがある個人事業主も、今後は法律によって守られることになるでしょう。
目的の違い
それぞれの法律の目的にも違いがあり、下請け法は下請事業者が不適切な取引を強要されないよう保護することを目的としています。
しかし、フリーランス新法の場合は労働者の権利を保護するという側面も重視しているという点が、大きな違いといえるでしょう。
また、下請け法は1回限りの単発仕事も対象に含まれるのですが、フリーランス新法の場合は1ヶ月以上継続する業務を対象としています。
まとめ
2024年11月からフリーランス新法が施行されることとなり、個人が事業者として受託した業務に対して安定して従事できるよう環境が整備されることとなりました。
混同されやすい法律に下請け法があるのですが、下請け法とは違って資本金の区分などがないため、一人で働く個人事業主は全て保護対象になります。
しかし、似通っている部分も多く、禁止事項などはどちらの法律でも規制されていることが多いため、注意してください。