企業の発行している株式を証券取引所で売買できるようにすることを上場といい、上場を取りやめることを上場廃止といいます。
証券取引所によって廃止が決定されることもありますが、企業が申請して廃止することもあるのです。
廃止することでどのようなメリットなどがあるのか、解説します。
上場を廃止する基準は?
一度証券取引所に上場した企業は、自主的に上場を取りやめて廃止することも可能ですが、証券取引所が廃止を決めることもあるのです。
基準に満たない、有価証券報告書などの提出の遅延、虚偽や不正の報告があった、内部管理体制が改善されないなどの理由で、廃止が決定されます。
上場に関しては維持するための基準が市場によって定められていて、1年以内に基準まで達しなかった場合は、上場廃止になるのです。
上場維持基準を満たすことができなくなった場合は、上場を維持するために原則として1年以内に再度基準を満たすための取り組みや、実施時期の計画書の提出が求められます。
計画書に関しては、基準を満たすことができなくなった時点から3ヶ月以内に提出・開示することがルールです。
ただし、売買高が足りないせいで廃止になってしまうというケースでは、6ヶ月以内に改善する必要があります。
また、上場維持基準の流通株式や株主数、時価総額などは市場によって異なるため、市場ごとの基準を把握する必要があるでしょう。
上場した企業は、期日までに監査報告書か四半期レビュー報告書を添付した四半期報告書か有価証券報告書を提出することが義務付けられています。
期限を経過してから1ヶ月以内に報告書が提出されなかった場合は廃止が決定してしまうため、注意が必要です。
また、承認を得ることで提出期限を延長することも出来ますが、延長期間の8日目までに提出しなくてはいけません。
報告書を提出しても、内容に虚偽の記載があったり監査法人による意見が無かったり、あるいは財務諸表に重大な誤りがあり不適切な場合は、廃止になってしまうでしょう。
報告書の記載に不適切なものがあった場合も同様で、不正がある企業はすぐに上場廃止となってしまいます。
上場廃止とまではいかなくても、企業の内部管理体制を改善しなくてはならないと判断された銘柄は、特設注意市場銘柄に指定されてしまうでしょう。
指定された場合は、通常の銘柄とは区別して取引を行うのですが、必要な改善を行わない、改善する見込みがない場合は、上場廃止になってしまいます。
上場する際は契約を結ぶのですが、契約に重大な違反があった場合や新規上場申請の際の宣誓事項に違反があった場合は、廃止になるのです。
また、新規上場の申請には宣誓書があるのですが、誓約書の事項に違反があって新規上場の基準に満たないと認められ、1年以内に基準を満たさない場合も上場廃止になります。
他にも、銀行取引が停止されたり破産されたり、再生や更生手続き、事業活動の停止などの条件に当てはまると上場廃止になってしまうのです。
上場廃止のメリット
上場が廃止となってしまった場合は、デメリットばかりがあるように思えるかもしれませんが、実はメリットもあります。
メリットとしては、まず経営の自由度を高めることができるという点で、上場企業ではできないこともできるようになるのです。
上場企業の場合は、経営改革を行おうとすると株主の意見を聞く必要があり、意見の内容次第では計画を阻まれることもあります。
また、経営状態が悪化してしまうと株主から過度な非難を受けてしまうことになるかもしれないのです。
上場廃止になると自由度が高まるため、会社運営において意思決定をスピーディーに行えるようになります。
株主総会の開催時期を短縮することもでき、取締役の任期を延長して最大10年にすることもできるのです。
上場を維持するためには、年間上場量や東京証券取引所が運営しているTDnetという適時開示情報伝達システムの使用量などのコストが発生してしまいます。
法律で定められている事項も数多くあるので、事務に人手が必要とされることもコストといっていいでしょう。
上場廃止になると、様々なコストを削減することができ、業務効率化を図れる可能性があるという点も大きなメリットになります。
上場廃止のデメリット
では、上場廃止になってしまうと企業にはどのようなデメリットが生じてしまうのか、具体的に解説します。
上場した場合は、一般投資家が取引所を介して株式を買うことで企業は資金を調達できるのですが、上場廃止になってしまうと資金調達の手段が少なくなってしまうのです。
一般投資家から資金を調達できなくなってしまうと、事業継続に必要な資金をどう調達するか悩むことになるかもしれません。
また、上場廃止になってしまうと既存の株主はかなり高い確率で不利益を被ることになってしまうでしょう。
上場廃止になってしまう場合は、株主に対して理由や手法などをきちんと説明して、理解してもらう必要があります。
また、理解してもらったうえで、上場廃止後に既存の株主が不利益を被ることがないように配慮する必要もあるでしょう。
株主の理解を得ることができずに企業のイメージが大きく下がってしまうようなことがあれば、想定しえないデメリットが発生するかもしれません。
上場廃止によるメリットについて期待していたとしても、想定したようにいかない可能性もあるのです。
上場廃止というのはネガティブなイメージがあるため、既存の株主や一般消費者、企業の取引先にも悪い印象を与えてしまうかもしれません。
悪印象のせいで企業の信用が下がり、売り上げの低下につながる可能性もありますが、金融機関からの借り入れもしづらくなってしまうかもしれないのです。
一般投資家から資金調達ができなくなったうえ、金融機関からの信用も失ってしまうと資金繰りに困る可能性もあります。
上場廃止になる場合は、取引先や金融機関に理由や背景などをしっかりと説明しておくことで、信用を失うリスクが軽減されるでしょう。
まとめ
企業は上場する際に様々な基準をクリアしなくてはならないのですが、上場した後も上場を維持するための基準が定められています。
上場を取りやめることを上場廃止というのですが、上場廃止は企業の経営者が自主的に行うだけではなく取引所が廃止するケースもあるのです。
上場廃止には様々なメリットもあるのですが、デメリットについても事前に確認しておき、上場を廃止しても問題ないのかよく考えるようにしましょう。