トランプ政権によってアメリカでは多くの変化が起こっているのですが、米国際開発庁(USAID)も閉鎖する方針となったのです。
政府効率化を理由として解体と国務省への統合を進めようとしているのですが、多くの混乱が広がっているのです。
USAIDの役割や日本との関係、現在の状況について解説します。
USAIDとは?
アメリカには、United States Agency for International Development、略称でUSAIDという政府機関があるのです。
アメリカ合衆国の対外援助を担う機関で、日本語にすると米国際開発庁という意味になります。
設立されたのは1961年、ジョン・F・ケネディ大統領によるもので、冷戦の中で国際的な影響力を拡大し、発展途上国を支援するために設立されました。
主な活動分野としては、まず紛争や災害時に食料や医療の支援を行う人道支援を行っています。
また、教育や雇用の支援を通じて貧困を削減することや、エイズ、エボラ、マラリアなどの予防や治療による感染症対策も活動分野です。
近年は異常気象も増えているため、気候変動対策や持続可能な農業支援などを行って環境保全にも努めています。
各国の民主主義を支援するため、必要に応じて選挙の監視や法制度の強化などもUSAIDが行っているのです。
拠点は60カ国以上にあり、200カ国以上で年間を通じて約1万5000件のプロジェクトを展開しています。
2023年の予算は400億ドルと、米国の年間政府支出総額の0.6%に相当する額となっているのです。
日本との関係は?
USAIDの活動分野は多岐にわたるのですが、日本とは何らかの関係があるのか疑問に思うかもしれません。
日本はUSAIDの援助を受けているわけではないのですが、国際開発の分野では以前から協力関係を築いているのです。
特に連携が強化されている分野としてまずは国際保健があり、2002年に「保険分野における日米パートナーシップ」を立ち上げています。
保険システムの強化や母子保健、感染症対策などの分野においては、日本が協力しているのです。
また、日米両国ではインド大西洋地域が自由で開かれた場所となるように、維持と繁栄促進に努めています。
USAIDを通じて行われるインド太平洋戦略として、協力体制を築いて支援しているのです。
日本がUSAIDの支援を受けることもあり、2011年に発生した東日本大震災では災害支援が行われました。
また、日本も受け取るばかりではなく、USAIDと連携して他国で起こった災害には支援を行っているのです。
日米では開発対話を通じて、両国が共同で取り組まなくてはならない開発課題やグローバルな課題への対応について、意見交換を行っています。
日本の外務省とUSAIDとの間では、2024年9月に「共通の国際保健の優先課題の推進のための協力覚書」への署名が行われたのです。
覚書の内容は、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の推進や国際保健安全保障の強化を目指すという内容になっています。
なぜUSAIDが閉鎖されるのか
トランプ政権では、2025年2月にUSAIDを閉鎖して国務省に統合するという方針を打ち出したのですが、なぜ閉鎖されることになったのでしょうか?
USAIDを閉鎖するのはなぜかというと、まずトランプ大統領は連邦政府を効率化しようと考えています。
対外援助を担っている組織もさらに効率化したいと考えているため、トランプ政権では再編を主張しているのです。
また、USAIDに支払われている予算を削減することで、政府支出を抑制しようと考えています。
トランプ政権では「アメリカ・ファースト」を政策として掲げているため、国際協力よりも自国の利益を優先しようと思っているのも原因の1つです。
USAIDは諸外国への援助を行うことが多いのですが、アメリカにとってはマイナスとなることが多いため、自国の利益のために援助を減らす可能性もあります。
案だけではなく、実際に閉鎖しようとしている動きもすでに出ているため、方針を変更する可能性も少ないでしょう。
まず、USAIDの公式サイトは2月1日の時点ですでに閉鎖されていて、2月3日には大量の職員が休職を通告されています。
今後の計画も発表され、人員については全職員約1万人いる中で、294人しか雇用を維持しないことも公表されているのです。
しかし、USAIDの閉鎖に関しては誰もが納得しているというわけではなく、強い反発も起こっています。
例えば、閉鎖手続きに関しては連邦地裁から、一時停止命令が2月7日に出されているのです。
また、政府職員労働組合が訴訟を提起していて、国際社会からも懸念が表明されています。
もしもUSAIDが閉鎖することになったら、実際に多くの影響が出てしまうと予想されているのです。
まずは国際支援が縮小することが予想されていて、USAIDが今まで行っていたような広範な支援活動を続けるのは難しくなります。
今後も支援活動が行われるとしても、今までと比べると支援活動の範囲が縮小され、停止してしまうこともあるでしょう。
対外援助は外交政策における重要なツールとなるものなので、縮小してしまうと米国の国際的な影響力が低下してしまうかもしれません。
多くの国際機関はUSAIDと協力関係を結んでいるため、もし併催してしまった場合は国際機関への影響も大きなものとなるでしょう。
閉鎖してしまった場合は、全体的な国際的援助体制に大きな影響を与えてしまう可能性もあります。
また、日本とUSAIDは深い関わりがあるため、閉鎖されてしまうと協力関係にも変化が訪れてしまうでしょう。
共同プロジェクトは見直しが必要となり、新たに協力体制を築かなくてはならないかもしれません。
USAIDはアメリカの政府機関なので、閉鎖しても日本には大して影響がないと思っている人もいるでしょう。
しかし、実際には日本と協力関係にあるため、閉鎖してしまうようなことがあると非常に大きな影響が出てしまいます。
まとめ
アメリカのUSAID、いわゆる米国際開発庁に対して、トランプ大統領は閉鎖して国防省に組み込むという方針を示しています。
すでに閉鎖されていて、職員も大量に休職を宣告されているのですが、連邦地裁からは一時停止命令が出されていて政府職員労働組合による訴訟となる可能性もあるのです。
外交政策における重要なツールなので、閉鎖してしまった場合は国際的な影響力も低下するきっかけになるかもしれません。