トランプ大統領の関税砲での株価リスクを考える

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トランプ米大統領は4月2日、世界各国から米国に輸入されるすべての製品に対して一律10%の関税を課し、同時に相互関税の導入も発表しました。
今回の発表は関税砲も呼ばれており、株式市場には大きな波紋が広がることとなったのです。
関税砲による株価リスクについて、解説します。

関税砲の内容とは

4月2日に、トランプ大統領は米国に輸入される製品に対して、一律で最低10%の関税を課すことが発表されました。
また、同時に相互関税も導入することが発表され、貿易相手国の関税率や非関税障壁などを踏まえて関税率が決まることとなったのです。

日本の場合は24%の関税が課されると考えられますが、カナダとメキシコ、鉄鋼とアルミニウム、自動車と自動車部品は、それぞれ相互関税の対象外となると報道されています。
今回の輸入関税と相互関税の導入は、想定を上回る厳しい政策内容になっているのではないでしょうか?

国別では、相互関税が中国では34%、欧州諸国は20%となっているのですが、中国にはすでに追加関税の20%が課されています。
つまり、中国製品を対象とした関税率は54%にもなるため、各国の報復関税の可能性も考えられ、世界経済に対する懸念も強まることとなるでしょう。

本気で実行するのが疑わしい内容といえるため、もしかすると実効性を求めたものではなく、交渉材料として考えているのかもしれません。
もし、実際に関税率の変更があったとしても、一時的なものとなりすぐに改善される可能性も高いのではないでしょうか。

今回の追加関税率について米国メディアが報道した計算式では、各国の輸入額で国ごとの米国の貿易赤字を割った答えが、追加関税率とされています。
つまり、米国との貿易赤字が大きい国ほど関税率も高くなってしまうため、外交的圧力をかけるためのツールと考えられるのです。

アメリカ側では、取引を求めていないという姿勢を示しているものの、実際には各国の政府や企業との交渉が進められると思われます。

日本の株式市場への影響

トランプ大統領の発言を受け、主要国の金融市場は一度リスク回避に動き、主要株価指数の軟調な動きや国債価格の堅調な動きなどが予想されるでしょう。
為替市場では、対主要通貨に対する増価が見込まれるのですが、関税砲は今後交渉次第で緩和される可能性が大きいと予想されます。

市場の動きは、悪いシナリオを一気に織り込むことが多いため、現在の動きに対して過度に悲観する必要はないでしょう。
一律10%の輸入関税と相互関税は4月中に順次発動される見込みとなっていますが、今後は貿易相手国の動向に注目が集まります。

もし各国で報復関税の動きが広まっていった場合は、トランプ大統領がさらに関税を引き上げ、状況は悪化していく可能性もあるのです。
一方で、米国が各国との交渉に応じて進展が見られた場合は、関税も順次修正されていくことが期待されます。

現実的に考えると、今回のように大規模な関税の引き上げを行っても、長期間継続するとは考えにくいでしょう。
最初に厳しい条件を提示して、今後の交渉を有利に運んで関税を修正していこうと考えているのかもしれません。

市場の混乱が深刻な金融危機のせいではなく人為的な政策が原因の場合は、政策によって鎮静化される可能性が高いため、今後の動きが気になるところでしょう。

米国株式市場への影響

関税砲が発表された直後から、米株価指数先物は売り一色の展開となり、翌日の米株式市場ではS&Pの下落率が前日比4.84%まで拡大する事態となりました。
ナスダック総合指数も、同様に5.97%安となっていて、どちらも2020年以来の大幅な下落となっているのです。

投資家の不安心理は急速に強まり、昨年の夏に相場が急落したときをほうふつとさせる動きを見せています。
米国株のボラティリティは拡大しているのですが、原因にはトランプ氏が発表した関税砲による景気不安があるのです。

直近の経済指標をみると、どれも米国株式がスタグフレーションに陥ってしまう可能性を示唆しています。
3月の米雇用統計が4日に発表され、3月のミシガン大学消費者態度指数では消費者マインドが低下しているトレンドが確認されているでしょう。

また、3月のISM指数では 製造業とサービス業のどちらも、企業マインドが低下していることが確認されています。
雇用指数は50を下回る状況となっていて、投資家の不安心理が急速に高まりつつある中で、雇用者数は増加したものの投資家の不安は消えていないのです。

関税措置によって企業や消費者の信頼は揺らいでいるため、労働市場もいつまで勢いを維持できるか不安視されています。
しかし、雇用統計で労働市場が底堅いということが改めて確認されれば、米国株は買い戻しの動きを見せることとなるでしょう。

また、今後はインフレが加速して景気が下押しされる可能性についても警戒が必要となります。
輸入品の価格が上昇することで消費者マインドが悪化し、実質賃金が低下してしまえば個人消費の減速が進み、個人消費支出インフレ率が上振れとなるかもしれないのです。

もしも2025年後半に消費主導の景気減速が起こったとしても、米連邦準備制度理事会はインフレ環境下において利下げを行うことができません。
たとえ2%の物価目標を大きく上回るインフレが起こったとしても利下げができないため、金融政策が手詰まりになってしまうこともあるでしょう。

もしも手詰まりになってしまった場合は、インフレ下で景気が停滞してスタグフレーションが起こる可能性も高くなってしまいます。
さらに、2025年夏の議会で共和党が2017年の減税措置を延長することができなければ、新たな財政刺激は起こりにくいでしょう。

もし延長に失敗してしまった場合は実質的な増税になるため、さらに景気後退リスクが高まってしまうかもしれません。
現状が続いたままだと、共和党は上下両院で多数派を失う可能性もあり、トランプ大統領は窮地に追い込まれることとなるでしょう。

まとめ

4月2日に、米国大統領のトランプ氏が関税砲と呼ばれる一律10%の関税と相互関税について発表しました。
相互関税は米国の輸入額と貿易赤字によって国ごとに定められることとなり、日本の場合は24%が課される可能性があるのです。
今後、関税が実行されることとなるのか、あるいは各国との交渉によって税率が緩和されるのかに注目されていて、各国の市場にも大きく影響を与えています。