経営に関するリスク/不正な利益供与

日本でビジネスを展開していれば、いずれは市場規模の大きな海外で勝負をしたいと考える経営者も少なくないと思います。
しかし国際取引は色々な面で注意が必要であり、特に外国の公務員との関係の中で問題になる部分についても理解しておくことが必要です。


海外との取引は増加傾向に
今では大企業だけでなく中小企業でも海外との取引は行われています。今後、国内の市場規模が全体として縮小される傾向にあると考えた場合、中小企業でも国際取引に参入していくことは事業内容によっては避けることができない問題となるでしょう。
国際取引のやりとりの中で、海外の子会社や現地エージェントが不正な利益を得ようとして賄賂等を渡した場合には、本社は認識していなかったとしても「外国公務員贈賄罪」に問われることを理解しておきましょう。
外国公務員贈賄罪とは?
日本では「不正競争防止法」が1998年に改正されましたが、国際的な商取引に関して営業上の不正利益を得るために、外国公務員に対し金銭やその他利益を供与することは禁止されています。
違反した者に対しては5年以下の懲役、または500万円以下の罰金が科されることになり、さらに企業についても3億円以下の罰金が科されます。
これは進出国での取引停止となり、さらに相手国での法律でも処罰される可能性もあるということを理解しておきましょう。
外国公務員や利益供与の範囲に注意
外国公務員等とは外国公務員だけでなく、政府関係機関や外国政府出資の公的企業など、広範囲での個人や団体が対象になります。
金銭やその他の利益に該当する部分としては、現金や物品だけでなく、飲食やゴルフでの接待行為、さらに現地法人での役員ポストといった職務上の地位なども該当します。
このように様々な不正な利益が含まれることになりますので、これくらいなら大丈夫と軽く考えないことが重要になります。
直接賄賂を渡していなくても罪に
しかも現地法人やコンサルタントを使った上での贈賄行為でも、その背後に糸を引く立場として存在していたのなら外国公務員等贈賄罪の共犯者として処罰の対象です。
どのような行為が外国公務員等贈賄罪に該当するかは、それぞれ法的判断が必要ですので都度、弁護士などに相談した上で判断したほうが良いでしょう。
外国公務員贈賄防止指針を理解しておくこと
海外取引は今後中小企業でも増えて行くと考えられますが、外国公務員に対する利益供与は罪になることを理解しておきましょう。
また、公務員の範囲にも十分注意が必要ですが、外国政府の職員や議員だけでなく、検査機関の職員なども含まれます。
さらに日本企業が直接賄賂などを渡したわけでなくても、現地エージェントからの利益供与も同様に違法です。
既に海外と取引がある場合、今後取引の予定があるという場合には、「外国公務員贈賄防止指針」を熟知しておくようにしましょう。