ビジネスにおいて、顧客視点は欠かすことができない重要なポイントですが、時折この顧客視点と、お客様の声を混同しているケースが見受けられます。
この2つは、一見すると似たようなものですが、実際には大きな違いがあります。
果たして、どのような違いがあるのでしょうか?
顧客視点の必要性
そもそも、顧客視点というのはなぜ必要とされているのでしょうか?
マーケティングにおいて顧客視点が必要とされる理由について、まずは考えてみましょう。
早速、現代の市場の状況から考えてみましょう。
現代は、圧倒的に商品が多い時代といわれています。
商品を必要とする人よりも、その商品の数のほうが多いため、需要と供給の釣り合いが採れておらず、供給過多となっています。
一つの商品が発売されれば、他社からそれに近い商品がすぐに発売されて競争が生まれ、1社独占状態の市場というのはまず見つかりません。
消費者は、その中から好きなものを選ぶことができる状態です。
このような時代ですから、消費者が商品を選ぶ際には非常に厳しい目線で選びます。
その中で選んでもらえる商品を売り出すには、他社よりも何か優れた独自性を持たせることを常に意識する必要があるでしょう。
しかし、魅力的な独自性というのは簡単に見つけることができるものではありません。
そのために必要となるのが、顧客視点という考え方です。
消費者の目線に立つことで、自社の商品には何が欲しいのか、ということを見つけることができるのです。
これは、商品開発の際に重要とされていますが、販促手法を考える際にも役立ちます。
ということは、たとえ売り出す商品自体は同じものであっても、その売り方に顧客視点を考えるだけで反応が大きく異なる場合がある、ということです。
スーパーマーケットと商店街が、その典型的な例です。
現在、多くの商店街は失われ、スーパーマーケットが台頭しています。
これは、顧客視点による考えとして「一つの場所で多くの商品を買いたい」というものがあった結果です。
しかし、その中でも生き残っている商店街の肉屋や魚屋、八百屋などがあります。
スーパーマーケットでも同じような商品を買うことができますが、それでも生き残っていられるのは、顧客視点に立って考えられた独自性を持ち、スーパーマーケットでは満たすことができない要望を満たしているからです。
このように、ただ商品を売るだけではなく、顧客視点に立ってスーパーマーケットでは満たせないものを見つけ、それを売ることができれば商店街は生き残りを図ることができるのです。
お客様の声とはどう違う?
顧客視点についてわかったところで、今度はお客様の声とはどういう違いがあるのかを考えてみましょう。
両者に具体的な違いはあるのでしょうか?
顧客視点というのは、顧客の立場に立って自分がどう考えるのか、ということなのですが、お客様の声というのは消費者が考えたことを表現したものです。
しかし、お客様の声というのは表面的な意見となることが多く、実際のニーズとは異なる場合が多いのです。
ニーズとは異なるということは、例えばこんなものがあったらいいなと思いはするものの、実際に欲しいものとは異なるということです。
いわば、どんなものに憧れているか、というのがお客様の声の実態です。
例えば、ハンバーガーに対して求めるものを聞いた際のお客様の声には、ヘルシーや低カロリー、オーガニックという意見が多く寄せられています。
特に、若い女性にとっては非常に関心を集めるキーワードですね。
しかし、顧客視点で考えると、また違うものが見えてきます。
顧客視点では、ハンバーガー1つでは物足りないと思っている人や、もっと肉が多いものが欲しいと思っている人が多いように思えます。
ただし、実際にヘルシーなものを求めている人もいるため、両方の商品を販売してみると、ボリュームがある高カロリーな商品のほうを若い女性が選ぶことが多いのです。
その後、低カロリー商品については、売り上げが伸びずに消えていくこととなりました。
このように、顧客視点とお客様の声とは全く違うことが多いので、声にならない潜在的なニーズを知るためには顧客視点に立つ必要があるのです。
しかし、お客様の声に従って希望通りのものを販売したのに売れないというのはおかしいとは思いませんか?
その理由は、お客様の声が示しているのは既存の商品の焼き直しに過ぎず、まったく新しいものを生み出すことはないからです。
例えば、ハンバーガーにヘルシーさを求める人は他にヘルシーな料理を出すお店を知っているので、いくらヘルシーなハンバーガーを発売してもヘルシーな料理が食べたければそちらのお店に行ってしまいます。
そのため、お客様の声というのは現状の不満を知ることはできても、新しい商品を開発するきっかけとはなりにくいのです。
そのまま聞き入れても、出来上がるのは的外れなものとなってしまうでしょう。
例えば、コンビニで取り扱う食パンには、100円で買えるものと250円で買えるものがありますが、高級路線の250円の食パンが大ヒットしています。
しかし、事前にそのパンを売ることを消費者にアンケートをとっても、買いたいという声はそれほど多く上がらなかったでしょう。
それは、コンビニで高級なパンを取り扱うという概念がないからです。
しかし、顧客視点で考えると、少しいいパンを買いたいからといってわざわざ遠くの店に行くのは面倒という考えや、もう少しおいしい食パンが手軽に食べられたらいい、という考えが出てくるので、このパンは大ヒットにつながったのです。
このように、お客様の声と顧客視点には大きな違いがあります。
いわば顧客視点は、お客様の声よりももっと奥に存在する、本当のニーズに応えるためのものなので、それを知るためには消費者の立場で考えて正確な理由を把握していく必要があるでしょう。
マーケティングの成功は顧客視点にある
これまでの内容を踏まえたうえで、自社の製品は果たして顧客視点に立って考えられているかどうかを考えてみましょう。
売り上げが振るわない商品があるとすれば、それは顧客視点が欠けているからかもしれません。
たとえ現在は売り上げが好調な商品も、数年以内に全く売れなくなる可能性もあります。
それを防ぐためには、顧客視点での付加価値を付けるか、新たな活用法などを生み出すなどの工夫が必要となるでしょう。
顧客のニーズは常に変化していくので、顧客視点に立つことでそのニーズの変化をいち早く見極めて対応していく必要があるでしょう。
その結果、大きく成長するための余地がみつかることもあります。
特に、企業では提供者視点で考えることが多いのですが、例えば商品が持つ本来の価値がいくら高くても、それがお客様にとっての価値とはならない場合があるので、顧客視点での考え方も必要となります。
顧客視点を忘れずに、そのニーズを考えて商品を開発していきましょう。
まとめ
企業にとって、顧客から寄せられる意見であるお客様の声は大切なものです。
しかし、実際に顧客が求めているものが何かを知るためには、顧客視点に立って考える必要があります。
お客様の声というのは表層的なニーズに過ぎないので、本当のニーズは顧客視点に立ってみなければわからないものです。
お客様の声と顧客視点の違いがどういったところにあるのかをよく考え、本当のニーズを見逃さないようにするために、常に顧客視点に立って商品開発や商品の販促方法などを考えられるように、意識していきましょう。