新規事業を立ち上げると、企業全体のモチベーションが上がります。
しかし、その事業が必ず成功するとは限りません。
時には、早々に切り上げることも視野に入れる必要があるのです。
では、新規事業撤退の判断は、どのようにして行うと良いのでしょうか?
ポイントをご説明しましょう。
新規事業の撤退の判断基準~2つの経営分析手法から~
新規事業の撤退を判断するのは、ベテランの経営者であっても難しいものです。
なぜなら、新規事業で利益が出ていると、引き際のタイミングの判断に躊躇してしまうからです。
「最初は良かったからまだ伸びる」と諦めきれない経営者も少なくありません。
ですが、これでは客観的な状況分析ができているとは言えません。
そのような時は、2つの分析手法を活用して、撤退すべきかどうかを判断すべきです。
①商品や部門ごとの利益から判断する「貢献利益」
②自社の状況から見直す「SWOT分析」
撤退の判断をするにあたり、明確な状況分析ができる方法です。
撤退で悩まれている経営者こそ、是非ご覧下さい。
①商品や部門ごとの利益から判断する「貢献利益」
貢献利益とは、企業全体の業績を把握するための「営業利益」とは違い、商品やその開発に関わった部門の「貢献度」を表す指標です。
簡単に言うと、新規事業がどれだけ企業にプラスになったのかを明確にする指標になります。
貢献利益の割合が大きければ大きいほど、企業にとって欠かせない商品・サービスだと言えます。
反対に、貢献利益が小さいほど、企業にとってデメリットしかありませんから、早急に撤退すべきです。
全体の利益だけでは判断できない部分を知ることができますから、経営判断をする上で基本になる方法だと言っても過言ではありません。
しかしながら、安直に判断できない内容もあります。
例えば、営業利益ではマイナスであっても、貢献利益がプラスになっている場合です。
一見すると、企業全体の利益がマイナスになっていますから、即時撤退すべきだと考えてしまいます。
ですが、この状況の判断は難しく、撤退するにしてもタイミングを見極めなければなりません。
貢献利益の状態が良好の場合は、企業にとってマイナスがなく、事業を継続することがメリットになっています。
そのような状態であるにも関わらず、撤退してしまうのはかえって全体の利益に影響してしまうのです。
安直に黒字・赤字という視点で判断できない面もありますが、新規事業の企業内の実態を把握する上では大いに役立ちます。
②自社の状況から見直す「SWOT分析」
もう一つの分析手法であるSWOT分析は、自社を取り巻く内外の環境から、新規事業の撤退を判断します。
内部環境で重視すべきは企業の強みと弱み、外部環境では市場での機会や他社等の脅威が挙げられます。
上記の一例を少し見てみましょう。
例えば、企業内の弱みならば、人材や資金不足といった課題が挙げれます。
また、企業外部の弱みには、類似商品を販売しているライバル会社の存在が挙げられます。
このように、自社を中心として、強みや弱みを分析していくことで、新規事業の置かれている現状を知ることができるのです。
自社の強みや弱みは、経営に関わっている人ほど、中々気付けません。
それを明確にし、具体化することができると、次の行動を考えやすくなります。
特に新規事業の場合は、商品の良し悪しの変動が大きいですから、良い状態の時ほど分析しなくても良いと思いがちです。
ですが、新規事業の状況が良好な時ほど、立ち位置を確認しなければ、撤退すべきタイミングを見落としてしまう可能性があります。
中でも分析をした結果、社内でも課題があり、社外でも不利な立場になる可能性がある場合は撤退すべきです。
反対にそのような状況でも事業を継続してしまうと、経営に直撃しかねません。
ここでご説明した分析手法は、単独で活用しても構いませんが、2つ組み合わせるとより具体的に判断することができます。
感覚的に撤退の判断をするのでなく、根拠づけがしっかりとできますから、理に叶った撤退戦略を立てられます。
撤退の判断をする上で大切なこと
新規事業の撤退の判断には、2つの分析方法があることをご説明しました。
ですが、最終的な判断をするにあたり、経営者ならば経営戦略や妥当性も含めて検討しなければなりません。
先程も少しご説明しましたが、単に企業にとって不利益だと言っても、理由が明確にならなければ同じ失敗を繰り返してしまいます。
さらに、今は状況が芳しくなくても、軌道修正することで回復することも十分にあり得ます。
従って、今の経営戦略を踏まえた上で、撤退の判断が妥当なのかを考えなければいけません。
撤退の判断をするのは、基本的に様々な視点から分析した時に利益が見込めない時になります。
どこか一つでも可能性がある場合は、完全撤退の選択が難しいと言えるでしょう。
反対に、誰もが納得する理由が揃っているならば、完全撤退すべきだと断言できるのです。
新規事業は、経営者だけでなく、事業に関わった社員の思い入れも強いです。
みんなが頑張っていたからこそ、撤退だけはどうしても避けたいという気持ちも理解できます。
しかしながら、気持ちだけで経営が成り立たないのも事実です。
どこかで線引きをしなければなりません。
今回取り上げた分析法は、気持ちの面で切り替えをするためにも有効な方法になります。
客観視できることで、どこまで成功していて、どこから失敗しているのかを知ることができます。
それは、企業にとって決してマイナスになりません。
むしろ、次の事業に向けて改善点を知る機会になるのです。
さらに、新規事業を良い状態で撤退させることで、マイナス面が生じる前に有終の美を飾ることもできます。
これは、状況が悪化してからの撤退よりも難しいですから、一区切りができる経営者ほど優秀だと捉えられるのです。
新規事業になるほど撤退に悩む経営者が多いですが、それは簡単に解決できます。
悩む時間を分析する時間に変えて、新規事業の立ち位置を把握することから始めましょう。
まとめ
今回は、新規事業の撤退の判断基準についてご説明しました。
まずは、最終的な判断の前に経営分析手法を用いて、新規事業の状況を客観的に確認するようにして下さい。
客観的に事業のメリットとデメリットを知ることで、継続すべきかどうかがクリアになってきます。
その上で、現在の経営戦略と照らし合わせ、撤退すべきなのかを合理的に判断するようにしましょう。
感情で判断しないことが、最大のポイントになります。