2024年9月期の中間決算において、日産自動車は大幅な減益になったことが発表されました。
売り上げが大幅に減少したとしても、営業利益が前年比で90%以上落ち込むというのはめったにないことです。
日産自動車はなぜ大幅に営業利益を落として凋落してしまったのか、主な原因について解説します。
なぜ日産は大幅な減益となったのか
日産自動車では、11月に2024年9月期の中間決算を発表したのですが、内容としてはかなりマイナスの要素が多いものでした。
売上高は前年同期比1.3%減の5兆9,842億円でしたが、儲けを表すことになる営業利益は前年同期比で90.2%減の329億円と大幅な減益となりました。
日産自動車は、経営を立て直すために世界全体の生産能力を5分の1カットして、人員を9,000人削減するという方針を発表したのです。
また、三菱自動車工業の株を34%保有しているのですが、保有している株を最大で10%まで三菱に売却する方針も明らかにしています。
営業利益が大幅に減益となったことで、純利益も192億円と、93.5%減益となってしまったのです。
また、経営責任を明らかにするため内田社長は役員報酬の50%を自主返納すると宣言しています。
12月に入り、日産自動車はホンダと経営統合に向けた協議を行っていると報じられており、自動車業界の動きが慌ただしくなっているのです。
日産自動車が経営統合した場合は、日産自動車が筆頭株主となっている三菱自動車も合流可能性が高いと思われます。
日産自動車が大幅な減益となった原因は、主力であるアメリカ市場で販売不振に陥り、中国市場でもEV戦略が失敗したことでしょう。
オンライン会見において、内田社長はアメリカ市場でのハイブリッド車やプラグインハイブリッド車の需要の高まりが原因と述べています。
日産自動車には上記のような車のラインアップがなく、電気自動車に力を入れていたため、苦戦を強いられることとなったのです。
世界的な流れでは、電気自動車よりもハイブリッド車に注目されていて、さらにトランプ氏が再び大統領になったことも逆風となっています。
トランプ氏は、バイデン政権で導入された電気自動車購入者への最大7,500ドルの税額控除を廃止しようと検討しているのです。
また、ガソリン車に関してもトランプ氏は反対意見を述べていて、自身が大統領になったらどの州もガソリン車を禁止すると選挙前に述べていました。
バイデン大統領のときにアメリカは気候変動枠組締結会議に復帰したのですが、トランプ氏は再び脱退するとも予想されているのです。
温暖化対策に欧米は疲弊
現在、世界では地球温暖化対策に対して疲れを見せていて、特に欧米では顕著にみられていて方針の変換もみられるようになりました。
EUではガソリンで走るエンジン車の新車を2035年に全面禁止するという方針だったのですが、環境にいい合成燃料で走るエンジン車は認めると表明したのです。
EUではこれまで、エンジン車の全面禁止に伴って電気自動車にシフトする動きを世界に先駆けて進めていたのですが、政策を大きく変えることとなったのです。
環境に配慮した企業活動に伴って価格が上昇することを「グリーン・インフレーション」といい、気候変動対策と物価の上昇の関係を示しています。
要因となるのは、脱炭素化に伴って需要と供給のどちらも余裕がなくなり、企業の設備投資が価格に転嫁されていることなどがあるでしょう。
また、脱炭素化を推進するための政策として、温室効果ガスの排出に対して費用を負担することになるため、費用も価格に転嫁されてしまいます。
中国では、ここ数年で現地メーカーが新エネルギー車の製造を拡大したことで、日産自動車をはじめとしたメーカーの主戦場となる市場が縮小しているのです。
日産自動車の失敗といえるのは極端なEVへのシフトであるとみられているため、今回の減益は予測されていたといえます。
売る車がない日産
日産には現在売ることができる車がないとされており、同じ性能のEV車であれば中国BYDの方が安価なので世界でもシェアを伸ばしているのです。
2023年の世界のEV市場のシェアは、米テスラがトップですが、中国のBYDはテスラに続く勢いで成長しています。
各社で新モデルを投入して競争が激しくなる中で、日産や三菱、仏ルノー、米ゼネラル・モーターズなどの上位3陣営がシェアを失うこととなったのです。
現在、各国で政策を転換しているためEV車は世界的普及が困難となっていて、既存の市場では中国が価格競争に勝利してシェアを伸ばしています。
EV車市場は狭く、将来を見通すことができないというのが現状なので、日産自動車はこだわり過ぎたせいで経営不振になったといえるでしょう。
トヨタ自動車では、EV車がブームになったときも自社特有のハイブリッド車は温存し、自社開発の水素エンジン車を加えました。
さらに既存のガソリン車も含めた幅広いラインナップを崩さず、どの分野にも対応可能な状態をキープして他のメーカーとの差別化を図っていたのです。
中国BYDはテスラ以上に躍進しており、プラグインハイブリッド車でも強みを持っていて年間販売数は合計で62%増の302万台となっています。
地球温暖化の対策はかなり前から言われていることですが、急激に極端な対策を行った場合は人々の生活に影響し、経済が破壊される可能性もあるのです。
地球温暖化に大きく関わるのが化石燃料で、石油産出国のアゼルバイジャンでは国際気候変動枠組条約会議が行われました。
前回の会議では、各国が化石燃料から脱却するという方針には合意したものの、どのくらいの期間で脱却するのかは話し合われませんでした。
化石燃料の扱いが以前の動きとは異なり、化石燃料でも二酸化炭素の排出量を抑える技術も開発されてきています。
地球に住む以上温暖化対策は重要なことですが、トランプ氏が大統領に戻ったことで温暖化対策の方法を見直す動きも出てくるでしょう。
まとめ
日産自動車が大幅な減益となったのは、EV車に力を入れる方針が失敗し、世界でEV市場が想定ほど広がらなかったことが要因です。
また、中国BYDがEV車の市場でシェアを広げ、価格競争で負けたことも原因の1つといえます。
地球温暖化対策に疲れた欧州では、エンジン車を全面禁止するという方針を返還しました。
合成燃料のエンジン車は使用可能という方針に切り替えたため、EV車の需要は今後も頭打ちとなるかもしれません。