製造業:輸出製品の海外でのPL事故に備えるには?

PL法では、損害賠償を請求する場合、損害の事実、商品の欠陥の存在、損害と欠陥の因果関係というこの3つが証明できれば、特に製造業者等の不法行為での故意・過失の存在は証明しなくても良いことになっています。

米国のどこで使用されたとしても、製造業者が簡単に判明する機械類では契約上で免責条項を設けていたとして製造業者は被害者が提訴した場合には応訴して責任が無いことを証明するしかありませんので、PL訴訟のリスクを回避することはできないでしょう。

 

米国PL訴訟の特徴
米国の弁護士は成功報酬制で原告を支援する形を行うためPL訴訟頻度が高い傾向にあります。地域住民から無差別に選出された陪審員が参加する陪審裁判制の存在によって原告有利に作用しやすい傾向にもあります。
そのため判決が情緒的で、被告の対応が悪ければ賠償額が莫大になる可能性もあります。相手が外国メーカーであっても直接訴状が送られて答弁書と資料提出を求められ、資料の不備があると敗訴リスクは増大してしまいますので注意が必要です。

 

米国の懲罰的損害賠償制度
懲罰的損害賠償は悪意性が高いと判断された場合に、損害の何十倍もの金額で損害賠償が認められる制度です。
裁判所から求められた反論資料の準備ができていなかった場合など、陪審員の情緒に訴えられてしまうと故意または悪意性があると判定されてしまう可能性もあり、事情に疎い外国製造業者や中小企業は特に注意しなければなりません。

 

日本は懲罰的損害賠償に否定的な姿勢
日本では民事事件の加害者に懲罰的損害賠償を課すと公の秩序を乱すという考え方から、懲罰的損害賠償の法制度は存在しません。
米国裁判所が日本企業に支払を命じた懲罰的損害賠償判決について、日本の最高裁判所では認められなかった判例も過去には存在します。

 

海外PL保険への加入の検討の必要性
企業経営上大きな影響を及ぼすPLリスクについて、ヘッジ手段としてPL保険について検討する必要があります。
PL訴訟に経験の深い米国優良保険会社と提携する保険会社を選択する、もしくは米国優良保険会社に現地輸入業者と共同で付保することなど検討しましょう。
万一米国の裁判所から訴状が届いた場合、保険会社にその書類を提示して対策を検討することが必要になります。

 

海外PL保険に加入している場合の保険会社の対応
訴状が届いた場合には、保険会社は現地での弁護士を選定し、訴状の内容を検討して受けて立つかどうかについて答弁書の提出を準備します。
そして調査や和解交渉等をはじめることになるでしょう。

 

海外PL保険への加入の検討を
産業用製品や原材料、部品、食料品など、外国に輸出される様々な製品について保険の対象とすることが可能です。
日本国内で販売している製品が海外に持ち出されて海外で発生したPL事故について対象となるなど、幅広い部分で補償されますので検討するようにしましょう。