クロスボーダーM&Aのリスクや失敗要因/訴訟リスク

M&A(事業承継・事業拡大・事業撤退)

近年は、海外企業が関わって行われるクロスボーダーM&Aが増えているのですが、M&Aは必ずしも成功するとは限りません。

様々なリスクがあり、失敗する要因も色々とあるのです。

失敗する要因の1つに訴訟リスクがあるのですが、具体的にはどのようなものでしょうか?

クロスボーダーM&Aにおける訴訟リスクについて、解説します。

クロスボーダーM&Aの目的は?

クロスボーダーM&Aは、グローバル展開を望む企業が採る手段の1つで、すぐにでも海外進出をしたい場合に適した方法です。

海外進出をする場合、自社が一から橋頭保を築いて進出するのは、進出先の国でのビジネスのノウハウや拠点、人材を確保する等多くの手間がかかってしまいます。

しかし、進出先の国にある企業を買収することができれば、多くの手間を省いてスムーズにグローバル展開を始めることができるのです。

日本企業が海外の企業を買収する場合は、日本で展開しているマーケットを海外にも広げていくことが目的というケースがあります。

日本国内ではもう隙間がないほど成熟してしまっているマーケットでも、海外であればまだ手が及んでいない事があるのです。

クロスボーダーM&Aで海外の企業を買収すれば、競合他社がいない状態で自社が率先してマーケットを開拓できるかもしれません。

海外では新たな市場となるため、先行者利益を確保することができ以降も多くの利益に期待できるでしょう。

また、クロスボーダーM&Aを行って海外に進出することで、事業展開におけるコストの削減という効果にも期待できるでしょう。

日本の企業が、東南アジアなど物価が安い国に進出した場合は、賃金も日本より安いため人件費というコストを削減することができます。

海外から輸入している原材料がある場合は、輸入元の国に事業拠点を構えることで、購入する手間も輸送のコストも削減できるのです。

税率に関しても、日本より税率が低い場合は事業を展開することで、税金の負担も軽減できます。

買収する企業が自社の持たないノウハウや技術などを持っている場合は、企業が新たな方向性を獲得してさらに発展できるでしょう。

日本では扱っていない新しい製品を開発することもでき、今までの事業に関してもコストを見直すことができるかもしれません。

既に自社で展開しているサービスに、買収した企業が別のサービスを提供することで、シナジー効果が発揮されて新たな事業が生まれることもあるでしょう。

買収した自社にとってはもちろんメリットとなるのですが、買収された企業にとってもメリットとなるのです。

失敗の原因となる訴訟リスクとは?

クロスボーダーM&Aでは、海外に進出することになるため、日本と同じやり方をしていると訴訟を起こされるリスクが考えられます。

日本の場合、罪を犯した場合は警察などが証拠を集め、罪が確定した時点で裁判となり、罰を確定します。

犯罪ではなく、民事裁判の場合は裁判になる前に、まず当事者同士が話し合って交渉をすることが多いでしょう。

双方の希望や条件を出して話し合い、合意を得られれば問題ないのですが、意見が食い違って平行線になってしまったら、初めて裁判を考えます。

裁判の結果、下された判決には基本的に従いますが、従えない場合は控訴や上告などの手続きを経て、さらに上位の裁判所に判断を仰ぐことになるのです。

日本では裁判をなるべく起こさないようにしたいという考え方が一般的ですが、海外では考え方が異なることも多いのです。

例えば、アメリカは訴訟大国と呼ばれるほど訴訟が多く、些細なもめごとでも裁判に持ち込みます。

ドイツはヨーロッパの中で特に訴訟が多い国で、特に多いのが特許権の侵害に関する訴訟です。

海外進出でアメリカへの進出を果たすためにクロスボーダーM&Aを行う場合は、訴訟リスクに気をつけなくてはいけません。

訴訟リスクは、主に従業員や第三者に損害を与えてしまった場合に、損害賠償を請求するために訴訟を起こされるというのが一般的です。

しかし、アメリカの場合は特に損害を被ったというわけではなくても、訴訟を起こされてしまう可能性があります。

アメリカの場合は、責任の所在がわからない場合に複数人を相手として訴訟を起こすこともできるため、より訴訟リスクが高まるのです。

アメリカに進出して訴えられた場合は、他に責任がある企業を正確に把握しておけば、損害賠償で支払う金額を減額できます。

アメリカでは、民事裁判でも懲罰の意味で多額の賠償金を請求されることがあるため、場合によっては倒産の危機に陥ることもあるでしょう。

また、アメリカ以外にも訴訟を起こすことが多い国はあるため、アメリカではないからといって油断はできません。

訴訟リスクへの対策

クロスボーダーM&Aで海外企業を買収する前に、進出先の法律や訴訟に対する考え方などを把握しておくのがおすすめです。

また、どのような内容の訴訟があるのかを把握することができれば、訴訟の原因について想像しやすくなるのです。

万が一に備えて、信頼できる優秀な弁護士を見つけておくことも重要なので、弁護士の評判についても調べておきましょう。

契約上のトラブルであれば、契約書をお互いにチェックして合意事項が明確になっているか確認するべきでしょう。

また、納品した製品の代金が支払われないなど債権に関するトラブルは、取引先の経営状況などをあらかじめ把握しておくことで防ぐことができます。

不動産に関するトラブルも、契約書をチェックして支払い条件や責任などを確認しておくべきでしょう。

トラブルが起こってしまった場合は、訴訟を起こされる前に協議や仲裁などでの解決を目指すのがおすすめです。

まとめ

クロスボーダーM&Aは、海外進出を目指す企業が行うことで海外の企業を買収し、新たに拠点を用意する手間を省きコストも安く済むという方法です。

しかし、海外進出には訴訟リスクがあり、特にアメリカの場合は些細な事でも、訴訟を起こされる可能性があるため、常に備えておくべきでしょう。

アメリカ以外でも訴訟を起こされる可能性は十分にあるため、どの国でもまずは法律などを調べておきましょう。