クロスボーダーM&Aのリスクや失敗要因/労働問題

M&A(事業承継・事業拡大・事業撤退)

近年は、クロスボーダーM&Aという海外企業が加わったM&Aが増えているのですが、当然失敗してしまうこともあります。

失敗する要因や海外進出に伴うリスクは色々とあるのですが、中でも労働問題は重要な失敗の要因です。

クロスボーダーM&Aにおける労働問題とはどのようなものか、解説します。

クロスボーダーM&Aの方法

M&Aは合併や買収によって企業を自社のものとする方法ですが、クロスボーダーM&Aは国をまたいで行われるため、通常のM&Aとは異なる点も数多くあります。

M&Aの方法も異なる点があるのですが、クロスボーダーM&Aの場合はどのような手法を用いることが多いのでしょうか?

海外企業が日本企業に対してM&Aを行うときに用いられる手段として、まずは三角合併があります。

三角合併は、子会社を介して株式交換を行い、吸収合併するという方法で、親会社と子会社、対象となる会社の3社で行うことから三角合併というのです。

従来は、法律で海外企業が日本企業と直接合併することができなかったため、まずは日本に子会社を設立して子会社がM&Aを実行する必要があったのです。

三角合併は、まず海外企業が100%子会社を日本国内に設立し、子会社に自社株を渡します。

買収したい日本企業の株主総会に合併の働きかけをして、承認を得た上で対象企業の株主が有する株を子会社の持つ親会社株と交換するのです。

結果として、海外企業は大正の日本企業を100%子会社として自社で保有することができます。

三角合併は、買い手が現金を必要とせず、自社株の価値で買収ができるという点がメリットです。

しかし、両方の株主の同意が前提として必要となり、株主が株式の交換に応じない限り三角合併はできません。

もう1つはレバレッジドバイアウト(LBO)という方法で、海外の大型M&Aで良く用いられています。

LBOは、買い手が売り手企業の資産価値や将来のキャッシュフローなどの財産を担保にして、負債清証券や銀行借り入れなどのデットを行って資金調達をする買収手法です。

LBOは自己資産が少なくても買収ができるというメリットがあり、投資資金が少なくても大きな利益を得ることができます。

FX等で良く用いられる、レバレッジを効かせた取引をM&Aに持ち込んだような手法で、資金の何倍もの取引ができるのです。

多額の借り入れを行って買収をするため、買収後は利息を返済しなくてはならないのですが、利息は掛金として算入できるため節税効果もあります。

クロスロードM&Aにおける労働問題

クロスロードM&Aでは、買収した企業の人材を継続雇用することが多いのですが、海外に進出した際に直面するのが労働問題です。

労働法は国によって違う

海外進出した日本企業は労働問題に注目していて、労務セミナーなどはすぐに募集が打ち切られるほど多くの人が集まります。

また、労働法の改定があった国に進出している企業からは、改定内容についての情報収集が事前に行われるでしょう。

日経法律事務所では、発効前から原文で内容を把握して日本語訳をし、日系企業内で共有されるといった動きも目立ちます。

さらに、現地の商工会議所は改定内容を詳細に説明するため、セミナーまで開催するという徹底ぶりです。

現地の会計や税務の概要に関しては、海外進出前に調べておく企業が多く、進出後は現地の会計事務所と契約してサポートを受けます。

しかし、労働問題というのは業務を遂行する中で発生していく問題なので、外部機関に相談する時間もないままに即断を求められてしまいます。

海外に進出する日本企業は、事前に労務問題を回避できるよう常にアンテナを張っているのです。

東南アジアは解雇が難しい?

東南アジアは、物価や人件費などのコストの関係で、進出先に選ぶ日本企業が多いのですが、労働問題が多い地域でもあります。

日系企業では、東南アジアにおいて労働契約書と就業規則、賃金テーブルを三種の神器と呼んでいるのですが、反面労務問題のセミナーが開催されることはあまりないのです。

中小機構に相談に来た場合も、労務問題についてはあまり重視していないというケースが珍しくありません。

現地で働きながら問題を実感し、解決しろという企業もまだまだ多いのですが、現地に丸投げする企業ほど伝聞の情報だけで全てを判断してしまうのです。

特に広く信じられているのが、東南アジアでは一度雇用した人材を解雇するのが難しい、という話です。

実は、日本と同じく東南アジアも解雇には敏感で、日本でも不当解雇を訴えて裁判を起こすケースがよく見られます。

日本は、2003年に労働基準法が改正されて、解雇についての規定が盛り込まれたことで、判断基準が難しく一方的な解雇ができないケースも増えているのです。

不当解雇と訴えられた場合の多くは、雇用者と被雇用者の間で和解が成立して終わるのですが、海外では解雇の難しい国といわれています。

どの国にも現地の法令があって、法令に即した労務対策があるため、労務問題の現地調査や法令の調査などをしていれば、イメージだけ先行することはないでしょう。

労務トラブルの防止策

労務対策というのは、起こった時素早く対処するのではなく、起こらないようあらゆることに先回りしておくことです。

転ばぬ先の杖ということわざもあるように、事前に備えておくことで転倒を防ぐコツが大切で、実査に転んで大けがをしてからでは手遅れとなります。

現地法人を設立する前に、最低でも三種の神器は揃えておき、設置する準備を終わらせておく必要があるでしょう。

さらに、現地の駐在員は現地の商習慣についてきちんと理解しておき、会計や税務だけではなく現地の労働法についても学んでおく必要があります。

事前準備を入念に行っておくことで、将来的に現地法人が発展することに繋がっていくのです。

まとめ

クロスロードM&Aを行う上で気を付けたい問題の1つが労働問題で、国によって労働法が異なることで雇用についても様々な違いがあります。

特に、東南アジアは一度雇用すると解雇するのが難しい国だと思われているのですが、実は日本も海外からは同じように見られています。

労働問題に備えておくには、現地の駐在員が商習慣や労働法などをしっかりと理解して、十分な準備をしておくことが重要です。