フリーランスへ仕事を発注する場合の準備と注意点

契約・取引業務(民法・商法等)

2024年11月からフリーランス新法が施行されることとなったのですが、施行後はフリーランスへの仕事の発注が今までと同じようにはできなくなります。

今後、フリーランスに仕事を発注する際は事前に何を準備して、どのような点に注意が必要でしょうか?

フリーランスに仕事を発注する際の準備と注意点について、解説します。

今までのフリーランスとの契約の注意点

今までであれば、フリーランスとの契約においてはどのような点に注意が必要だったのでしょうか?

契約には、契約自由の原則があるため、当事者同士が合意していれば契約は成立していました。

フリーランスに仕事の依頼をする場合は、契約内容に関しては当事者が納得する内容であれば問題はなかったのです。

ただし、法律上の規制や制限が優先されるので、法律に違反するような内容での契約はできません。

また、フリーランスとの契約には独占禁止法が適用され、さらに発注者が資本金1,000万円を超える企業であれば、下請け法も適用されるのです。

2021年に公表されたフリーランスのためのガイドラインにも、契約の適正化に関しての指針が示されています。

ガイドラインでは、正常な商習慣と照らし合わせて不当な契約を結ぶことは独占禁止法によって規制される、とされているのです。

また、契約内容に関しては発注時に書面を交付することが求められ、さらにフリーランスの不利な内容にすることも禁じられています。

フリーランスを保護する枠組みは今までもあり、一定の機能は果たしていたのですが、下請け法に関しては適用される例が限られているなど、不十分な面もあったでしょう。

また、定義がわかりにくい点も多かったことで、フリーランスをさらにしっかりと保護できるような施策が求められていました。

フリーランスは社会保障が不十分な立場なので、しっかりと保護する必要性があったのです。

フリーランス新法成立後の注意点

フリーランスに対する保護をさらに深めるために、2023年にフリーランス新法といわれる法律が成立しており、2024年11月から施行されることが決まっています。

新たに定められた法律の中では、フリーランスとの取引について不正が無いよう、ガイドラインよりも詳細に定められているのです。

特に、対象となる取引や当事者が明確になり、取引を適正に行うために必要なことが明確になり、明示することが明確になったという3点は大きな変化といえます。

対象となる条件

対象となるフリーランスは、業務委託を受託する個人事業主で従業員を雇用していないか、同じく受託する法人事業者で役員や従業員がいないことが条件です。

法人でも個人事業主でも、従業員とみなされる対象がいる場合は、フリーランス新法の対象には含まれません。

対象となる取引は業務委託で、広い範囲での取引が対象となるため、業務委託や外注はほとんど当てはまるといえるでしょう。

業務を委託する事業者は、フリーランスに対して契約内容を明示する義務や、支払日を一定期間に設定する義務などを負うことになります。

明示義務

業務委託の報酬は、業務内容や報酬額などを書面か電磁的方法で明示することが義務付けられていて、業務内容は詳細に示す必要があるのです。

また、フリーランスに責任がないのに給付の受領を拒絶したり、報酬を減額したり、あるいは製品を返品したりすることは禁止されています。

報酬額も不当な額ではないことが義務付けられていて、何かを強制的に購入させたり無理強いしたりすることも禁止されているのです。

中途解約の事前予告義務

個人事業主と6カ月以上の継続契約を結んでいて、契約更新を停止する場合や途中解除する場合は、30日前までに予告しなくてはいけません。

ただし、原因が個人事業主側にある場合や、災害によって解除せざるを得ない場合は必要ないのです。

また、個人事業主側から契約解除などの理由について知りたいといわれた場合は、理由について説明することが義務付けられています。

就業環境の整備

労働者のように、個人事業主に対しても出産や育児、介護への配慮やハラスメント対策などを設けることも内容に盛り込まれています。

委託事業者は、個人事業主に長期間の業務委託をする場合は様々な事情と両立しながら業務に従事できるよう配慮することが義務付けられているのです。

長期間ではなくても、同様の配慮をするよう努力義務も設けられていて、ハラスメント等に関しても相談に応じて適宜対処するよう定められています。

募集情報の表示義務

業務委託先をSNSや広告、クラウドソーシングなどで広く募集する場合は、募集情報を正確で最新の内容にすることが義務付けられるのです。

報酬を本来より高く表示したり、募集を行う企業名を別のものにしたりすることは虚偽表示となり、禁止されています。

また、一部の報酬例であることを明記せずに高額の報酬を必ずもらえるような表示をすることも、禁止です。

新法の施行までに準備しておくこと

新法が施行されるのは2024年11月ですが、施行される前にどのような準備をしておくべきでしょうか?

まず、新しい法律は施行されるまでの間に内容がさらに詳しく決められていくことになるため、情報を収集する必要があります。

フリーランスを活用している事業者は、今後の動向について注目しておき、最新の内容を把握しておかなくてはならないのです。

書式の見直し

取引に使用していた契約書をはじめとした書類も、書式などを見直して明示義務に対応できているかを確認しましょう。

現在の書式では十分に対応できていない場合は、要求される事項に適した書式になるよう見直しが必要でしょう。

フリーランスが育児や介護などに関する要望を申し出た場合にどう対応するかは、事前に決めておかなければ現場が混乱してしまいます。

どのように対応するべきか、一定の運用指針を事前に決めておき、周知しておく必要があるでしょう。

また、相談窓口の利用に関してはフリーランスも対象に含むようにして、フリーランスに対するハラスメントを防止しましょう。

同時に、社内でもハラスメント防止に取り組み、啓発内容に窓口のことも加えておく必要もあります。

まとめ

フリーランスに対する業務委託には、今までも下請け法やガイドラインなどで保護する動きがありました。

しかし、今後フリーランス新法が施行されるようになると今までの内容では不足することとなり、より多くの面で業務を委託する事業者に義務が課されることとなるのです。

事前に変更点などを把握しておき、対応できるように準備しておかなければ、施行された後は混乱に陥ってしまうことになるのです。