近年は、働き方の多様化に伴ってフリーランスとして働く人も増えているのですが、働くうえでは様々なトラブルが起こることもあります。
特に問題となるのは契約に関することで、契約書を交わさず口約束で済ますことも横行していたのです。
フリーランスとの口約束と、今後の変化について解説します。
今までの契約
商取引において、口約束で仕事をするというのははるか昔のことで、現代にはもう残っていない習慣だと思っている人は多いでしょう。
実際に、企業間の取引ではきちんと契約書を交わすのが当然ですが、フリーランスとの契約においては契約書があるとは限りません。
契約書がないということは、信頼関係だけで契約が成り立っている状態で、客観的な証拠は何もない状態です。
実際に、契約する際にトラブルを経験しているフリーランスは全体の約半数で、経験していないフリーランスも半数は口頭で契約を結んでいます。
トラブルになっても契約内容を証明する方法がなく、裁判になると時間と費用がかかるため、泣き寝入りするフリーランスが多いでしょう。
今までは下請け法で契約書を作成するように義務付けられていましたが、発注側とフリーランス側のどちらかが対象に該当しない場合は、法律の対象外になってしまいます。
口約束による被害の実例
フリーランスとして働く人の多くは、クライアントから支払われる報酬が唯一の収入源なので、報酬が得られない場合は生活が成り立たないでしょう。
収入を得られないケースとして、仕事の依頼が少ないというのであれば自身の実力の向上や営業努力が必要となるのですが、仕事をしても報酬がもらえないこともあります。
仕事を引き受ける際は、仕事の内容だけではなく報酬額や支払日なども決めておくのですが、契約書を交わすとは限らないのです。
契約書が無ければ、当然ながら契約した証拠もなく、約束した内容を守ってないこともあり得ます。
例えば、納期を守って仕事をしても、翌月に入金されるはずの報酬が入金されなかったというケースは少なくないのです。
催促して数日後に入金されたものの、以降も遅れはどんどん大きくなり、やがては数ヶ月遅れることもあるかもしれません。
フリーランスとして働く人で、他に収入減が無ければ生活が成り立たず、自身の支払いなども滞ってしまうことがあるでしょう。
特に、近年は動画配信者が増えたことで、動画編集を外注する人も増えていることから、フリーランスとして引き受けることも増えているのですが、口約束が多いのです。
動画配信は収入が安定しないため、収入が少ない月などはフリーランスへの報酬を無視することもあります。
また、契約書が無ければ未払い分を後で支払ってもらえないこともあり、事業者も会社をたたんでいなくなってしまうのです。
依頼を受けた業務に取り組んでいたとき、ある程度進んでから不要になったとキャンセルされて、報酬が支払われないこともあります。
口約束での契約は、よほどの信頼関係がなければかなりの危険を伴うことになるため、きちんと契約書を結ぶようにしましょう。
フリーランス新法による変化
2024年11月からはフリーランス新法という新たな法律が施行されることになるのですが、契約に関してはどのように変化することになるのでしょうか?
対象となる当事者や取引
対象になるのは業務を受託する事業者であり、委託する側の事業者は保護されるのではなく、規制の対象となります。
また、業務委託によって受け取る報酬も保護対象なので、報酬が正当に支払われることを義務付ける法律でもあるのです。
業務委託には様々な種類があるのですが、ほとんどのケースは対象に含まれるため、業務委託全般が対象ともいえます。
また、従業員を雇用している個人事業主は保護対象には含まれず、法人でも事業を1人で行っている場合は対象に含まれるのです。
給付内容その他事項の明示義務
委託事業者は、個人事業主への業務委託の際はきちんと契約書を交わして契約内容を明らかにすることが義務付けられます。
どのような条件で契約して、報酬の額はいくらでいつまでに支払うかなど、第三者が見てもわかるように詳しく表記する必要があるのです。
明示する方法は書面か電磁的方法ですが、書面で交付することを求められた場合は要求に応じる義務があります。
記載が必要なポイントとして、まずは業務を委託する事業者名と受託する個人事業主の名称が正しく記載されている必要があるのです。
業務委託に関して、合意した日付も書面に明記されている必要があり、どのような業務を行うのか具体的に記載されていなければいけません。
業務にあたって、依頼した作業が完了する日程や、業務を提供する日程も明記する必要があり、業務を行う場所についても書かれている必要があるでしょう。
検査が必要な業務であれば、機嫌がきちんと明記されているかも確認する必要があります。
また、報酬に関して金額や期日も記載する必要があり、受け取る方法に関しては現金以外の方法があれば明記しなくてはいけないのです。
書類を作成する場合は、全てのポイントをきちんと満たしているかを確認することで、取引条件が曖昧になるのを防ぎ、業務に取り組むことができるようになります。
もし、書面で確認されていないようであればトラブルが発生するリスクも高くなってしまうので、必ず書面で確認することを要求するべきです。
支払期日の定め
報酬に関しては遅滞なく支払いがされるように定められていて、原則としては給付を受領した日からできるだけ短い期間内に支払うことになります。
特にいつまでに支払うと決めていない場合は業務を遂行した日に支払わなくてはならず、60日を超える支払期限が定められた場合は60日以内となるのです。
業務の再委託に関しても、支払いの遅延を防ぐためにそれぞれの間で支払う報酬の期限が決まっています。
まとめ
フリーランスの契約は、以前から契約書を交わさないで行われることが多かったのですが、契約内容に関して証拠が残らないため、トラブルも起こりやすいのです。
口頭で交わした契約だけで働くフリーランスの中には、報酬の支払いが遅れたり、途中で契約を一方的に打ち切られたりすることもあります。
フリーランス新法では、契約に関して契約書を作成することが義務となったので、今後はトラブルが起こりにくくなるでしょう。