会社は法人ですので、個人と異なり意思決定や行為を単独で行うわけではありません。
会社の業務執行は株主総会の決議で選任された取締役に対して、取締役の職務執行の監査は監査役に委任します。
取締役や監査役が会社や第三者に対して損害賠償を命じられた場合、当然その損害については賠償することになります。
さらに監視義務違反によって、他の取締役や監査役についても連帯責任を追求される可能性もあることを理解しておきましょう。
中小企業の役員に対する損害賠償請求例
中小企業の取締役などが実際に損害賠償を請求されたケースは様々です。例えば次のようなケースがあります。
①新規に事業計画を行っていたが取締役が計画を打ち切った。取引を打診していた取引先は既に設備投資をしていたために多大な損失を被ったケースです。
この場合には新規事業を信用して設備投資を行ったため損失を抱えることになったことから、取締役に賠償金の支払いが命じられることになるでしょう。
②業績不振で会社が倒産し社長は別事業を立ち上げ再起を図ろうと考えていたが、大口取引先は回収不能による売掛債権を抱え、さらに倒産後に取締役のミスで決算書類の誤りが発覚したケースです。
売掛債権は決算書類を信用したことによるものなので、社長は責任を負うため未収債権額と同額の支払が命じられることになるでしょう。
役員が訴えられる相手は取引先だけではない
取締役が訴えられるケースは、取引先や顧客などから従業員の不正行為やミスで損害を被った場合、管理体制を指摘するものなどです。実際には経営者が直接判断していなくても、提訴されています。
それ以外にも労働問題によるトラブルで、会社と取締役が従業員から訴えられる事例も中小企業では多発しています。パワハラや不当解雇、賃金未払いや過重労働など、その原因になるものは様々です。
そして1994年以降の株主代表訴訟の件数は毎年100件を超える勢いで、多い年になると200件を超える場合もあります。株主が会社に代わって取締役を訴える可能性もありますので、様々な訴訟リスクがあると理解しておくことが必要です。
会社役員賠償責任保険(D&O保険)による備えを
取締役などが会社役員としての業務を遂行するにあたり、保険期間中に損害賠償が請求されたことによって被る損害を補償する保険が会社役員賠償責任保険です。
取締役などは給与所得者よりも法律で保護されることが少なく、保険等に加入しておくことが必要になります。
ただし私的な便益を図った場合、悪意な法令違反があった場合などで損害賠償請求された場合には補償されないこともありますので注意しましょう。