労働者を守るための保険
雇用保険は失業保険といわれることもありますが、労働者が何らかの理由により働けなくなって失業した場合、再就職するまでの一定期間に一定の給付を行う保険です。一般的には労働保険として、労災保険の納付と一体のものとして取り扱われます。
雇用保険適用事業所の加入義務
事業所の規模に関係なく個人事業主であっても、週の所定労働時間20時間以上、かつ雇用見込日数31日以上である雇用を行った場合、雇用保険に加入する必要があります。事業所によっては、条件を満たしているのに加入していないケースや数か月経って加入するというケースも見られます。雇用保険加入は事業主の義務であることを認識しておく必要があります。
雇用保険の特徴
雇用保険は失業した際の失業保険料、雇用のための教育訓練、就職活動の費用に充てられる保険です。加入した場合には、労働者の給与から天引きとなり事業主が事業主負担分と合せて納付します。事業主が負担した分については損金もしくは必要経費として計上することができます。
労災保険の特徴
労災保険は失業保険とまとめて労働保険として扱われることが多いですが、雇用保険とは別のものです。労働者が通勤中や勤務中に災害に遭った際に保険金が支給されます。通勤災害や労働災害は、それらの治療費や慰謝料の負担が発生すると多大な金額を背負うことになるため、最悪の場合倒産するという可能性も出てきます。このようなリスクを回避し、最小限に抑えるために補てんする保険です。労災保険はパートなどの短時間就労者やアルバイト勤務であっても原則加入する必要があります。なお、労災保険の保険料は全額損金、もしくは必要経費として計上できます。
加入方法について
雇用保険、労災保険等労働保険の加入手続きは、事業の業種によって異なりますが例外(農林漁業や建設業以外の業種以外)であれば、地域の管轄となっている労働基準監督署に「保険関係成立届」と「労働保険概算・確定保険料申告書」を提出します。その後、管轄の公共職業安定所で雇用保険加入手続を行うという流れです。なお、雇用保険加入手続の際には、労働基準監督署で交付される労働保険番号が必要となります。専門家に依頼しなくても事業主本人で手続が可能ですが、専門家に依頼する場合は独占業務として行うことができる社会保険労務士に依頼しましょう。
未加入の際にはペナルティが発生する
個人事業主でも規模が小さい事業所でも、人を雇用すれば雇用保険の手続きが必要です。労災保険に加入せずに労災事故が発生しても労働者は労災保険から給付を受けることができ、その全額もしくは40%を事業主から徴収、さらに最大2年間遡って保険料が徴収されます。雇用保険には6カ月以下の懲役または30万円以下のという罰金の規定が設けられています。また、労働者が本来であれば受け取ることができた保険給付を受け取れない場合には、損害賠償請求が起きる可能性も否定できません。適用事業所である場合には必ず加入しておくようにしましょう。