中小企業は会社法よりも民法と関わるケースが多い
株式会社だから関わりが高い法律は会社法とは限りません。会社法に規定されているのは、株式、会社の存否、機関などに関係する規定がほとんどです。なぜなら会社法では経営と所有が分離した大企業を想定しており、中小企業やベンチャー企業などでは分離されていないことから所有者と経営者の利害調整は必要ないでしょう。
会社法の中には中小企業なども関係する規定は当然あります。ただ会計実務については税理士へ依頼することが多いでしょうし、資金調達についても金融機関からの間接金融が中心となれば会社法が日々の業務で関係することはないかもしれません。中小企業などで発生する法律問題は会社内部事情より、顧客や仕入先、融資先、従業員との関係などです。このように外部との関係を規定している法律は会社法ではなく民法になります。
目に見えない権利であるが故の紛争
トラブルに発展する多くは、民法で定めのある債権についての争いがほとんどです。双方の約束によって発生する請求権のことを債権といいますが、その種類も様々で売掛、手形、貸付、労働、保証など形を変えて日々発生しています。
契約書を作成せずに口頭で契約した場合でも債権は成立してしまいます。この契約形態が危険を生む原因となっており、目に見えない権利という部分で債権自体の存否や内容について紛争となるケースが多く見られます。
トラブルや争いを回避するために
債権が発生しているかどうかを目に見える状況にする方法として、文書に残すという方法があります。契約書を作成することで誰と誰が、いつどこで、どのような条件のもとで請求を行うことができるかということを明確に記載しておけば、契約内容を見るだけで債権の請求権利の有無を確認することができます。
債権争いを避けるためには
事業活動において日々様々な場面で発生する債権は、口約束ではなく契約書を作成して締結することにより会社の利益を守ることにも繋がります。また、契約書に記しておくことでその内容を改めて確認することもできます。あとで大きな揉め事にならないように、双方が作成段階で納得のできる内容や取り決めにすることも可能でしょう。契約書を作成せずに契約を交わし、いざ訴訟になれば債権の存在や内容を証明する必要があります。紛争を未然に防ぐ意味でも必ず作成するようにしましょう。
民法が事業承継の邪魔をすることも
企業を運営していれば事業を承継するという問題も発生するでしょう。事業承継が起きた場合、法律上で戦うのは民法です。後継者に自社の株式を移行させたくても、民法ではそのことに配慮ができておらず、子供が複数いれば皆平等であるため財産も平等に分配したほうが良いという考えです。事業承継が家族の争いにならないためにも、現オーナーが元気な時に続財産目録の作成を行い、後継者以外にも同等に財産を分配するという取り決めを行っておくことが望ましいでしょう。