会社の重要な立場である取締役などの役職に就いている人が、会社に不利益を与えるような行為をした際には損害賠償請求をされることがあります。
しかし、そういった請求には時効が定められているものです。
この場合、10年経つと時効といわれているのですが、その根拠とはどういったところにあるのでしょうか?
どんな時に損害賠償を請求される?
取締役など、会社において重要な役職に就いている場合は、会社の運営に対して責任があります。
そのため、会社に不利益となるような行為をした場合には、個人に対して損害賠償請求をされることもあるのです。
その不利益になる行為というのは、どのような場合に当てはまるのでしょうか?
これまでにあった事例などを参考にして、損害賠償の請求対象となるのはどのような場合かを考えてみましょう。
取締役が損害賠償責任を負うケースとしては、会社法によってその職務を行う際に悪意もしくは重大な過失があった場合と定められています。
ただし、その請求は会社もしくは株主のどちらかによって行われることとなり、二重の責任を負うことがないように定められています。
当てはまるケースとして主なものは、取締役が法令に違反した行為を行っていた場合や、会社としての取引の連帯保証人となっていた場合、もしくは取締役が会社に対して注意義務を怠ったと認められた場合などがあります。
これは、たとえ名目上だけの取締役だった場合でも適用されることがあります。
具体的な例としては、手形を落とせる見通しがないのに手形を振り出したというケースや、代表取締役が代金を支払える見込みがないのに商品を買い入れるのを取締役が注意せず、その結果売主に代金分の損害を与えたというケースがあります。
会社としての責任をそのまま取締役などに問うことはありませんが、取締役がその責務を果たさなかった結果として会社の損害が生じた場合には責任を追及されることとなります。
なぜ10年なのか?
そもそも、取締役に対する損害賠償請求は何故、10年とされているのでしょうか?
その根拠について、考えてみましょう。
この請求については、民法で定められているものになりますが、民法上ではその期間が10年とされていたものの、1993年に改正される前の商法では5年と解釈されていたことで、様々な学説がありました。
しかし、2008年の北海道拓殖銀行の元取締役に対する損害賠償を請求する裁判において、最高裁の判断で消滅時効が10年とはっきり示されたことによって、取締役に対する損害賠償請求の消滅時効は10年というのが共通した認識となったのです。
ただし、この場合はあくまでも取締役の職務違反行為に当たると判断されたために10年を消滅時効として判断されたものであり、商行為による債務については改正前商法に基づき、5年を時効とする場合もあるでしょう。
現状、適用される可能性が高いのは会社法であり、改正前商法がそのまま適用されることはまずないでしょう。
そのため、基本的に時効は10年と思っていて間違いはないと思います。
会社法の施行によって、これまでよりも役員等の責任はより重大なものになっています。
たとえ従業員の行為が原因であっても、それを管理する立場にある役員等の責任は皆無とは言い難いでしょう。
自分で責任を問われるような行為をしないというのはもちろんのこと、従業員の行為による責任を追及されることもないように、従業員教育に尽力して会社をつつがなく運営していけるようにしましょう。
まとめ
取締役が会社に損害を与えるような行為をした場合、その責任を追及して損害賠償を請求する際の時効にはいくつかの解釈があったものの、過去の裁判において最高裁判所が判決を下した10年を消滅時効とするのが基本となっています。
取締役などの役員は、会社をまとめる立場にあることから会社に対して注意義務があり、それに違反した場合は責任を問われる可能性が高いでしょう。
多額の損害賠償を請求されないように、まずは従業員教育から徹底していきましょう。