取締役の善管注意義務とは?従業員とは違う重い責任について

日本の企業では従業員から取締役へと昇進する例が多く見られます。

従業員と取締役を兼務する使用人兼取締役なども多く存在するため、従業員の延長線として考えてしまうこともあるでしょう。

しかし実際は一従業員と取締役は責任の大きさが異なっており、取締役に課せられる責任に善管注意義務というものがあります。

取締役の善管注意義務とは

株式会社の取締役は会社から経営の委任を受けていると考えられているため、関係上民法の委任に関する規定が適用されることになります。

民法では、委任を受けた人に対して、善良な管理者の注意を持って委任事務を処理する義務を負うことを定めていますが、これが「善管注意義務」です。

役員という立場に合う責任の重さ

善管注意義務は会社経営に携わる者として期待されるレベルの注意義務です。

そのため一従業員とは違った取締役としての地位や職務に値する高度な注意力が要求されることになります。

善管注意義務に違反した場合

取締役が善管注意義務に違反したことで会社に損害を与えた場合、違反した取締役は会社に対して賠償責任を負うことになります。

典型的な例として放漫経営などが挙げられますが、善管注意義務違反として問われるのは会社として行うべきことを怠った不作為などが該当すると言えるでしょう。

取締役同士が監視し合う必要がある

実際にトラブルが起きた場合に問題になることで多く挙げられるのは、取締役が他取締役の不適切な行為について監督しなかった監視義務違反についてです。

他の取締役を監視し、そこで不適切な行為があれば取締役会を招集して業務執行の適正化を図るといった義務もあります。

経営判断の原則について

取締役が経営上での判断を誤ったことで損失を招いた場合も善管注意義務違反が問題になります。

取締役が会社の利益のために行動していたのであれば、の行動が失敗だったとしても失敗自体を善管注意義務違反として問われるわけではありません。

しかしその行動が合理的な根拠と判断に基づいているかがポイントとなり、その判断はその業界で通常の経営者レベルを基準にして判断されます。

取締役のその他の義務

取締役には他にも義務があり、自分や第三者のために現在の事業と同様の商取引を行うことを禁止する「競業避止義務」、自分や第三者のために取引し会社に不利益を与えてはいけない「利益相反取引禁止義務」などがあります。

どの義務に違反した場合で賠償責任を負うことになります。

従業員とは違った責任の重さの理解を

取締役の責任や義務は従業員とは異なっているため、従業員から取締役へと昇格した人などはただの従業員の延長だと考えることなく、取締役の守るべき義務や責任についてしっかりと理解しておく必要があるでしょう。