株主代表訴訟に備える保険の保険料は誰が負担する?

会社の取締役と監査役等は職務執行にあたって損害を生じさせた場合、損害賠償責任を負う必要がでてくる場合があります。

会社が損害を生じさせた役員に対して賠償請求を行う場合もありますが、株主が役員に代わって賠償請求することも可能で、これを株主代表訴訟といいます。

訴状に添付する必要のなる印紙税額が低いことで、近年増加の一途をたどっている訴訟です。

株主代表訴訟の備えになる保険

会社役員は責任負担の軽減のために「会社役員損害賠償責任保険」に加入することが増えています。

会社役員賠償責任保険会社は、取締役が相手の損害賠償請求訴訟への備えや、取締役自身が賠償責任に対して備えるために検討する保険です。

保険に加入していても取締役の故意による犯罪行為等は保険の対象にはなりません。

この保険は、対象になる行為の範囲、さらには保険料について会社で負担すべき分があるのかが問題です。

保険料を会社が負担することの問題点

会社が保険料を役員のために負担するのは一定の財産上の利益を与える側面としても捉えられます。

これは会社法上で禁止されている利益供与、もしくは利益相反取引に該当する可能性があると考えられます。

さらに会社に損害を生じさせたのに会社の負担で損害が補償されるのは、違法行為を役員に促すことにならないかとも考えられます。

税務上の問題

会社役員損害賠償責任保険の契約は、第三者に対する責任の補償が目的の普通保険約款、そして株主代表訴訟による責任の補償が目的の株主代表訴訟補償特約に分類されています。

株主代表訴訟補填特約については保険料を会社が負担する場合には、役員が給与を受け取ったとみなし給与課税が行われてきました。

しかし一般的には会社で、悪意のある行為があった場合には保険は適用しないという免責規定が設けられていることが多いため給与課税は行うべきではないとも考えられます。

経産省の公表は?

経産省は会社法上の問題は利益相反取引に関する手続きに配慮して、取締役会の承認、車外取締役全員の同意、社外取締役が構成員(過半数)である委員会の同意などが得られれば会社法上の問題は生じないということを明確にしています。

税務上の問題は国税庁の照会を経ることで一定の手続きを経れば株主代表訴訟補償特約でも給与課税はしないことが公表されました。

これによって先に述べた会社が保険料を負担することで生じる会社法上と税務上の問題を解決できることになり、会社役員に就任しやすい状況に繋がります。

保険料負担の問題がクリアしたことによって

様々な問題があった株主代表訴訟の保険料について、経産省が公表を行い解決されることとなりました。

これによって役員就任はこれまでよりも行いやすくなったと言えるでしょう。