コロナ禍における労務管理を考える

法務リスク

コロナ禍の状況では、イレギュラーなことが多発しやすいです。
企業経営においては、労務管理が実態に合わなくなったことが挙げられます。
コロナ禍の状況がまだ続く中、労務管理ではどのようなことが求められるのでしょうか?
今回は、労務管理を考える上でのポイントを、いくつかご説明します。

コロナ禍における労務管理で考えるべき3つのポイント

従来までとは違い、コロナ禍の影響で働き方により柔軟性が求められるようになりました。
その際の労務管理で、考えるべきポイントは以下の通りになります。

①テレワークの環境整備関連
②自転車通勤の導入の可否
③従業員を守るための対応

上記の内容は、従来から議論されていました。
しかし、コロナ禍によって強制的な形でもって実現している企業も少なくありません。
他の企業の動向を知る意味でも、内容を確認してみましょう。

①テレワークの環境整備関連

テレワークが普及しつつありますが、導入時の様子を思い出してみて下さい。
労務管理はどうするのか、何をもって仕事をしていたと判断するのか?
その疑問を解消しながら、企業では導入を進めていたはずです。
テレワークの環境整備を行うにあたり、以下の点が重要視されました。

・労働時間の管理として「事業場外みなし労働時間制」を導入すべきか?
・通勤が無くなると「通勤費」はどうなるのか?

特にテレワークを導入する際、職場以外での労働時間の証明や管理が難しくなることは免れません。
一定の条件はありますが、常時連絡を取ることが難しい場合でも、仕事ができるような仕組みが整えられたことになります。
従業員の就業時間の管理は、多くの企業で抱えている課題です。
それをクリアできるとなると、少し導入へのハードルも下がるでしょう。

さらに、通勤が無くなる場合には、一定額の通勤費が不要になります。
しかし、通勤しないからと言って、すぐに打ち切ってしまうのはいけません。
支給のルールについて、従業員からの理解が得られなければ、不満が生じる可能性があります。
実費分の支給等、方法は複数ありますから、従業員の不利になるような決定だけは避けるようにして下さい。

②自転車通勤の導入の可否

次に、従業員の通勤事情によっては、自転車通勤を視野に入れる人も出てきます。
自転車は、電車やバスのような密集する移動手段と違いますから、通勤手段として取り入れている人が増えているのです。
しかし、自転車通勤を許容する場合には、企業側も少し準備しなければなりません。

例えば、自転車を停めるための駐輪スペースの確保が挙げられます。
このことは、自治体の条例の影響を受けますから、従業員個人に任せてはいけません。
企業側も、自転車通勤を認めるにあたり、それに対する義務を果たさなければならないのです。

また、通勤に利用する自転車が保険に加入しているかどうかも、企業側のリスク回避のポイントになります。
近年は、自治体でも自転車保険の加入を義務付ける条例が増えてますので、企業側としても注意しなければなりません。
思わぬ形で大きなトラブルに巻き込まれないためにも、事前にできる手段は行っておきましょう。

③従業員を守るための対応

最後のポイントは、従業員の雇用を守るための対応をしているかどうかです。
業種によっては休業や時短営業の影響で、従業員の収入が減ってしまった現状があります。
その際に、給付金や助成金の活用をしたでしょうか?
単なる休業と、制度を利用し収入が守られた上での休業は、従業員にとって大きく意味が違ってきます。

また、本業での収入が減った際に、これをカバーする手段があるかどうかもポイントになります。
近年は、副業や兼業が一般的になりつつありますが、まだまだ許可しない企業も少なくありません。
しかし、コロナ禍の状況が長引くにつれ、収入を少しでも確保するためには必須の手段です。
それを全く認めないというのは、従業員の生活に影響することを回避できません。

従って、条件付きや申告制の形を取って、副業を認めている企業が増えつつあります。
従業員の生活を守るための配慮や努力は、これからも安心して働いてもらうために必要な視点だと考えましょう。

コロナ禍は柔軟な働き方を考える転換期

最後にご説明したい労務管理のポイントは、働き方に関することです。
従来の働き方では、感染リスクを抑えられないということが明らかです。
その結果、企業では様々な取り組みを行ったり、実験的に導入してみたりしていることでしょう。
例えば、出勤する場合でも、ローテーション出勤や時差出勤を導入することが挙げられます。

感染リスクを小さくするための方法は、どのような事情の従業員にとってもプラスに働きます。
従来の場合だと、イレギュラーな勤務形態が認められていたのは、病気や家庭の事情等、通常の働き方が困難な人でした。
マイノリティ的な働き方と捉えられていたのです。

ですが、コロナ禍の現在において、従来通りの働き方は感染リスクに繋がるため、多数派の価値観が揺らいでいると言えるでしょう。
もちろん、柔軟な働き方が自分には合わないと考える従業員もいるかもしれません。
しかし、そもそもの働き方の選択肢が複数あるのとないのでは、自分に合った働き方が何であるのか分かりません。

従って、海外のように自由に選択できる環境が整っていなくても、まず制度を整備して、スタートラインに立つことが大切になります。
そのきっかけが、コロナだったというだけなのです。
このような視点は、従来の働き方のままだと中々見えてきません。

「今までと違う」ということに、日本人は特に敏感になりやすいものです。
しかし、コロナ禍の状況がまだ落ち着いていないからこそ、現在の環境でも業務ができるようにしなければなりません。
このような事情を踏まえると、働き方の見直しは企業経営に欠かせない項目になります。
難しい課題ではありますが、ここで経営者の手腕が試されるでしょう。
労務管理の見直しは、今後の経営や社内環境にもメリットがあると考えて取り組むべきです。

まとめ

今回は、コロナ禍における労務管理について考えてみました。
いくつかポイントをご説明しましたが、どれも感染リスクをさけるためには大切な取り組みになります。
また、企業経営にとって従業員の生活状況を軽視するのはNGですから、副業の導入も生活を守る手段の一つになります。
柔軟な働き方は、全ての従業員に選択肢が与えられるようにすることが、最低限、今の企業に求められることになるでしょう。