アルバイトの賃金は、時給で計算するのが当たり前だと思っていませんか?
実は、労働基準法では1分単位で計算するのが原則となっているのです。
しかし、1分単位と言われてもどうしていいかわからない経営者も多いでしょう。
端数はどうするのかなど、詳しく解説します。
労働基準法での考え方
アルバイトの賃金というのは、基本的に時給で考えることが多いでしょう。
しかし、労働基準法ではどのように考えられているのかはご存じでしょうか?
実は、賃金全額払いの原則というものがあるので、それに即して考えられているのです。
この原則は、労働基準法24条第1項で定められているものです。
そこでは、賃金については直接労働者に通貨で全額を支払わなくてはならない、とされているのです。
これを、賃金全額払いの原則や直接払いの原則、通貨払いの法則などと呼んでいます。
実は、賃金の1分単位での支払いについては、ここで明記されているわけではありません。
しかし、「全額」という部分が1分単位でも切り捨てることなく計算するということを示しているのです。
ちなみに、その計算においては労働者にとって有利になるものであれば問題はありません。
そのため、例えば1時間未満の労働時間を1時間として計算してもいいのです。
しかし、実際に賃金を計算する際は1分単位での計算が実務とは異なってしまうことがあります。
そういった場合は例外的な端数処理も認められていますが、その際には注意しなくてはいけない点もあります。
まず、労働者側が自分の都合で遅刻や早退、もしくは欠勤した場合の賃金ですが、賃金については「ノーワーク・ノーペイの原則」というものがあります。
これは、働いていない時間については賃金を支払わなくても違法とはならない、というものです。
そのため、遅刻をした時間や早退した時間、欠席した日の賃金については、会社側に支払う義務はないのです。
この原則はそれ以外にも、介護休業や自然災害など不可抗力によって休業したケース、産前産後休養などにも適用されます。
この場合、賃金は1分単位でカットすることができます。
そのため、本来は8時間労働のはずなのに20分遅刻した場合は、7時間40分の労働に該当する賃金を支払うことになります。
この原則の例外となるものとして、年次有給休暇を使用した場合や会社の命令によって自宅待機、もしくは休業をした場合があります。
その場合、労働はしていないのですが一定の賃金を支払う必要があるのです。
また、本来であれば賃金を計算する場合は、1円単位まで細かく計算するべきでしょう。
しかし、計算の実務上では端数処理が認められています。
その場合、100円未満の端数については50円以上100円未満の場合は100円に切り上げ、それより少ない場合は切り捨てとすることも認められているのです。
これは、給与額から社会保険料を控除したうえで端数が出ている場合の処理です。
また、賃金のうち100円単位までの部分は、翌月に繰り越すという処置も認められています。
そうすることで、常に1,000円単位で支払うようにすることも可能なのです。
割増賃金には注意が必要
賃金関係で問題が起こりやすく、注意が必要なのが割増賃金です。
割増賃金は、通常の賃金よりも多くの賃金が支払われるものであり、残業などの時間外労働や休日・深夜の労働などが該当します。
この場合の労働時間も、原則に従うのであれば1分単位で計算していかなくてはいけません。
しかし、厚生労働省から1988年に通達された内容によれば、原則とは異なる計算をすることになるのです。
その通達によると、割増賃金を1賃金計算期間の通算で計算する場合、30分未満は切り捨てとして、それ以上であれば1時間働いたものとして切り上げることも可能となっているのです。
これに従う場合、例えば1カ月の残業時間が20時間42分だった場合は、21時間とします。
しかし、20時間26分なら切り捨てとなり、20時間となるのです。
また、割増賃金についてはその種類によって、基本的な割増率が定められています。
例えば、月60時間までの時間外労働に関しては、1.25倍が基本となります。
しかし、60時間を超えた分については1.5倍が基本となっています。
そのほかに、深夜労働は1.25倍、休日の出勤については1.35倍となっていて、さらに時間外労働や深夜労働が重複する部分は1倍を超えた部分を加算することになります。
例えば、60時間を超える時間外労働が深夜の場合はそれぞれ1.5倍と1.25倍なので、合計で1.75倍として計算することになるのです。
ただし、残業時間については会社が指示したことで時間外労働をした場合のみ認められます。
通常は週40時間か1日8時間を超えた労働が時間外労働となるのですが、一部の職業では週44時間を超えた分が時間外労働となります。
また、割増計算については企業規模によって最低の倍率が異なることもあります。
2023年3月末まで、資本金5000万円以下か常時使用している労働者が50人以下の小売業や資本金1億円以下、労働者100人以下の卸売業などでは、最低が1.25倍になるのです。
賃金の計算では、どうしても1円未満の部分も出てくるでしょう。
1円未満の賃金では、50銭未満であれば切り捨て、50銭以上1円未満の場合は切り上げとして運用することが認められています。
これは、基礎賃金や割増賃金を計算する際の運用です。
しかし、1カ月の割増賃金の総額を計算した際に端数が出てしまった場合でも、これと同様に運用することが認められています。
労働基準法では、賃金についてこのようなことが定められているのです。
切り捨てなどについては、基本的に労働者が損をすることがないように定められています。
適用する場合は、計算を間違えないよう注意しましょう。
まとめ
アルバイトの賃金を示す場合は主に時給で提示しますが、実際に計算する場合は1分単位となります。
しかし、その代わりに遅刻や早退、欠勤などで賃金が発生しなくなる場合も分単位で計算することになります。
5分の遅刻、15分の残業など細かい単位でも、無視せずにしっかりと計算するようにしましょう。
端数は、切り上げなどができないケースとできるケースを区別するように気を付けてください。