2021年5月に、長引くコロナ禍によって弱った日本の経済の立て直しのため、銀行法などが改正されました。
それによって、銀行サービスの改革が進むと言われているのですが、改正によってどのような改革が可能となったのでしょうか?
改正のポイントと、それによって変わる銀行サービスについて解説します。
金融関連改正法のポイント
地域金融機関の経営環境には、構造的な課題がいくつもありました。
生産年齢の人口が減少したことや資金の需要が低下したこと、さらに異業種から金融業界への参入が相次いだことで競争が激化したことなど、コロナ禍以前から指摘されていた問題が多いのです。
その状況でさらに新型コロナウイルスの感染拡大が起こったことで、地域金融機関の営業基盤である地域企業では売り上げの減少やサプライチェーンの再構築、生活様式の非対面移行などがあり、それに適応するためのデジタル化など様々な課題を抱えることとなったのです。
地域金融機関は地域経済の要なので、持続可能なビジネスモデルを構築しながら地域課題を解決するための取り組みを行うことができるように、銀行法が改正されました。
これによって、業務範囲や出資に関する規制なども見直されることになったのです。
変更された点として、まず銀行等本体の業務範囲がどれだけ拡大されたのでしょうか?
元々銀行等には他業リスクの排除などの観点から、他業禁止という規制が課されていました。
元々行うことができた業務は、預金などの受け入れや資金の貸し付けなどの固有業務、付随業務、他業証券業務、法定業務などに限られていたのです。
今回の改正によって、付随業務の1つとして地域活性化等業務も追加されることになりました。
2016年の銀行法改正では、ある程度会社を子会社や兄弟会社などにできるようになっていました。
その制度は、これまでも多くの地域銀行で企業などへの出資、あるいは新規設立などによって活用されてきています。
しかし、その一方で地域商社業務を行う際の製造・加工の制約や在庫保有などに制限がありました。
今回の改正では、定義が追加されています。
それによって、銀行業高度化等会社の業務範囲の外縁が拡張されています。
これまではあまり見られなかった業務のうち、地域の持続化可能性に資する業務に取り組む企業や在庫を保有する地域商社などを新たに設立、もしくは子会社化することができるようになっています。
また、金融機関のうち信用金庫や信用組合などの共同組織金融機関ではこれまで、銀行とは違ってこういった企業を子会社化することは認められていなかったのですが、今回の改正によって子会社化できるようになっています。
この会社の認可についても、認可基準が緩和され認可が必要とされる場面についても限定されるようになっています。
そのため、これまで以上に設立や出資を迅速に行うことができるようになっています。
出資について、以前は一部のベンチャーキャピタルなどの投資専門子会社を通じて出資した場合を除き、基準議決権数が出資上限となっていました。
例外としては、ベンチャービジネス会社や事業再生会社、事業継承会社、地域活性化事業会社について投資専門会社経由での出資であれば、基準議決権数を超えて出資することも認められていたのです。
改正では、投資専門子会社を通じて出資する際、大幅に規制緩和がされることとなりました。
それにより、銀行等の地域企業に対してのエクイティ出資の選択肢が拡大されることとなったのです。
これまでであれば、投資専門子会社の業務範囲は出融資に限られていました。
しかし、今回の改正で出融資先へのコンサルティング業務、並びにマッチング業務なども可能となったのです。
これ以外にも、様々な規制が撤廃・緩和されています。
それによって、共通・重複業務のうち軽易な後有無は認可が不要となったので、合理化・効率化にも迅速的に取り組むことが可能となりました。
銀行サービスの改革
こういった改正によって、銀行サービスはこれまでならできなかったことも色々とできるようになったため、様々な改革が生じています。
どのような点が変わったのか、解説します。
まず、経営相談等業務ができるようになりました。
例えば、取引先企業に限らず地域企業に対して、経営戦略や事業転換、事業承継、デジタル化などに関してのコンサルティング業務、並びにビジネスマッチング業務、そしてその業務に関連する事務受諾などの業務が可能になっています。
取引先企業からの相談を受け、その企業の人材ニーズを把握して人材を派遣することも可能となります。
登録型人材派遣に限定されているので、派遣人材の職種の制限はないのですが無期雇用契約の派遣労働者を雇用することはできません。
デジタル化を検討している地域企業に対しては、開発・作成したシステム・プログラムを有償提供することが可能となりました。
その業務によって提供するシステム等には、種類や銀行等による利用の有無について制限はありません。
そのため、銀行では画一的なシステム・プログラムを提供する必要はありません。
提供先のニーズや業務などに適合するよう、システムやプログラムを開発・作成して提供することも可能となるのです。
また、これまで銀行等が広告業務を行う場合は付随業務の解釈として行うことができたのですが、改正によって広告業務を行うことができると明文化され、経営資源の活用に関する要件が監督指針などで解釈を明確にしたため、地域企業へのPR支援のための広告業務はこれまでよりも行いやすくなっています。
地元に住む高齢者本人、もしくはその家族との間で本人の同意を得たうえで当該高齢者との間に見守りサービスの契約を締結し、その自宅を定期的、もしくは連絡を受けた際に巡回訪問して、家族にその結果を報告するサービスを有償で提供することも可能です。
これまでの業務の枠を大きく超えたこともできるようになり、地域活性化業務なども可能となったことで、銀行が保有する経営資源もこれまで以上に活用できるようになった、と言えるでしょう。
まとめ
銀行法改正は、コロナかで弱っている日本国内の経済を活性化させることを目的としたもので、地域金融機関はこれまでできなかった様々な事業も行うことが可能となりました。
これが地域の活性化にもつながり、広く経済を立て直すことができるようになるでしょう。
地域金融機関の中には経営統合や再編などを余儀なくされているところもありますが、この改正で新たなサービスを提供して独自の財源を得られる方法も増え、経営を持ち直すところも増えるのではないでしょうか。