為替変動が及ぼす経営リスク

カントリーリスク

為替は複数の通貨の取引における交換レートですが、通貨の取引は世界中でいつでも行われているため、為替も常に変動しています。

為替変動は通貨の交換以外に関係ないと思われることもありますが、経営においてリスクとなることもあるのです。

為替変動が経営にどのようなリスクを及ぼすのか、解説します。

為替変動はなぜ起こるのか

為替というのは、取引形態の一種であり、古くは江戸時代に為替手形という支払い証書が発行されたのが始まりです。

現在、銀行取引で行われている振込や口座振替も、為替取引の一種であり、国内で行われる場合は内国為替と呼ばれています。

一方、世界中で異なる通貨間での取引で行われる為替取引は外国為替取引といい、金銭の支払いは多くの場合、外国為替を利用して行われています。

外国為替の特徴は、通貨を交換するという工程を挟むことで、通貨を交換する市場を外国為替市場というのです。

また、通貨にはそれぞれ交換レートが設定されているのですが、レートのことを為替相場といいます。

為替相場は常に変動しているため、同じレートで交換できるとは限らず、レートの変動で利益を得ることもあれば損失を被ることもあるでしょう。

為替相場の変動によって生じるリスクは為替リスクというのですが、リスクは損失のことばかりではなく、不確実という意味で使用されています。

為替リスクは、外貨による取引を行う場合は必ず生じることになり、国や世界経済の状況によっては大きく変動してしまうこともあるでしょう。

海外取引の場合は常にリスクが含まれているため、リスクヘッジをしたうえで取引を進める必要があります。

為替リスクには、3つのリスクがあるのですが、具体的にはどのようなリスクなのでしょうか?

1つ目は換算リスクといい、為替変動で外貨のまま保有している資産や負債の価値が変動し、増減してしまうことをいいます。

処分しない限りは損益として計上されませんが、含み益や含み損になってしまうため、常に価値がどうなっているかを把握しておく必要があるのです。

2つ目は取引リスクといって、相場が変動したことで取引時から決済時までの間に金額が変わってしまうことをいいます。
契約日と決済日が異なるため、決済時には想定していた金額から損益が出てしまう可能性があるのです。

3つ目は経済性リスクといい、相場が変動して企業の生産構造や価格競争力に影響が出てしまうことをいいます。

競争力や生産性にも影響があるため、事業自体に大きく影響して事業を撤退することになる可能性もあるのです。

為替リスクには、円高、円安の仕組みが大きく関わっているため、どのような仕組みになっているのかを必ず把握しておきましょう。

円高は、日本円の価値が外国通貨に対して高まることをいい、円安は日本円の価値が下がることです。

1ドルを何円で交換できるかというレートで、円が少なければ円高、多ければ円安となります。

どちらもメリットとデメリットがあり、円安だからダメ、円高になればいいというわけではないのです。

円高になった場合のメリットとしては、海外から安く購入することができるという点で、原材料などを輸入している場合は仕入れ価格が安くなるでしょう。

しかし、海外に輸出している企業は受け取る円が少なくなってしまい利益が減少するというデメリットがあり、価格競争にも負けてしまいます。

円安は円高の反対で、海外に輸出している企業は受け取る円が増え、価格競争にも強くなるのです。

しかし、輸入しているものは高くなってしまい、海外製品を購入するのが難しくなり、原材料などを輸入している場合は国内での販売価格も高くなります。

企業経営にはどのような影響がある?

為替が変動すると、日本の企業にはどのような影響があるのか、具体的な影響について解説します。

円安になると、輸出企業にとってはメリットとなり、日本製品を海外で安く販売できるようになるため、価格競争に有利となるのです。

日本からは、海外に自動車や精密機械、電子機器などの製品が輸出されているため、関連企業は円安になると大きな恩恵があります。

また、海外に拠点がある場合は現地で収益を得て円に換算できるため、収益も多くなるでしょう。

しかし、円安になると輸入コストは増加してしまい、海外から原材料などを輸入している場合は仕入れ価格が高くなってしまうため、デメリットになります。

円高になった場合は、輸出企業にとっては競争力が低下してしまうことになり、海外で販売する日本製品の価格が高くなってしまうでしょう。

利益を得るために価格を上げると、海外での販売が減少してしまうため、輸出量が減少して収益が悪化したうえ、顧客を失うことがあります。

しかし、輸入品の価格は下がるので、海外から原材料などを輸入する企業にとってはコスト削減などのメリットがあるのです。

為替変動への備え

海外の企業と取引する場合は、最初に契約を結び、製品を納めて代金を回収するため、為替が変動してしまう可能性が高くなります。

また、外貨のまま保有している資産が多い場合は、為替変動で大きく影響を受けてしまうことになるでしょう。

外貨での取引があるのであれば、企業経営をする上で為替リスクヘッジは必須といえるでしょう。

具体的に、どのようにして為替リスクヘッジをすればいいのかというと、まずは先物為替予約による取引があります。

先物為替予約というのは、現時点で決めて置いた価格で将来の決められた期日や期間に売買すると約束しておく取引のことです。

一度予約してしまえば、取り消しや変更などは原則できないため、期日になれば必ず受け渡す義務が生じることとなります。

先物為替予約を利用すると、為替メリットを失ってしまう可能性はあるものの、利益確定が早くなるのです。

通貨オプションは、通貨を一定期間に、事前の取り決め通りの為替レートで購入、もしくは売却できるという権利のことをいいます。

購入する権利はコール・オプション、売却する権利はプット・オプションといい、通貨オプション取引は通貨オプションを売却、もしくは購入する取引です。

先物取引の場合は売買契約ですが、通貨オプションは売買の権利だけを購入することになります。

主に銀行や企業間で行われる取引ですが、輸出入業者が安全性を確保するために活用しているケースもあります。

また、円建てで取引ができれば何の問題もないのですが、代わりに取引先が為替リスクを負うことになるでしょう。

相手が為替リスクを受け入れるだけのメリットが無ければ、断られてしまうかもしれないため、しっかりと交渉する必要があるのです。

他にもいくつかの方法があるので、取引内容や契約などを考慮したうえで、適切な方法を選びましょう。

まとめ

通貨の取引における交換レートを示す為替は一定ではないため、タイミング次第で価値が変わってしまうため企業としては不安定というリスクを負うことになります。

海外との取引が増えた場合、為替の変動によって経営が不安定にならないように為替リスクヘッジを行う必要があるでしょう。

為替変動が起こるものとしてあらかじめ備えておくことで、リスクも最小限に抑えることができます。