毎年食中毒の問題は起こることがありますが、小学校の給食でO-157による食中毒も以前起きたことがありました。
医療機関でも入院患者に食事を提供するため、食中毒が発生するリスクは全くないとは言い切れません。
ノロウイルスによる食中毒についても、厚生労働省の調査では毎年300件前後発生しています。多い時には400件を超え、その患者数は1万人に上るため注意が必要です。
食中毒が起きた場合には多額の賠償金が発生
もしも医療機関で食中毒が発生した場合、被害を受けた入院患者に対して賠償責任を負うことが予想されます。
そのため多くの医療機関では「医療施設賠償責任保険」や「医師賠償責任保険」、「医療従事者包括賠償責任保険」などに加入するなど、万一に備えています。
入院患者に対する賠償責任
食中毒が起きた原因が、全面的に医療機関側にある場合には入院患者に対して損害賠償金を支払うことになるでしょう。
例えば食中毒で新たに治療費が生じたり、入院期間が長期化してしまった場合には、現役世代の人なら職場に復帰できず収入が減少してしまう可能性もあります。
その場合には、給与相当額を休業損害として負担することになるでしょうし、食中毒で治療を行う期間中の慰謝料相当額も負担することになります。
他にも様々な賠償責任が起きる可能性がある
医療が負う賠償責任として、他にも次のような事例があります。
例えば病院で火災が発生してしまい、入院患者の避難が遅れ死者や重傷者が出た場合には、被害者の慰謝料や逸失利益など賠償金は多額になります。
ビルにクリニックなどが入っている場合、給排水管から水が漏れ階下のテナントの商品に損害を及ぼした場合などはその費用だけでなく、修繕にかかる費用や休業補償なども発生することになるでしょう。
医療施設の管理上の不備、設備の欠陥といったことで患者などに損害を及ぼした場合のためにも補償が必要です。
医療法人の抱えるリスクへの備えを
医療法人のリスクには、財産損害、賠償損害、人的損害などがあります。
財産損害に対する備えには火災保険で備えることができます。
賠償損害に対しては、建物で火災が起きて患者の避難が遅れて死亡や重傷を負った場合など、また、施設の設備や機器の不備、業務上のミスにより第三者に傷害を与えてしまった場合などの備えとしては施設賠償保険があります。
そして入院患者に提供する給食などで食中毒が起きた場合には、生産物賠償責任保険によって備えることができます。
他にも医療機関では、患者を車で搬送することもありますので自動車保険への加入も必要になるでしょう。
勤務するスタッフの損害は?
損害は患者だけでなく、勤務する看護師などが負う可能性もあります。例えば注射針を誤って自分に刺してしまえば労働災害保険で対応することになります。
万一の賠償事故に対する備えを
医療事故での賠償訴訟は多発している状況です。医療上の過失が患者や財物に損害を与えた場合には、法律上の賠償責任を負うこととなります。
そのためには医師賠償責任保険など、保険に加入して備えておくことが必要となるでしょう。
医療法人が生命保険に加入しておくと、支払保険料を税務上損金に計上して節税することができます。ただし加入する保険が一定要件を満たしている必要がありますので、どのような保険があるのかなどよく内容を理解した上で加入することも大切です。